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記憶にございません(優香と恵理子)

 アストレイアの王都へと戻ってきた。

 さすがに十日もかけて移動してくると、だいぶ春がやってきたことを実感させられる、そんな日差し、風である。


 北門から入ると、家はすぐだ。

 家は特に変わった様子もなく、安心した。


 しかしながら、


「タカヒロ様、こんなものが」


 ミリーが玄関にささっていたという、手紙を持ってくる。


「なんだろう」


 裏を見ると、王家の紋章で押された封蝋が。


「ブリジット、はい」

「私?」

「王家の知り合いって、マティしかいないし」

「マティからかもしれないですね。開けていいです?」

「いいけど、家に入ってからにしない?」

「そうですね。取り敢えず、家に入りましょう」


 恵理子の提案にブリジットが同意する。


 ミリー達は、馬車をかたづけ、荷物も家へ運び入れる。また、今日からの生活のための用品や食材の買い出しにも出ていく。


 家に入った優香と恵理子、ブリジットがソファに座ると、リーシャがお茶を入れてくれる。


「ありがとう、リーシャ」

「いえいえ、仕事ですから。で、仕事をもらったブリジットさんは、封を開けないのかな?」

「開けますよ。今」


 ブリジットは、封を開けて中を確認する。そして、中の手紙を優香と恵理子、そして、二人の間から顔を出すリーシャに見せた。


「出頭命令?」


 優香の疑問の声にブリジットが答える。


「そうですね。帰り次第、城に来るようにと。日付を見るに、ついこの間ですね」

「うーん。めんどくさそう?」

「王家に呼ばれてめんどくさくないことなんてないと思いますが」

「旅に出ようか」

「そうね。まだ帰ってきたことはばれてないし」


 優香の提案に恵理子が同意する。その時、玄関のドアがノックされる。


 ドンドンドンドン


 ノックと言うには大きな音で。


「帰って来たのね、開けて。いるんですよね」


 ドンドンドンドン


「「「「……」」」」

「はあ。リーシャ」

「はい、かしこまりました」


 ため息をついた恵理子のお願いにリーシャが玄関へ行き、ドアを開いてマティが立っているのを確認して再びドアを閉める。


「マティでした。どうします?」

「いや、声でそうだろうと思っていたけど、そこで閉める?」


 リーシャの行動に恵理子が呆れる。


 ドンドンドンドン


「ちょっと、何で閉めるのですか」

「うるさいから入れてあげてよ」

「かしこまりました」


 恵理子が頼むとリーシャが再び玄関へ行き、マティを家に入れる。


「ちょっと、何ですぐに入れてくれないんですか」

「この手紙のせいだけど?」


 優香が答える。


「一刻も早く城に来てほしく、こうやって毎日見に来ていたんです」

「とりあえず、マティ、久しぶり」


 とりあえずと、挨拶から入る優香。


「皆さんもおかえりなさい。変わらずお元気そうで。温泉はどうでした?」

「気持ちよかったよ。露天風呂も皆で入れるくらい大きかったし」

「みんなで入れるくらい?」

「うん。十六人だとさすがに窮屈だったけどね、何とか入れたよ」


 ぼふっ。マティが顔を赤くする。


「タカヒロ様が、奥様のマオ様だけじゃなくて、ブリジットや他の皆さんと同じお風呂に?」

「あ、失言だった」


 という優香の一言が余計に事実であることを実感させ、マティが熱で脳を停止させる。


「マティ、私達は家族なんだ。一緒にお風呂に入るくらい普通だろう?」


 ブリジットのフォローにマティは現実に戻ってくるが、


「ですが、ですが、十五人もの女性と一緒にお風呂ですか? 未成年もいるのですよね?」


 マティは赤らめた顔をそのままに、あわただしく聞いてくる。


「マティ、何を想像しているの?」


 という、リーシャの一言がとどめとなった。マティは、「想像……」とつぶやくと、頭から湯気を出してソファに倒れ込んだ。


「さてと、マティが倒れている間に逃げる?」

「逃げないでください」


 恵理子の提案を聞いてマティが復活する。


「早かったねー、戻ってくるの」

「ええ、大事な要件を忘れるところでした」

「ブリジットだけでいい?」


