第一章 第5話 不安(6/7改稿)
223/01/3 11:00
ギルド フォレストセイバー
ミナの作業部屋
レイキ視点
エドと話をした後。
俺は話をしに、ギルドの1Fの奥にある。
ミナがアミュレットデバイスとか武器の研究をしてる作業部屋にやって来た。
ミナに先程の件で謝罪と相談があるためだ。
「なんの用ですか。わたくし誰かさんのせいで非常にご機嫌斜めなのですが」
扉を開けて目が合い。明らかに嫌そうな顔で言われたのが少しショックだ。
「あのー。誤解を解きたくて来たんだけど」
俺がしおらしく言うと。なんの作業をしていたか分からないが、手を止めてくれた。
「紅茶でも飲みますか?」
「えっ」
いつもの表情に戻ったので驚いてしまった。
「ですから。誤解を解くのでしょう。お茶を淹れますから。ゆっくり説明してください」
「ああ。そういうことね」
そしてミナが紅茶を淹れてくれた。
対面に座ってから。恐る恐る飲む。
別に何かヤバいものが入っているとかそういうのでは無くてだ。
「あっま!」
砂糖はかなり多めで凄まじく甘い。
ミナは極度の甘党なのだ。
それに対して俺は甘いものはあまり好みでは無い。
「頭を使った後には、丁度良い甘さですよ」
いやいや限度が有るだろうに。
「それで誤解を解くって言ってましたが。わたくし。何か誤解をしてましたっけ?」
そう言い。淹れたて激甘激熱紅茶を飲み干すミナ。
やっぱり怒ってるよな。当然だけど目が笑って無い。
「いや、エドが俺と一緒に女と飲める店で会っていたって言う話の事だよ」
そう言うとミナはクスクスと笑う。
「そのことでしたら気にしてませんよ」
意外な反応をされて戸惑ってしまう。
「どうしてだよ。さっきはあんなに怒っていただろう」
確か俺、腹をおもっいきり殴られたよな?
それなのに気にして無いだなんて。
俺が不思議そうに考えてると。
「冷静に考えたら。こんな女より他の女の子の方が良いですからね」
笑っているのに、暗いオーラを放つミナ。
また始まった。
ミナは度々自暴自棄になる。
「どうしたんだよ急に」
「フェニックスの呪いとはいえ。ずっとあなたを傷付けて来ました」
フェニックスの呪い。
ミナがフェニックスの超回復能力を身に宿す対価というのだろうか。
魔力の暴走とはまた違い。
平気で人を殺そうとする。
まあ、そう言う風に創られたんだから仕方がない。
セプテ家の施設で生体兵器として生まれたんだもんな。
自身は死なずに。他者を圧倒する。最強で最悪の生体兵器。
ミナ自身はこの事を知らない。
いや。
そもそも。この事を知っているのは、世界中でも俺とカプリシアス。いや、レイカ姉さんだけだ。
「それがどうしたんだよ。呪いだぜ、仕方がない──」
「そうじゃありません!」
ミナが俺の言葉を遮った。
「このままじゃミナは、レイ君を殺しちゃう」
ミナが自分の事を名前で言う時は冷静じゃ無い時。もしくは俺に甘えている時。
後者だと抱きしめたくなる程可愛いいんだけどな。
なんて考えてる暇は無いな。
どうにか落ち着かせないとな。
「大丈夫だよ。簡単に俺は死なないから」
ぎゅっと抱きしめる。
「なぁ。1つ頼みがあるんだけど良いかい」
近くで見るその瞳はうるうると、怯えているみたいに震えていた。
「なんですか。急に改まって」
「大した話じゃないだけどね──」
ここで一呼吸置く。
「クレアとアオイを旅に出そうと思うんだ」
「はぁ!」
驚くというより、怒ったミナが俺を振り払おうとするが。しっかりとホールドする。
「ちょっと離してください」
「やだ。離すと俺が酷い目に合う」
「そんな事・・・確かにそうですね」
ミナの柔らかい体を両手でよりしっかりと抱いて。
「ならこのまま聞いてくれ」
「分かりました」
俺はエリスをクリスタルの加護を受ける為の旅にレイナを連れて行く話をした。
カプリシアスの事は伏せたが。
「そうですか・・・エリス様も大変苦労なさったのですね」
「そうみたいだ。それにアイカも一緒に行って貰うからさ。ほら、人数的には問題無いだろう?」
実はアイカも加護を受けていない。
