お母様、やりました……(優香と恵理子)
「おじ様、覚悟を」
「は、お前が本物なら、どうにでもなるわ」
と、ビルガーは剣を抜く。
「どうして母を?」
一応聞いておきたいことは聞く。
「狙いはお前の母親ではなかった。お前だったのだ。わざと遅れて駆け付けた時には、なぜかお前の母親が死んでいた。本来なら、あいつは死んだことにしておいて牢屋にでも閉じ込め、ゆっくりと楽しもうと思っていたのにな」
自分が死ぬべきだったということより、ビルガーの下種な発言にビクトリアの怒りが増す。
「何でそんなことを!」
「兄がすべてを持っているからだ。地位も名誉もすべて。相続されるべきは、私だったと思わないか? 私の方がうまくやれると。だから、道を正すのだ。そのために死んでくれ。それとも牢屋で私を楽しませてくれるのか?」
と、いやらしい顔を浮かべる。
「絶対に許さない!」
「お前のへなちょこ剣で何ができるか。まあいい、死ね」
「確かに私の剣はへなちょこですが、一突きの速さと正確さは鍛えられました」
ヴィクトリアは、ビルガーののど元一点だけを見つめる。それ以外は捨てる。
「行きます」
「死ね」
ザシュ!
ヴィクトリアが右手を突き出し、そのレイピアがビルガーの首をかすめる。
同時にビルガーの剣が、ヴィクトリアの横腹をえぐる。
「うっ」
ヴィクトリアが膝をつく。
「貴様―」
ビルガーが膝をついているヴィクトリアに上段から切りかかる。
「ここ!」
ヴィクトリアは、横腹から血が出るのを気にせずビルガーに向かって飛び、今度こそ、そののどを突き刺した。
横腹から血を流すヴィクトリアはそのまま倒れこんだ。
「お母様、やりました……」
そこへ盗賊をすべて無力化したブリジットが戻ってくる。
「あーあ、頑張ったね、とは言ってあげるけど、おなか、どうしようか」
と、とりあえず、服を脱がせ、傷口に布を巻いて行く。
「ヨーゼフ、ラッシー、ご主人様を呼んできて」
「「わふ」」
二頭は道場から走り去っていく。
「ねえ、あんたの主人、死んだよ?」
リーシャが剣を交わしながらギスターに言う。
「そうだな」
ギスターはバックステップで距離を取り、剣をさやにしまう。
「俺は逃げるが、お前達は逃げなくていいのか? 火が回るぞ……?」
ギスターはおかしい、と見回す。煙もにおいもない。
「あはは、うちのメイドはね、全員ウォーターボールくらい使えるんだよ。火なんかすぐに鎮火するよ」
「なるほど。それじゃな。俺は行く」
ギスターが道場を去ろうとする。
「ごめんね、証人が一人くらい必要なんだわ。ミリー」
「はい!」
「メイドごときが俺を止められると?」
その瞬間、ギスターの右腿にナイフが刺さる。
「な、メイドがこれほどの速さ?」
「ごめんね、これまでずっと手を抜いていて。でもね、これだけはほめてあげる、あんた、逃げの剣術だけは上手だわ」
ギスターは、足を切られ、崩れ落ちた。
「ミリー、確保しておいて」
「はい」
「さてと。心配なのはヴィクトリアだけかなと。ブリジット、どう?」
「うーん、生きてるから、タカヒロ様とマオ様が戻られれば、何とかなると」
「そ、じゃ、大丈夫ね」
「あの、痛いです。痛いです。死んじゃいます」
ヴィクトリアは、冷や汗をかきながら、うめく。
「これだけ特訓して、突きの一つしかものにならなかったんだから、仕方ないでしょ。せめて、ステップも何とかなればよけられたかもしれないのに」
「うう……どうせ、私はどんくさい……」
ヴィクトリアが気を失いかけたところで、
「誰が怪我をしたの? ヴィクトリア?」
と、優香と恵理子が帰ってくる。
「タカヒロ様、マオ様、こっちです。ヴィクトリアがうんうん言ってます」
「わかった。ちょっと見せて」
優香は、ヴィクトリアの傷口に手を当て、
「メガ……あ、ちょっと待って、マオ、あいつお願い」
「はーい」
恵理子は、お玉でギスターの頭を殴り、気を失わせた。
「いいわよ」
「それじゃ、メガヒール」
優香が詠唱すると、ヴィクトリアの体が光り、そして、傷口がふさがった。
ヴィクトリアは、
「治ったのですか? 治してくれたのですか?」
と、聞いてくるので、リーシャが代わりに答える。
