表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/447

いやん(貴博と真央)

 ライトルは走る。

 キザクラ商会前に出張っている辺境伯と騎士達の下へ。


「辺境伯閣下!」

「なんだ、ライトル」

「奴隷商会の犯罪に関する書類が見つかりました」

「そうか。わかった」


 辺境伯は剣を振り上げ、全軍に告げる。


「奴隷商会の者どもをひっとらえろ!」

「「「おー」」」


 騎士団が動いた。


「た、助かったー」


 ルイーズがへたり込む。


「よかった」


 シーナもルイーズと背中を合わせて座り込む。


「ごめんね、目が覚めるのが遅くなって」


 リルが二人に声をかける。


「いいのよ。助かったから。それに、リルだって大変だったんでしょ」

「まあ、いろいろとね」


 真央がリルに抱きついて涙を流す。


「センセを守ってくれてありがとうなのです」

「真央も皆を守ってくれてありがとう」


 リルは、真央を抱きしめ返す。

 センセって貴博のこと? と、疑問を感じながら。


 この日、一つの奴隷商会がつぶれた。

 今後については、後日キザクラ商会を含めて相談することになった。


 貴博達は、少ない魔力を使って、なんとか怪我を最低限だけ治した後、その他のすべてを明日に先送りして眠ろうと、宿屋に戻った。




 翌朝、魔力の回復した貴博がそれぞれの傷を見ていく。


「ミーゼル、ほら、おなかも見せて」

「えっ、だって恥ずかしいじゃない」


 貴博は、ミーゼルのおなかを指でつつく。


「いたっ」

「ほら、痛いんじゃん」

「もう。わかったわよ。見るなら見なさい」


 と言って、ミーゼルは下着姿になる。


「えっと、手のひらをちゃんと治すのと、ほっぺと、おなか、腕、足……よくもまあ、こんなに殴られたり蹴られたり切られたり」

「……」

「それじゃ、ヒールをかけるから」


 貴博は、右手でミーゼルの左手を握り、左手をミーゼルの腹に乗せ、ヒールをかける。


「メガヒール」


 ミーゼルの体が光に包まれ、そして、傷が癒えていく。

 ミーゼルは自分の傷が癒えたことを一つ一つ確認していく。その姿を見て、貴博はミーゼルに言う。


「ミーゼル、頑張ったね。ありがとう」


 ミーゼルは、きょとんとした顔で貴博を見て、そして、次の瞬間には泣き顔になる。

 ミーゼルは貴博に抱き着き、そして泣いた。


「怖かった。怖かったの。人を殺すことが、自分が殺されることが、何より、家族を失うことが、うわーん」


 貴博は、ミーゼルが落ち着くまで抱きしめ、そして、頭をなでなでした。




 ミーゼルが落ち着いた後、貴博は一応、全員を見ては、ヒールをかけた。

 そして、皆が落ち着いたところで、ミーゼルが疑問に思っていることを皆で共有する。


「あの、私、不思議に思っていることが二つほどあるんだけど。

「「「……」」」


 全員がミーゼルを見る。


「一つ目、真央のことなんだけど。って言うか、貴博のことなんだけど」


 真央と貴博が目を合わせて、苦い顔をする。何かがばれたか?


「真央ってね、素に戻ると、貴博のことをセンセって呼ぶよね。何で?」


 あはははは


 と、真央と貴博は苦笑いをする。が、視線が集まってくる。

 「確かに」という声も上がる。これに対して、仕方ないと、真央が口を開く。


「貴博さんは、私のお兄ちゃんなんだけど、昔から楽しいことやうれしいこと、きれいな場所、そんな、私が好きになることを教えてくれるのです。まるで、人生の先生のようにです。だから、私、心の中でセンセって呼んでて……」

「人生の先生って、貴博、同い年なのに、おじさん臭いのね」


 貴博は苦笑いしかできない。実際おじさんだ。


「まあいいわ。貴博って、イントネーションとかなんとなく言いづらいのよ。私もセンセって呼ぼうかな。剣も魔法も教えてくれるし」

「あ、いいね。私も呼ぼうかな」

「え? なんで? それだったらクラリスの方が本当に先生じゃん」

「あ、そうだ、二つ目、クラリスなんだけど」


 ミーゼルが貴博の疑問を無視してそう言うと、皆の視線がクラリスに集まる。


「クラリス、あなた、若返っているわよね」

「え?」

「胸も小さくなってるし、腰の線だって細くなってる。何より、その顔」

「な、老け顔だったって言いたいのか?」


 クラリスが声を上げる。


「年相応だったのよ。なのに、今はどう見ても私達と同じくらいに見えるじゃない」


 貴博を除く女性陣がクラリスの顔を覗き込む。貴博は目をそらす。

 クラリスは、視線だけで自分を見つめる目を一つずつ見ていく。そして、


「いやん」


 と、両手で顔を隠した。


「こらー、顔が若返ったからって、かわい子ぶるな! ギャップが激しすぎるじゃないか」


 あは、あははは、あはははははは。

 部屋中に笑いが起こった。




 この事件の後、ロクサーヌ達は釈放され、キザクラ商会に戻った。奴隷商会は取り潰されたものの、商品である奴隷は残った。奴隷は、維持管理をするにもお金がかかる。そのため、辺境伯は、商会をつぶしても奴隷を引き取るとは一切言わなかった。

