第一章 第3話 カプリシアス(6/7改稿)
今回から5000文字程度で更新していきます。
223/01/3 08:50
ギルド フォレストセイバー
ギルド内訓練場
アイカ視点
新しい年になり。レイナが俺と同じ年だと言うことが分かった。
レイキさんの提案で。再び暴走しないかの確認でレイナと何度か模擬戦を行ったが。
一回もレイナに勝てなかった。
「やっぱりあたしって強いよね♪」
自信満々の笑顔で言われて正直ムカっときた。
そんな俺の顔を見てにやぁと笑い。
「あれぇ。怒ってんの?文句があるならあたしに一撃与えてから言ってよね」
煽られて余計に腹が立ったが。
確かにその通りだ。俺はこの数日間。一度もレイナに攻撃を与える事が出来ていなかった。
コイツ無茶苦茶すばしっこいんだ。
「あたしのスピードに追いつけるようにせいぜい頑張ってね」
肩をトンッと叩かれ。
そのまま置いて行かれた。
「クソが!」
拳を握り。何も無い所を殴る。
そんな事をしても無駄なのに。
「どうやったらアイツに攻撃が当たるんだよ」
悩んでも仕方が無い。
とりあえず俺は部屋へ戻る事にした。
俺が部屋に戻ろうとすると。
レイキさんが話しかけてきた。
「今時間あるかい?」
「ありますよ」
「そうか。なあ聞いたよ。あれからずっとレイナに惨敗だって事」
レイキさんは初日こそ同行していたが。
多分大丈夫と言い。それから様子を見に来る事は無かった。
「そもそも攻撃が当たらないんですよ。どうやって勝ったら良いんですか」
俺が言うと少し間を開け。
「だったら魔法攻撃を仕掛けるのはどうだい?」
「魔法ですか?」
「範囲魔法なら、素早い敵にも命中させる事が出来るから。その隙に物理攻撃を仕掛けると良いよ」
簡単に言うが。俺は魔法を使った事が多分ない。
「使い方知らないんですよね」
「だったらうちに、魔法のエキスパートが居る。丁度今日は、ギルドに居るはずだから」
アミュレットデバイスを取り出し。通話を始める。
小型のモニターに、いかにも魔法使いという風貌の女が写る。
「なによレイキ。仕事なら今日は受けないわよ、ふぁーあ」
気だるそうにあくびをする。
「寝不足かいリリア?」
「ええ、ちょっとね」
「頼み事があったけど。寝不足なら仕方が無いな」
「話だけなら聞くけど。そこの少年は誰?」
両目を拳でクルクルと擦りながら俺を見て言う。
「最近入ったアイカです。」
「君が噂のアイカかぁ。私はリリア・カンパーネ。このギルド1の魔導師さ」
「よろしくお願いします」
「話は聞いてるよ。なんでも一撃でレイキを倒したんだってね凄いね」
「まあ覚えていないんですけどね」
「あのときは俺も油断してたからな」
言い訳をするレイキさんを無視し。
「それで頼み事ってなにかしら?」
「アイカに魔法を教えて欲しいんだ」
「私が?」
「そうだけど……無理かい?」
「良いけど。アイカに魔法の素質あるの?」
少し考える素振りをするレイキさん。
「知らない」
そう一言言うと。
明らかに頭にきた様子のリリアさんが。
「はぁ!なんで素質があるか分からない奴に私が教えないといけないのよ。そういうのはアンタがやれば良いじゃないか!」
捲したてる様に言った。
「まあそう怒るなって」
「あんたが怒らせたんでしょうが!」
確かにそうだと俺も思った。
「他に適任者が居ないんだよ。俺もこの後来客が有るからさ。頼む引き受けてくれよ。リリアにしか頼めないんだからさ」
そう言われると。少し頬を赤らめて。
「そ、そうゆう事なら。引き受けても良いけど」
髪を指でクルクルとしながら、そう答えてくれた。
「ありがとうリリア。ほら、アイカ君もお礼を」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げた。
「魔法の基礎から教えてあげるから。30分後に私の部屋に来なさい」
223/01/3 09:30
ギルド フォレストセイバー
リリアの部屋の前
アイカ視点
そういう訳でリリアさんの部屋の前に来た俺だったが。
よくよく考えれば女の子の部屋に来るのなんて初めてで。今更ながら緊張してきた。
チャイムを押してなんて言ったら良いんだろうか。
普通に今日はよろしくお願いしますで良いんだろうか?