それはこの前の検査の結果で分かったことだ。
「それは、そうですが」
ミナが渋るのも理解できる。
何故なら。
一般的に、クリスタルの加護を受けに行くのは13歳の年・・・高等部になってからだからだ。
「今しか無いんだ」
「エリス様の為にレイナさんやアイカさんが行くのは結構ですが。2人を連れて行くのは、何があっても反対です。」
「そうか」
それなら仕方がない。
最低最悪の切札を使うか。
本当は使いたくないが。
やむを得ないな。
「いい加減にしろクソチビが!」
面と向かって暴言を言う。
「はぁ!急になんですか!」
さあ。思う存分に怒ってくれ。
怒ってくれて結構だ。
「あいつらはもう充分に強い。それに背だってミナよりも高い」
「言い残すことはそれだけですか?」
顔を見なくても分かる。
ブチギレている。
が、まだ足りない。
「ならいつもみたいにキレてみろよ。クソチビが!!」
追い打ちをかけるように俺は続け。
ミナの胸ぐらを掴んだ。
「殺す!」
そう言い放なたれた俺は、回し蹴りを喰らい。俺は突き飛ばされた。
「イタタタ」
軽く頭を打ったようだが。
そんな事を気にせずに、刀を手に取るミナ。
後は想像に任せる。
どうやら気を失っていたみたいだな。
気が付くとミナの泣き顔が俺の目に写った。
膝枕されていて少し照れる。
「ごめ、ん。まだ。ミナぐぁ」
大粒の涙が俺の顔に降り注ぐ。
それ以外の液体も振り注いでるが気にならない。
着ていた服もズタボロになっているが気にしない。
傷が塞がっているんだ、文句は無い。
悪いのは俺だ。
だけど。
「謝っても許さないよ」
嘘を言いながら起き上がり。顔をハンカチで拭う。
「まだ、あん、ぜいに、っ!」
どんだけ泣いているのだろうか。
まともに喋れていないミナ。
「大丈夫だって。ほら、よしよし泣かないで」
頭を優しく撫で。
「ねえ。許してほしい?」
ミナは首を縦に何度もふる。
「なら2人を旅に同行させても良いよね」
しばらくして首を縦にふるミナ。
「ありがとう。愛してるよ」
俺はそっとキスをした。
我ながら酷い男だと思う。
だが娘達の為でも有る。
それにミナならどんな酷い目に合わされても平気だ。
あの時守れないかった俺のせいだからな。
これは一生俺を苦しめる罰なのだから。
223/01/3 15:00
ギルド フォレストセイバー アイカの部屋
アイカ視点
昼飯を食べ。少ししてからまた自主訓練をしようとしていたら。部屋にレイキさんがやって来た。
「ごめんな急に。アイカも訓練で忙しいだろうに」
「全然良いですよ」
「なら良かったよ。それで話なんだが。明日からレイナとエリス。それと俺の娘達と一緒に旅に出て欲しいんだ」
「旅ですか?そんな急に」
「まあそりゃそうだよな。少し事情があってな」
「そうですか。でもまだ俺、まともに戦える自信無いです」
訓練を初めて数日。
強くなった感じがあまりしない。
「アイカは強くなってるよ。それに、レイナが言ってたよ。本気出さないと攻撃をかわせないって」
「本当ですか?」
「ああ。本当だとも」
そう言って。俺の肩に手を乗せる。
「アイカに娘達と俺の妹を頼みたいんだ」
真剣な眼差しで俺に言うレイキさん。
「俺で良ければ頑張ります」
「期待してるよ。そうと決まったら早速準備だね。1時間後にギルド長室へ来てくれ」
「分かりました」
「待ってるね」
そう言ってレイキさんは部屋を後にした。
「旅かぁ・・・にしてもいきなりだよな。クエストだってまだだし。お金とか大丈夫なのかな」
自分の実力以外の不安が大きい。
このギルドに入ってからというもの。
タダで生活をしている。
何もしてなくてもご飯は出る。
それに毎週お小遣いを貰ってたりもした。
いったいどこからそんなお金が出てるんだろうか。
記憶が無いからというのもあるが。
それを除いてもこのギルドは不思議だ。
まだ会った事の無いソルジャーの方達が多い。
全員で20人位居るって聞いたけど。まだ半分位の人達としか会っていない。
「まあそのうち会う機会なんていくらでもあるだろうな」