 結果として、船にいた奴隷、商会にいた奴隷、それと奴隷船を維持管理できそうなのは、となり、キザクラ商会が奴隷商会を継続させることで落ち着いた。もちろん、不正などの悪事は絶対にしないと誓って。




 貴博達は、キザクラ商会に来ていた。真央達の着ていたセーラー服がボロボロになってしまったため、買いなおすこと、それから、今後の計画を練ることを目的としている。


「で、貴博様達は、今後、どうなさるのですか?」

「うーん。旅を続けるのは決まっているんだけど、どっちへ行ったらいいか」


 ロクサーヌは地図を広げる。


「この大陸は、三つの大陸が一点でつながった大きな大陸です。三つの大陸は、このナッカンドラ大陸、西に張り出したアルカンドラ大陸、東に張り出したムーランドラ大陸です」


 ふんふん。確か習ったなと、真央は思う。


「ここは、ナッカンドラ大陸の南端になります。ナッカンドラ大陸では、人の国はこのアンブローシア帝国のみです」

「人の国は、というのは?」

「この国の帝都など、北の街は、その北にある大森林からの魔物や魔獣の侵攻を食い止める役を担っているというのはわかっていらっしゃると思いますが、その大森林のさらに北の方には砂漠も草原も山もあります。そういった地形や自然を活かして、エルフの国や、ドワーフの国、獣人の国などがあります」


 貴博は悩む。千里達が人以外になっている可能性があるのかないのか。


「その北は?」

「この三つの大陸がつながっているところですが、長年の地形の変化のせいか、三つの大陸は円形の山脈により分断されています。円形の山脈に取り囲まれた地については、よく知られていません。ドラゴン族が支配すると言われており、誰も近づけないのです」

「ということは、北から他の大陸には行けないということ?」

「行ける行けないであれば、行けると思います。ただ、ドラゴン族がどう出るかです。無視してくれればいいですが、襲われたら対処のしようがありません。ちなみにですが、この国の北の大森林ですが、北に進むほど強い魔物や魔獣が出てきます。エルフ達はそういうところで暮らしています」


「ロクサーヌさん、詳しいですね」


 ロクサーヌは、内緒にしておいてください。と、前置きをして、かつらを取った。

 ロクサーヌは黒髪だったが、そのかつらを外した下から出てきたのは、緑がかった金髪。そして、長い耳。それだけ見せて、再びかつらをかぶる。


「そういうわけで、よっぽどの御事情がない限りは、北に向かうことをお勧めしたりはしません」

「じゃあ、どうしたらいいの?」

「ご指示をいただければ、私どもの船で、アルカンドラもしくはムーランドラの港町までお送りすることが出来ます。これらの街とは交易がありますので」

「ねえ、センセ」


 ミーゼルがすっかりセンセ呼びになる。


「人を探しているのなら、他の大陸へ行った方がいいんじゃないの?」


 真央と貴博は、他の四人が人でない可能性もあると思っている。

 ロクサーヌは、そのくらいのことは知らされているが、言ってはいけないことになっている。


「真央はどうしたい?」

「千里さん達に早く会いたい。でも、この家族での冒険も楽しい」

「千里さん達に会ってからでも冒険はできるよ」

「……獣人、会ってみたい。モフモフ」


 真央がうつむいて言う。


「よし。そうしたら、北へ行ってみようか。エルフ達やドワーフ達も何か情報を持っているかもしれない」

「真央とセンセが決めたのならいいわよ。私達はついて行くから」

「そうだぞ。行こう。北へ!」


 クラリスの掛け声に全員で答える。


「「「「「「おー!」」」」」」


(わ)「いったん貴博と真央編はここまでです」

(千)「え? じゃあ、私? 次は私?」

(わ)「読んでくださっている方には大変心苦しいのですが」

(千)「えっと、私じゃないってこと?」

(わ)「これで、三チームが旅立ちました。しかし、旅立ったのは、優香さんと恵理子さん、その一年後に千里と桃香、その一年後が貴博と真央です」

(千)「……」

(わ)「これから、時間軸を合わせにかかります」

(千)「あーん、じゃあ、優香さんと恵理子さんのターンってことじゃん」

(わ)「そゆことです」

(千)「ちょっと、きいていい?」

(わ)「……」

(千)「何で優香さんと恵理子さんだけ”さん”づけ? 惚れてるの?」

(わ)「……」

(千)「あー。絶対そうだ。じゃなきゃ、一番たくさん書かないもん。ひどいひどいひどい!」

(わ)「そ、そういうわけでは」

(千)「じゃあなに? 作者は年上好きってこと?」

(わ)「いえ、決してそゆわけじゃ……」

(優)「千里ちゃーん」

(恵)「年上って、どういうことかなー」

(千)「ひぃっ!」

(恵)「私達、一歳しか違わないよねー」

(千)「そゆことじゃないです、そーゆうことじゃないですー!」

(真)(桃)「私達も混ぜてください……」

(千)「あ、あいつ(わ)、どこ行った!?」

(優)「ということで、次は、私達のターン」

(恵)「よろしくねっ!」

(千)「恵理子さん、歳、歳考えて」

 ドス!

(千)「ぐはっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