それともなんか違う挨拶が有るのだろうか?
俺が部屋の前であたふたしていると。
部屋のドアが開いた。
「部屋の前でなにしてるの?」
リリアさんが不思議そうな目でこちらを見てきた。
「ああ。すみません。今更緊張してきてですね」
「ふーん。そうなんだ」
クスッと笑って。
「いいから入りなよ。別に取って食う訳じゃ無いんだから」
「すみません。お邪魔します」
そのままリリアさんの部屋に入った。
「げぇっ!」
部屋の中は物凄く散らかっていた。
魔導書と思われる分厚い本や。
女性向けのファッション誌等がそこら辺に散乱していた。
「げっ!ってなによ。部屋が汚いのがそんなに不服かしら?」
「いや。流石に本が散乱してたら言いますよ。足の踏み場もないじゃ無いですか。」
「分かったわよ。片付けるから待ってて」
そう言われテキパキと本をまとめて部屋の隅に乱雑にまとめた。
いやまとめたと言っていいのか。
どちらかと言うと固めたが正しいのかな。
「座る場所確保したから座りなさい」
俺は空いた空間に腰を下ろした。
「それであなたは魔法について。どれくらい知っているのかしら?」
どれくらいと言われても困る。
属性が9つ。炎、氷、雷、水、地、風、光、闇、無。がある事くらいしか知らない。
「属性の数くらいですかね」
俺が言うと深いため息を吐かれた。
「それくらいレイキが教えなさいよね。ったく──そしたらまずは各属性の相性から教えるわね」
ポケットから紙とペンを取り出す。
「まずは対になる属性からね。」
紙に文字を書いていく。
「炎と氷。水と雷。地と風。光と闇。これらはお互いに有効で。分かりやすく言うと。与えるダメージが増えるけど。受けるダメージも増えるわ」
不味い。この段階で頭が痛い。
「えっと受けるダメージが増えるのはどうしてですか?」
「例えばだけど。炎属性の人──Aにしておきましょうか。Aが氷属性のBに炎魔法を放ったとします。その時氷の弱点である炎なので受けるダメージが増えます」
分かりやすく紙に棒人間を書いて説明してくれるリリアさん。
「その後Bが、Aに氷魔法を放ったとします。この時も炎の弱点である氷なので受けるダメージか増えます」
「あーなるほど。他の属性。光と闇も同じなんですね」
「そうよ。ここまでは分かったかしら?」
「はい。なんとなくですが」
「属性毎にもっと細かい相性があるんだけど。今はこのくらいの認識で大丈夫」
そう言って立ち上がった。
「どうしたんですか?」
右手を口元にやり。しばらくうーんと考えこんだ。
「やっぱり私。教えるの苦手だな」
そんな事言われても困るんですが。
「そうだわ!」
両手ををポンッと軽く叩いて。
「地下の訓練場にでも行こうか。そこで簡単な魔法の打ち方を教えてあげるわよ」
223/01/3 09:30
ギルド フォレストセイバー
ギルド内応接室
レイキ視点
いくら顔見知りいや。友人とはいえ。
この国の国王の前では流石の俺も緊張していた。
「それでレイキよ。エリスは元気にしているかな」
俺の前に座っているのは、この国フェニックス王国の国王。エドワード・フェルナだ。
俺は昔世話になって。その後恩を返す為にこの国に引っ越し。あろうことか国王から友と認められた。
「そう固くなるな。俺とお前の仲だろう」
そうは言っても国王だよ。
固くならないのが難しい。
「なにを緊張しているのですか?あなたらしくない」
俺の隣のミナは普段通りに座っている。
流石元お嬢様だな。
「緊張してる訳じゃ無いんだけど。今回エドが来た理由が理由だからさ」