と考えながら時間まで部屋の掃除をする事にした。
それから1時間後。
ギルド長室の前にやって来た。
ノックをするとミナさんがどうぞと言った。
「失礼します」
中に入ると。
机に座ってるミナさんの前にレイナとエリス。
それとミナさんに似た子が2人並んでいた。
「ミナ姉ぇ。これで全員揃ったよ」
レイナが言うと。ミナさんが。
「いいえ。後1人」
ミナさんの隣の空間が歪み。
中からレイキさんが出てきた。
しかし何回観ても驚くな。
「遅れてごめん」
「いったいどこで油売っていたのですか?」
不機嫌そうに言うミナさんに両手を合わせてごめんと言うレイキさん。
「お兄ちゃんの遅刻癖は昔からだよね」
レイナが冷たく。ヤレヤレといった表情で言い。
「まったくもう。子供達のお手本にならないでわありませんか」
「本当にごめん。少し手続きに手間取ってしまって」
「謝らなくて良いですわ。面倒な手続きをレイキさんに押し付けたのはわたくしですし」
「ははは。そう言ってもらえると助かるよ」
バツの悪そうに言う。
そんな兄をみかねたのか。
レイナが口を開いた。
「それで、あたし達が呼ばれた理由は?」
どうやら事情を知らないらしい。
「単刀直入に言うね。この5人でクリスタルの加護を受ける旅に出てくれないかい」
「えっ!良いの!」
驚きと喜びの表情をするレイナ。
「私。まだ国外に出たことないんですが」
戸惑うエリスに。
「わーい強くなれる!」
はしゃぐ赤髪の女の子。
「パ、パパと離れたく無いよ」
泣き出す青髪の女の子。
すぐさま、なだめにレイキさんがいく。
「生きる為に。強くなる為に必要な事なんだよ。──大丈夫。」
「でもでも。魔物と戦うなんて私たちできないよー!」
「大丈夫だって。レイナやアイカ。それに王女様だって付いてるんだよ。心配する事なんか無いさ」
レイキさんがなだめるがわんわんと無く青髪の女の子もといクレア。
「やだやだ。レイナ姉ちゃんは強いけどアイカって子は強そうじゃないもん」
当たっている事だけど。こんな小さな子供に言われて少しムッとする。
「こらこら駄目だよそんなこと言っちゃあ」
「あーもう。クレア姉ちゃんばかりズルい。アオイも構ってよ」
自身をアオイと言った子が2人の間に入る。
「いつも俺じゃなくて、クレア姉ちゃんばっかり構ってる。ズルいズルい!」
ポカポカとレイキさんを叩く。
「痛い痛いって。ミナも見てないで止めてよ」
そう言われたが座ったまま見てるだけ。
「止めなくて良いんですかミナさん?」
俺が言うと。
「今止めたら。わたくしに飛び火しますから」
そう言われてしまい。どうすることも出来ずにいると。
しばらくして2人が落ち着いたので話が再開された。
「まあ。みんなが不安がるのも無理は無いさ。けど大丈夫だ。無理そうなら、そもそもこんな提案はしない」
俺達を励ますように言ったが。
「私も凄く不安です。それにお父様がなんて言うのか・・・」
かなり不安そうにエリスが言う。
「それなら問題は無いさ。ちゃんと国王様には許可は取った・・・というかその国王様から頼まれたんだ」
「お父様がですか!」
目を丸くし驚くエリス。
「ああそうだよ。だから断る理由なんて無いさ。それともなんだい。城に帰るかい」
優しい表情だが。口調は冷たかった。
「それは、そのう。嫌です」
小さな声でやや震えながら言うエリス。
「もう。なにさなにさ。13才になる子供が行ってる事なのよ!大丈夫だってあたしも付いてるし」
レイナがエリスを励ますように言うので。
「確かにそうだな。大丈夫だって。俺もいるから」
俺も続いたが。
「今のアイカ君じゃ不安です」
その言葉に少しイラッと来たが。
「けど。ありがとう。私、頑張ります!」
笑顔になってくれたので良しとしよう。
「そうと決まれば」
レイキさんがヘビの形をした剣のような武器を取り出す。
「みんな対俺で訓練だ!」
世界設定解説その3
ギルドについてその1
ギルドは街や村に基本的に1つ以上あり。
主にギルド周辺の魔物の管理や討伐を行う。
場合によっては遠くの現場に行くこともある。