 恵理子とマティのやり取りにリーシャが聞く。


「何で私だけなんだ? そのすきにいなくなるとか言わないよな」

「言うかもよー」


 不機嫌になるブリジットにリーシャは調子に乗る。


「はいはい。話が進まないから」


 恵理子があきらめて話を聞こうとする。


「で、マティ、なんなのかしら?」

「実はですね。サウザナイト帝国、名前が変わってサザンナイト帝国がですが……」

「あんまり変わってないね」

「そうよね。センスの問題かしら」


 マティの説明を遮る優香と恵理子。


「あの、話を進めても?」

「あ、はい、どうぞ」


 恵理子が手を差し出して話を進めさせる。


「皇帝が変わってサザンナイト帝国に国の名前も変わったんですが、それを引き起こした原因が何か記憶にあります?」

「さあ」

「帝国内でクーデターがあった」


 わからないふりをする優香と恵理子。


「……わざとですよね。泣きますよ」

「はい。先に進めて」

「皇帝が変わったのですが、それを引き起こした私達の行為を宣戦布告と取ったらしく、サザンナイト軍は現在、砦まで進軍してきています」

「まず一点。皇帝一家を滅ぼしたの、魔族の皆さんです。私達じゃありません。二点目、それによって現皇帝は皇帝になれたんだから、感謝してくれてもよくないです?」


 恵理子が力説する。


「そんなことを言って聞くような人たちだと思います? 脳細胞に筋繊維が走ってるんですよ? 脳を鍛えるのも筋トレだと信じている人たちですよ? ちょっとした言いがかりをも利用する人たちなんです。何とかしてください」

「何とかしろって言ったって、それ、国と国の問題であって、一冒険者パーティにどうこうできる問題じゃないでしょ」

「そりゃそうですけど」

「魔族の皆さんは?」

「あの、アストレイアとしては、魔族の皆さんには恨まれているわけですよ。タカヒロ様やマオ様は友好的な関係を築いているかもしれませんが、私達は、滅ぼした本人ですからね。私達のために何かしてくれるなんて、思えません」

「それは正しい」


 リーシャが同意すると、マティが涙目になる。


「どう考えても、僕らが出る幕じゃないよね」


 マティと恵理子のやり取りを聞いていた優香がクサナギには関係ないことを主張しようとすると、マティはニヤリとして、話を続ける。


「もう一つあるんです。実は、奴隷の取り扱いについてです。奴隷は契約した者が管理する必要があります。それはわかります?」

「うん。わかるよ。奴隷を買ったことないけど」


 今度は優香が恵理子に変わって聞く。


「奴隷の首輪を使うかどうかは管理者にまかされているわけですが、奴隷の首輪って、奴隷にしかつけないんです」

「ま、そりゃそうだよね」

「では、奴隷の首輪をつけた死体が放置されていたら、奴隷の管理者が罪に問われるのはわかります?」

「管理不行ってこと?」

「そうです」

「えっと、話が見えてこないんだけど」

「あの時、あのあほ皇子に首輪をつけませんでしたか?」

「「……」」


 優香と恵理子が顔を見合わせ、そしてうなずき、声を合わせる。


「「記憶にございません」」


(千里)「優香さんと恵理子さん、アストレイアに帰って来たけど、これで二年目突入ってことだよね」

(わんも)「はい。そうです」

(千)「じゃあ、私達の出番じゃないの?」

(わ)「千里達はすでにこの年を半分ぐらい書いちゃってますから」

(千)「……」

(わ)「貴博と真央はまだまだ先ですよ」

(千)「そうだけど、クリスマスだし、クリスマスだし―」

(わ)「話の中にクリスマスも正月も出てきませんけどね」

(千)「……(リア充嫌いだからって)」

(わ)「罪を憎んで人を憎まず……なむー」

(千)「あ、無心になりやがった。しかもクリスマスらしからぬ……」

(優香)「千里ちゃんファンの皆様」

(恵理子)「いるかどうかわからないけど、今しばらく私達を応援してねっ!」

(千)「え、恵理子さん、ひどいー。ヒロイン、私、ヒロインなんだからー!」

(優)(恵)「「きっとね(ニヤリ)」」

(千)「あーん、わんもぉ……」

(わ)「私はそんな千里が好きですよ」

(千)「私が好きなの、センセだけどね」

(わ)「……」

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