プラチナランクの仕事って?(優香と恵理子)
(優)「タカヒロです!」
(恵)「マオです!」
(優)(恵)「「二人合わせてクサナギですっ!」」
(真)(桃)「「パチパチパチ」」
(千)「じーっ!」
ドゴッ!
貴博と真央の旅立ちから二年さかのぼる。
ここはアルカンドラ大陸、アストレイア王の国王都。
優香と恵理子が処刑されそうになったユリア・ランダースを救出し、ユリアがブリジットと名前を変えたその翌日。
「ブリジット、リーシャ、起きて」
恵理子が各部屋の前で声を上げる。
「はいはい、起きてますよー」
と、リーシャが部屋から顔を出す。
「何事だ?」
とは、ブリジット。
「はい。朝練だよ」
四人は倉庫へと行き、朝食前の運動をする。
「リーシャ、あの二人はいつもあんな感じなのか?」
優香と恵理子が打ち合う様子を見て、ブリジットが聞く。
「そうよ。だから、倉庫の中なの。この後、私はぼこぼこにされるのよ。ブリジットもだろうけど」
そこへ恵理子と打ち合った優香がやってくる。
「ブリジット、僕とやろうか。武器は鞭がメインなの?」
「集団で戦うときはな。一人の時は、剣を使うぞ」
「何で武闘会で鞭だったのさ」
「相手を殺す必要がないからな」
「なるほどね。じゃあ剣でやろうか」
「リーシャは私とね」
恵理子がリーシャを誘う。
こうして四人の朝練が始まる。
朝食時。
「ねえ、そろそろお金を稼ぐ手段を得ないといけないと思うんだけど」
恵理子が提案する。
「名前も売らないといけないしね。ブリジット、何かいいアイデアない?」
優香もブリジットに心当たりを聞く。
「騎士団に喧嘩を売るとか?」
「ブリジット、ばれるよ? それに、ギルドで戦闘訓練っていう常設依頼もあったけど」
「騎士団をぼこぼこにしたところで、隠されるだろうさ。名前は売れないと思う」
「だよねー」
「二人の冒険者登録は?」
「リーシャは猫耳少女として名が売れているから、さすがにカッパースタートじゃないと思うけど、ブリジットはね、見る人が見たら、元騎士団長ってばれちゃうかな。どうだろう」
「冒険者じゃなきゃ依頼を手伝っちゃいけないわけじゃないんだろう? じゃあ、登録しなくてもいいんじゃないか?」
「まあ、そうなんだけどね。機会を見てにしようか。でも、猫耳少女リーシャは登録するだろ?」
「私もブリジットと一緒でいい。人の制度にあまり興味ない。それにしつこいようだけど、私の方が年上」
「わかった。後で僕とマオで冒険者ギルドへ行ってくる。何かいい依頼があれば受けてくるよ」
「何がわかったんだか……」
優香と恵理子はちょっと遅めに冒険者ギルドへと行く。すいている時間を狙ってのことだ。
「あ、タカヒロさん」
ギルドの受付嬢が目ざとく優香を見つける。
「ん。どうしたの」
「ギルマスが用事があるって言っているんです」
「僕らは、受けられそうな依頼がないかなって、見に来ただけなんだけど」
「受けられそうな依頼の話だと思いますよ。武闘会優勝者を遊ばせておくことはできないと、ギルマスが言っていましたし」
「そういうめんどくさそうなのはいらないんだけどね」
「まあ、お願いします。見つけたのに逃げられたじゃ、私、叱られますので」
「……」
「聞くだけ聞きましょう」
と、恵理子が優香を諭す。
「わかった」
二人は、受付嬢に連れられてギルマスの部屋へ行く。
「おう。よく来た。座ってくれ」
受付嬢は部屋を出ていく。
「タカヒロ、お前に頼みたい依頼がある」
「えっと、僕単独? それに、シルバーにできる依頼?」
ギルマスは、ふう、とため息をついて、
「おーい、ミューラ!」
と、部屋の外に声をかけた。
「はい。何でしょう」
受付嬢がやってくる。ミューラというらしい。
「プラチナのカードを二枚持って来てくれ」
「はい」
「まず、タカヒロ、お前はプラチナAにする。当然だ。武闘会で優勝したんだからな。それから、猫耳少女、プラチナCにしておく。俺に負けたんだCで文句もないだろう?」
