第1章 第8話 1つ目の加護
223/01/5 11:30
フェニックス王国南西
不死の大火山
アイカ視点
二人を炎が襲った。
「大丈夫か!」
炎の盾が二人を守っていた。
「ええなんとか」
どうやらエリスが出したらしい。
「ありがと助かったわ」
レイナがボソッとお礼を言う。
「それよりも早く倒しましょう」
「そうね」
レイナが再度武器を構える。
「アオイさん。まだ魔法使えますか?」
エリスがアオイに聞く。
「使えるけど。アオイ苦手だよ」
「苦手でも良いです。」
エリスがアオイに魔力を送る。
「これで光魔法を放って下さい」
「どうして光魔法なんだ」
俺が聞くと。
「光属性は、炎に対してやや有効なのですよ」
そうなんだと俺が感心してると。
炎のガーディアンが俺に攻撃して来た。
「危ねっ!」
咄嗟に剣で防ぐが。重たい。
「アオイさん。今ですわアイカ君ごと狙って下さい」
「ちょっと待てよ!」
俺が気付いた時には手遅れで。アオイが右手を突き上げていた。
「光の第4魔法『サンシャインレイ』」
その手から魔法陣が広がり。
光の球が現れ、そこから光の矢が俺達を目掛けて降ってきた。
「ぐおおお!」
「ぎぃやぁ!!」
炎のクリスタルガーディアンに命中したが。
当然近くに居た俺にも当たる。
「エリスてめぇ!」
俺が怒って言うが。
「これで力が湧いたでしょう」
そう、にこやかに言う。
確かに力が湧いてきた来たけどさ。
「そのまま倒して下さいな」
「簡単に言うなよ」
仕方がないから。とりあえず湧いてきた魔力を武器に注ぎこむ。そして魔力を纏わせたまま、炎のクリスタルガーディアンに一撃を放つ。
「喰らいやがれ!!」
俺の剣がクリスタルガーディアンを切り裂いた。
そして断末魔をあげ、消えて居なくなった。
「あれ。もう終わりか?」
呆気なく勝ってしまった。
「やったぁ!アオイ達勝てたよ」
アオイが嬉しそうにはしゃぐ。
「やっと帰れるよぉ」
そのアオイにもたれ掛かるクレア。
「アイカ強くなったね」
今回殆どなにもしてないレイナが言う。
「流石ですね~」
にこやかにエリスが言うが。
俺は怒っていた。
「お前ふざけるなよ」
エリスに詰め寄る。
「まあまあ、落ち着いてアイカ」
レイナが間に入って止めるが。
「落ち着いてられるかよ!」
レイナを振り払って俺が近づく前に。
「ごめんなさい」
エリスが震えながら俺に言った。
「だってこれしか思いつかなかったんです」
「だからって俺を巻き添えに魔法撃たせるなよ!」
「本当にごめんなさい」
頭を下げて謝るが怒りが収まらない。
「そんな事より早く奥の部屋行こうぜ!」
アオイがクレアをおんぶして先に行こうとしてた。
そもそもコイツのせいでもあるんだけどな。
「先に行ってて。後から行くから」
レイナが言い。俺の肩に手を置く。
「あたしがもう少し戦えてたらこんな事にならなかった。あたしも謝るからエリスを許したげて」
俺は渋々頷いた。
「分かったよ」
「本当にごめんなさい」
再び頭を下げ俺に謝るエリス。
「先に行くわね。あの双子だけにするの心配だから」
そう言い。レイナも奥の部屋へと向かって行く。
「俺達も行くぞ」
そう、俺が言っても動こうとしない。
「ごめんなさい」
「もう良いって」
「ごめんなさい」
頭を下げたままのエリス。
その手を引いて無理やり歩き出す。
「私。未来を変えてしまいました」
そう言われたので立ち止まって振り返り。
「どういう事だよ?」
「本当ならあの時。炎の盾を出さなかったんですよ」
おそらく夢で見た話だろう。
「私とレイナさんが倒されてしまい。残った3人で攻撃をして。先程みたいにアオイさんが放った魔法とクレアさんが放った魔法がアイカ君とガーディアンに当たって」
少し泣きそうになってるエリス。
「先程みたいに力が湧いたアイカ君が一撃で倒したのです。──これが夢で見た内容です」
「そうか」
「でも攻撃を受けたく無かったの」
「分かってて喰らいたくないもんな」
「ごめんなさい」
「もう良いって」
どうせアオイの魔法喰らうんだな。
そう聞いたらなんかどうでも良くなった。
「皆無事なんだ。もう許すから行こうぜ!」
「はい。ありがとうございます」
俺達も奥の部屋へと向かった。
部屋の中には赤色の大きなクリスタルが光を放っていた。
「それでこれからどうするの?」
「クリスタルの儀式をするのよ」
レイナは両手を合わせてクリスタルの方を向く。
「皆も真似して」
俺達も手を合わせクリスタルを向く。
「無事に試練を達成しました。アタシたちにご加護を」
レイナが言うと。
クリスタルが輝きだし。
俺達全員にその光が入って来た。
ほんのりだが魔力を感じた。
「これで終わりよ」
「えっ。こんだけ?」
「そうよ。こんだけ」
「なんか思ってたのと違うな」
「意外とこういうものよ」
「そうか」
儀式を終えて俺達はリリアさんの元へ戻った。
223/01/5 11:40
ギルド『フォレストセイバー』