「そうよ。タカヒロ様がね。だけど、恩を感じるなら、このことは内緒にしてね。じゃないと、有象無象がやってくるかもしれないから」
「はい。わかりました」
「リーシャ、ブリジット、まだ動ける?」
優香が二人に問いかける。
「「はい」」
「ちょっとお婆さんのところへ行って、この山のような死体とギスターを引き取ってくれって言ってきてくれる?」
「わかった」
「あ、ブリジット、ちゃんとかつらをつけてね」
結局、ビルガーの悪事はすべてギスターが供述した。ギスターはヴィクトリアの母親殺しもかかわっていたらしい。
ヴィクトリアの父、スティングレー伯爵は怒りに怒ったが、当たる相手もヴィクトリアが殺してしまったため、怒りは収めるしかなかった。
優香達は、大量殺人の現場となった道場にいつまでもいたくないと、早々にスティングレー伯爵家へとヴィクトリアを連れて戻った。
婆さんからは、ぼやの修理代を請求されたが、それは、スティングレー伯爵に回させてもらった。伯爵の弟がしでかしたことで、優香達は被害者なのだから。
スティングレー伯爵邸を後にする日、ヴィクトリアと向き合う。
「あの、タカヒロ様、マオ様。この度は私の依頼を受けてくださり、そして、命まで助けてくださり、ありがとうございました。感謝してもしきれません」
「「……」」
優香と恵理子が口を開ける。そういえばと。
「依頼だっけ、これ」
「そういえば」
「はい。冒険者ギルドに連絡してありますので、ギルドで報酬を受け取ってください」
ヴィクトリアはもじもじしながら、さらに口を開く。
「追加報酬ですが、えっと、その……私……」
「「いりません」」
リーシャとブリジットが声をそろえる。
シュンとするヴィクトリア。
「私、父が再婚するまでここを離れることが出来ません。父が再婚し、そして、後継ぎが出来たら、私、追いかけます」
「いや、いいから」
「あぶないから」
リーシャとブリジットがそっけなく答える。
「そんなに無下にしなくても……」
「ヴィクトリア、僕らは目的をもって旅をする。この街に、この国に戻ってくる保障なんて何もない。だからね」
「だから、追いかけると。このパーティなら、どこへ行っても噂を聞くことが出来るでしょう。追いかけることは可能だと思います。だから」
「止めはしないけど、おすすめもしない。ここにいる間に考えたらいい」
「はい。それで、あの、この一式、いただいていいですか?」
団服、仮面、猫耳等一式のことだ。
「うん。メイドの皆さんの分もいいから」
「ありがとうございます」
ヴィクトリアは、たたまれた団服をぎゅっと抱きしめる。
「それじゃ行くから」
「はい。お元気で」
ヴィクトリアは優香達の馬車を、視界から消えるまでずっと目で追い続けた。
「さ、皆さん、これから特訓ですよ。いつか、旅に出るときのために。その時のために、これはいただいたものと解釈します」
「「「「はい」」」」
「それじゃ、お父さまに、剣術の先生をお願いしなければ」
ヴィクトリアは、決意を新たに屋敷へと戻った。
(千里と桃香)「「メリークリスマス!」」
(優香と恵理子)「「メリークリスマス!」」
(貴博と真央)「「メリークリスマス!」」
(わんも)「……」
(千)「あの、(わ)よ、今日の晩御飯、何?」
(わ)「鍋焼きうどんだが?」
(千)「クリスマスだよ、そこはシャンパンじゃないの? シャンパンに合うものじゃないの?」
(わ)「唐揚げ?」
どごっ!
(千)「唐揚げだってシャンパンに合うよ……合った(と、思う)もん」
(桃)「千里さんの唐揚げ、おいしかったです!」
(優と恵)「「そうよ、おいしかったわよ」」
(千)「誰も合うって言ってくれない……」
(真)「それは……」
(貴)「千里さん、唐揚げにたどり着く前にシャンパン飲み干したからです」
(千)「……」
(優)「ねえ、みんなで鍋焼きうどん食べる?」
(恵)「いいわね」
(真と桃)「「温まるしおいしいです!」」
(千)「クリスマスイブ……」
(桃)「まあまあ、(わ)だって、こんな時間に投稿してるんだから、鍋焼きうどん食べながら」
(わ)ぐはぁ!
(優)「皆さんの下に今年も」
(恵)「サンタさんがきますようにっ!」
(千)「またおいしいところを……バツイチズめ」
どごっ!
 




