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転生(貴博と真央)-1

「そろそろ来るかなー」


 グレイスが謁見の間の階段下を見つめる。

 予想通り、光が立ち上がる。


「来たよー」

「はいはい。いらっしゃい、よーちゃん」

「なに、来るのがわかっていたみたいだね」

「まあ、ワンパターンだからな」

「えー、今度は、違う格好してくるよ」

「そこじゃない。で、赤ちゃんは?」

「気が早いね。あずにゃん」

「はい、よーたん」


 あずさは、二人の赤子を抱えている。


「コルベット!」

「は、カオリンとメイリン!」

「「はい」」


 二人のメイドが赤子を受け取る。


「とりあえず、これまでの六人をお願いね。それと、後は有象無象を頼む」

「わかった。で、よーちゃん」

「僕、用事があるから帰るねー。あずにゃん行くよ」

「はい」


 と、よーちゃんはあずさと消えた。グレイスからの質問は何も受け付けないというように。


「相変わらずせわしいやつ」


 決してせわしいわけではない。説明がめんどくさいだけだ。




「さてと」


 と、グレイスは二人の赤子の手を取り、四人と同じように会話ができるようにする。


「君の名は?」

(草薙貴博)

「じゃあ、君は?」

(石川真央)

「えっと、二人は知り合いでいいかな」

((はい))

「意外と冷静だね。知り合い同士、こんな状況で会えることにびっくりしないの?」

(えっと、僕ら、一緒に生きて来て、一緒に死んで、一緒にここに連れてこられましたから)

「そ、そうなんだ。まあいいや。さて、君達は、転生してきたわけだけど……」


 グレイスはこれまでと同じ説明をする。


「君達は、何かやりたいことはないか?」


 真央が答える。


(えっと、センセと一緒にいたいです)


 貴博も答える。


(僕も真央と一緒にいたいです)

「……えっと、そういうことじゃなくてさ、新しい世界に来たんだ。何か意気込みとか?」

(僕は真央がやりたいことをやらせてあげたい)

(センセ、ありがとう。私はねー。うーん。しばらく猫だったからなー。それに、人だったとき、楽しく学校に通えなかったから、学校に通いたい。この世界に学校あります?)

「……ああ、ある。けど」

(えっと、学校じゃダメですか?)

「いや、いいよ。この世界は六歳から十二歳までと、その後、希望する者は三年間学校に通える。ちなみに、十二歳で働くことが出来て、十五歳で成人だ」

(え、って言うことは、十五年後にセンセと結婚できる!?)

「……(前の四人、かわいそうに。君らは二人でいられればいいのか?)」


 と、グレイスはジト目をする。


「ところで」


 と、グレイスは意識の方向を他の四人に向けようとする。


「君たちには会いたい人とかいないのか?」

(もちろんいます。ですが、元の世界の人です)


 真央が答える。


「どんな人だい?」

(人って言うか、えっと、猫です)

「猫?」

(はい。私達この前まで猫だったんです。で、二人で旅をしていたんです。東京に行ったときにですね、おっきな市場を見たくて豊洲方面に歩いていたんですけど、変な猫達に絡まれちゃって。その時に助けてくれたのが、豊洲周辺を仕切っているボスネコさんだったんです。すごく優しくしてくれたんです。ねー、センセ)

(うん。白猫で、メスだったけど、かっこよかったよね)

「!!! 他にどんな猫がいたんだい?」

(その周りに四匹のかっこいい猫がいつもいました。白と、黒と、グレーとサバトラでした)

「えっと……」

(すごいんですよ。その五匹、野良なのに名前を持ってたんです。リーダーがキザクラさん、その周りの四天王がマイヒメと、コマチ、カゲツにシュウゲツだったかな。自分たちで名前を付けたみたいでした。野良猫なのにすごくないですか?)

「そうか。そうか……で、その五匹と君達は友達なんだな」

(はい。友達にしてもらいました。東京にいる間は、そのキザクラさんのグループにお世話になって。だから)

「わかった」


 貴博と真央をキザクラの友達と扱おう。と、グレイスは決める。


「その五匹は元気だったか?」

(はい。とても。かっこよくて他の猫たちの憧れでした)

「ありがとう」

((ん?))