「えっと、依頼を受けるって言っていないけど」
「受けてくれたら、プラチナにする。というか、プラチナにしかできない依頼なんだ」
「たとえ、僕とリーシャがプラチナになったところで、僕のパーティは十四人、まだ登録していないリーシャともう一人を入れると十六人なんだ。パーティとしてプラチナランクにはならないんじゃない?」
「プラチナの二人だけで依頼を受けてくれればいいじゃないか」
「で、どんな依頼なんだ」
「子守だ」
「……それ、プラチナがやること?」
「今度、この国の王女がサウザナイト帝国へ行くことになった。そのお付きが必要なんだ」
「そんなの、メイドとか近衛にやらせればいいだろう」
「それがな、この前の武闘会を見て、お前と猫耳を指名しているんだ」
「近衛は行かないということ?」
「いや、当然行くぞ。ただし、お付きにはお前達を指名しているんだ。よって、護衛と言うより、子守りと言う方が近い」
「それに、そんなの、近衛が納得するの?」
「お前、武闘会で近衛隊長を倒しているだろう。って、王女が言っちゃってな、納得せざるを得ない状況だ。ぶっちゃけ、雰囲気悪いぞ」
「そんなの行きたくないな」
「そこを何とか頼むよ。国王がさ、王女を溺愛していてな、何とかしろって言ってくるんだよ」
「このマオと、ブリジットっていう僕の仲間もプラチナにしてくれるなら、四人で受けるけど?」
「はあ、実力を見せてくれよ」
「構わないよ」
優香の返事にギルマスは立ち上がる。
「さ、行こうぜ、お前の家に行けばいいんだろう? ミューラ、出かけるぞ」
ギルマスとミューラは優香と恵理子について行く。
クサナギの家に入ると、
「「おかえりなさいませ、ご主人様」」
と、ダブル猫耳メイド、内一人仮面が、優香と恵理子を出迎える。
「おい、猫耳少女が二人になっているじゃないか」
「こっちの仮面をかぶっている方がブリジット。強さを確認して欲しい」
「あ、ああ。どうしたらいい?」
「隣の倉庫が訓練場になっているので、そっちへ行きましょうか。ブリジット、武器を持って来てくれる?」
恵理子がブリジットにお願いする。
「はい」
ブリジットは、剣を抱えてくる。
六人は、訓練場へと場を移す。
「ギルマス、戦ってみます? それとも、マオとブリジットの試合を見てから決めます?」
「そうだな、二人でやるところを見せてくれ」
「わかりました。マオ、ブリジット、用意して」
二人は訓練場の中央で向かい合う。恵理子は両手にナイフ。ブリジットは片手剣に盾だ。
「行くよ。全力ね。よーい、始め!」
と、優香が合図をしたとたん、ブリジットが突進し、剣を振るう。
そのスピードと、お手本のような剣筋に、ギルマスは、既視感を覚える。
「あれは……」
だが、その剣をあっさりと片手のナイフではじく恵理子。
リーチではブリジットが有利、しかし、実践経験と言う意味では恵理子が有利。ギルマスはそうみる。
優香も恵理子も十五歳までずっとぼろ負けの実践的訓練をしてきたのだ。経験はある。
結局、剣をかいくぐって恵理子がブリジットののどにナイフを突きつけて終わる。
「ギルマス、どうでした? 戦ってみますか?」
ギルマスは、冷や汗を流す。
「ギルマスやっちゃってください」
と言うミューラの声がギルマスの耳を通り抜ける。
(優)(恵)「「私達、この時点で十六です」」
(千)(桃)「「私達は十五です」」
(貴)(真)「「私達はリア充です」」
ドゴッ!
(真)「千里さんひどいのです」
(千)「なによ、リア充って。私達が必死にラミさんルミさんの天然ボケにあらがっているときに」
(ラ)(ル)「「じーっ!」
(千)「あ、ごめんなさい」
(優)「というわけで、優香&恵理子編……」
(恵)「一年目が……」
(優)(恵)「「リスタートです!」」
(千)「チッ、かっこつけちゃって」
(優)(恵)「「千里ちゃーーーん」」
(千)「ひいっ!」