地下訓練所
レイキ視点
ミナの自爆攻撃を食らった俺は、ヒーリング装置の回復効果で目を覚ました。
「痛たた。──ミナは!」
ミナを探そうとして起き上がろうとした。
「うっ!」
辺りにはミナだったものが散らばっていた。
「ミナ!ミナ!」
俺は名前を叫びながら肉片を掻き集める。
その肉片が1つに纏まりミナに戻る。
「おいっ!ミナ!ミナ!」
ミナの肩を揺すり呼び掛ける。
「う、うーん」
目を覚ましたミナを抱きしめる。
「良かった。良かった!」
俺が安堵してると。辺りをキョロキョロと見回すミナ。
「まだ威力が足りないですね」
まるで何事も無かったかのようなトーンで言い。
俺は、その一言でカチンと来て。
ミナを引っ叩いた。
「あら。珍しいですね。レイキさんが手を挙げるなんて」
少しうれしそうなミナ。
「2度とこんな事すんじゃねぇ!」
反対に俺はキレていた。
当然である。いくらフェニックスの力があるとはいえ。わざわざ自身の命を危険にさらす必要は無いだろう。
「どうしてですか?」
キョトンとされて溜息を吐く俺。
「やめてくれよ。頼むから」
強く抱きしめる。
「こんな攻撃方法があってたまるかよ」
万が一だ。この技術が悪用されたらたまったものじゃない。
「別に良いじゃないですか?フェニックスの力で元に戻るのですし」
その言葉に腹立ち。ミナをもう一度引っ叩いた。
「あらあら。2回もぶたれたわ。もっとしても良いのよ」
何故か再び嬉しそうにするミナ。
「いつもやられてばかりですもの。たまには憂晴らし──」
「次自爆したら離婚な」
言葉を遮る様に俺が言うと。ミナが瞳を左右に揺らし瞳に涙を浮かべる。
「それは嫌です!」
ミナから抱きつかれた。
「離婚は嫌だ!」
「いいや。離婚します」
「嫌だ!嫌だ!ミナはただ、アミュレットデバイスの実験を」
「本当に離婚するからね」
「もうしないから!それだけはやだ!」
やだやだと連呼しだすミナ。
叫びながら両方の拳を振り回しており。
ちょくちょく俺に当たって痛かった。
「うるせぇ!大人しくしやがれ!」
子供みたいにタダをこねるように暴れるミナ。
その両腕を押さえ込んだ。
するとそこへサミサが来た。
そういえばこの時間に良く自己訓練してたな。
「レイキテメェ!何してんだ!」
怒号が飛び。勢い良く俺達の下へ駆け寄り。
ミナから引き剥がされ、いきなりぶん殴られる俺。
「いきなりなんだよ!」
「結婚してるからって。こんな所で襲うんじゃない!」
そういえばミナは裸だった。
さっきの自爆で服が燃えたのだろう。
「ちょっと待て誤解だから」
「誤解じゃ無いです!ミナはヤダって言ってるのぉ!」
頼むから紛らわしい事言わないでくれ。
「ミナが嫌がってるだろうが!歯を食いしばれ!糞野郎!」
俺は派手にぶん殴られた。
「ちょっと待て。落ち着けサミサ!」
「これが落ち着いてられるか!このクソ外道が!」
派手な一撃を喰らい俺は意識を失った。
この後。目を覚ましてから誤解を解くのに苦労した。
223/01/5 15:00
フォレスティアタウン
ギルドフォレストセイバー
ギルド長室
アイカ視点
俺達は報告の為に、レイキさんの元へと向かった。
「お兄ちゃん入るよ」
一応ノックしたが。
返事の前にドアを開けるレイナ。
「せめて返事してから開けろよ」
えへへと笑って誤魔化すレイナにレイキさんは呆れていた。
よく見ると。いや良く見なくてもだけど。レイキさんは頭に包帯を巻いていた。
「パパケガしたの?」
「ホントだ大変だ!」
双子が心配そうに駆け寄り頭を撫でる。
「ありがとう2人共。大した事無いから心配しないで」
「おおかたミナ姉ぇと喧嘩でもしたんでしょ。いつもの事よ」
「ははは。まあそんな所かな」
「またママと喧嘩したの」
「ダメなんだんよ。パパは、ママより弱いんだから」
驚くクレアと小馬鹿にするアオイ。
「まあ確かにそうだけどさ。それよりも皆が無事に帰って来てくれて良かったよ」
「あたしが率いてるのよ。当然だよ!」
「今回大して何もしてないだろ!」
俺が言うと。しっーと唇に人差し指を当てて遮った。もう手遅れだと思うが。
やれやれと呆れたレイキさんはエリスを見て。
「それはそうとエリス。どうしたんだい。なんだか元気がなさそうだけど」
「少し疲れました。……ただそれだけですわ」
確かに帰り道エリスは一言も発さなかった。
「そうか。無理するなよ。レイナに合わせるとろくなこと無いからな」
「ちょっとそれどういう意味よ!」
「お前はいつも考え無しで行動し過ぎなんだよ。それを言ってるんだ」
「お兄ちゃんにそんな事言われると思ってなかった」
少しシュンとするレイナ。
「そんなに落ち込まなくて良いだろ。別に怒っていないんだからさ」
「分かってるわよ」
「まあ今日は皆疲れたと思うから。各自次の加護を受ける時までに疲れを取っていてね」
さっきまで怖かったレイキさんも、いつも通りにもどっていた。
報告を終え俺達はそれぞれの部屋に戻った。