「いや、何でもない。ところで、他に会いたい人はいるか?」

(はい。こっちは人ですけど、猫になる前の人生の時、お世話になった四人の女性です)

(僕もその人たちには感謝してもしきれないくらいです)

「その者達に会えたらどうする?」

(会えたら、とりあえずお礼を言って。またみんなでご飯を食べたい)

(そうなのです。みんなと鍋を囲みたいです)

「そうか」

((? まさか?))


 グレイスは、二人の思い付きをわざと無視する。


「さてと、君達は赤子だ。ここには、二十人の二か月になる先輩赤子がいる。その子達と一緒に取りあえず一年間過ごしてくれ。その後、外の世界で普通の子供として 育ってもらう。いい?」

(えっと、はい)


 貴博は気になることがあったのに、グレイスに話をそらされた。


「そして、十二歳、もしくは十五歳になったら、君達は好きにしたらいい」

((はい))

「とりあえずは、カオリン達に世話になって、こっちの世界の語学学習と、魔力ぐるぐると魔力操作を一年間頑張って。後ろの二つはわからなかっただろうから、これから、僕がやって見せよう」

((……))

「いい!?」

((はい))


 貴博と真央はカオリンとメイリンに部屋へと連れて行かれ、ベッドに寝かされた。




「さて、あの二人は僕が見よう。キザクラ達の友達だし。無下にできない」

「ご主人様自らですか?」


 ミルフェが聞く。


「うん。妻達はみんな子育てがあるからね」


 雌性発生であるトワ以外の妻が子を産み、また、バニーが双子を産んでいるので、トワも加わって子育てをしている。よって、全妻が子育て中である。


「もしかして、武術も魔法もですか?」


 今度はシルフェが聞く。


「うん。それでいいかなと」

「奥様方を連れて行かないのですか?」

「ここにいた方が安心して子育てをできるんじゃないかな」

「ですが、ご主人様と一緒にいたいのでは?」

「そうかもね。でも、会おうと思えばすぐだしさ。もし妻達が望むなら、屋敷に来てもらってもいいけど。ただ、その場合は、学校の問題が出てきちゃう。子供達も通わせないといけなくなるかもしれない」

「そうですよね。ご主人様と奥様方のお子さんですと、この世界じゃ、チートもチートですものね」

「うん。だから、うちの子達は、第三階層の学校かと思っているけど」

「それでも、チートだと思います」


 ミルフェの意見に、シルフェがうんうんとうなずく。


「で、どこに屋敷を構えます?」

「あの子、学校に行きたいって言っていた。だから、第七階層の一番発展している帝国、アンブローシアにしようか」

「これまでの四人とちがって、都市ですか?」

「キザクラの友達だし、キザクラ達のことを教えてくれたんだ。学校に通いたいっていう、それくらいの願いはかなえてあげたい」

「わかりました」

「ところで、私達もついて行っても?」


 ミルフェが確認を取る。


「ああ。お願いするよ」

「「はい! 承知しました」」

「マツリ、アンブローシア帝国の帝都に屋敷を一軒買って来て。ちゃんと地下訓練場あるところね。なかったら掘って」

「承知しました」


 アンブローシア帝国は、ナッカンドラ大陸の南部にある、大きな平野に人が集まってできた国である。

 川も流れ、水も豊かであり、農業を行うことが出来たため、人の国として栄えた。

 他の国、他の大陸とは、陸をではなく、船を使っての行き来となっている。つまり、船がなければ他の人間の国から孤立する国である。

 とはいえ、ほぼほぼ自給できるので、それでも問題はない。

 ちなみに船で行き来するのには理由がある。平野の北側は大森林が広がり、魔物の巣窟になっているのだ。厄介なことに、この魔物が時々大森林から出てくる。これに対抗するため、この国では騎士団も魔法師団もあり、強大な武力を持っている。

 その大森林を抜けた北側には、ドワーフ、エルフ、獣人の国があり、その北は山脈で遮られている。この山脈のおかげで、陸地を通って他の大陸に行くことがで難しい。


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