「だからわたくしは、エリス様がこのギルドに入る事を反対したんですが」
なにも言い返せない。
「まあまあ。ミナよ。別に俺はエリスがギルドに入る事を反対はしていない」
「あら。そうでしたか。わたくしは、てっきりその件でレイキさんに制裁に来たのかと」
そう思ったのなら。どうして平然としていれるんだよ。
「制裁などする訳が無い。このギルドは今やこの国一のギルド。そのギルドに俺の娘が加わることは大変喜ばしい事だと。レイキも思わないか?」
「いや。まあ──思わなくは無いのかな」
「しっかりして下さい。レイキさんがそんなんではわたくしも不安になってきますわ」
左手をギッと握られ。
「確かにそうだね」
なにも固くなる必要性はない。
第一にだ。このギルドに入る事をエリスの方から頼んで来たのだ。
俺は一応反対をした。それでもエリスが食い下がらなかったので仕方なくギルドに入れたんだ。
当然まだクエストに行ってもらっていないが。
「本当に普段通りで良いぞ。──ほら一緒に飲みに行くときみたいにな」
エドが言うと。
隣のミナから殺気が飛んできた。
「ちょ!エド」
「あら。わたくしとは飲まないのに。国王様とは飲まれるのですね」
笑いながら黒いオーラを纏うのはやめて欲しい。
「後でちゃんと説明するから。今は落ち着いて」
「分かりました。後で切り刻みますね」
情状酌量の余地無しですか。
そんな俺等のやり取りを微笑ましく見るエド。
「相変わらず仲が良いな」
「わたくしが一方的に愛してるだけですが」
ムスッとした顔じゃなくて。せめて照れながら言ってよ。とか思っていると。
エドが。
「さっきの話だが女の子と飲める店だから」
サラッと爆弾を落とすなよ。
ミナがブチギレんだろうが。
「レイキさん」
ボソッ言われ。背筋が凍る。
「この浮気者!」
叫びながら腹パンされ、俺は蹲った。
「ゲホッゲホ。落ち着けミナ」
俺がミナを宥めようとしたら。
小声で。
「後で覚えてろよ」
そう言ってミナはそのまま部屋から出て行った。
殺気混じりの目で言われたので。
俺は止める事が出来なかった。
「これで2人で話せるな」
平然とエドが言う。
「お前のせいで夫婦仲は最悪なんだが。どうしてくれるんだい?」
「お前も分かってるだろう。ミナが居ると話し辛い話をする事を」
勿論それは分かっていた。
しかしやり方があるだろうに。
あーあ。後が怖い怖い。
「それでその要件はなんだい?」
「お前はアイカの事をどう思ってるんだ」
「エドがどうしてその名を知ってる」
俺が驚くと。
「知ってるもなにも。エリスがずっと話してくれていたからな」
なんだそうゆう事か。
俺はエリスが夢で未来を見ることを知っていた。
前に本人から聞いたからだ。
恐らく夢で見た事を父であるエドに話したのだろう。
「俺の娘が初めて好きになった男だ。気になるに決まっているだろう」
「で、そのアイカに会わなくて良いのかい?」
「会う必要は無い。エリスの邪魔をしたくないからな」
その割には少し寂しそうな顔をしてる。
「アイカをどう思うかって言っていたな。──そうだな。初めてあった時にレイカ姉さんに似てると思ったな」
数年前に行方不明になった俺の姉。
生きているかどうかすら怪しい。
「やはりか。エリスから聞いたんだ。アイカはミプリヴァリナーだと言うことを」
ミプリヴァリナーが作られた存在だと言う事をエドも知ってる。
何故ならばかつての『ミプリヴァリナー製造プロジェクト』は、フェニックス王国とセプテ家の共同で行われていたからだ。
「この件にレイカ──いやカプリシアスが関わっていると思わないか」
カプリシアス。レイカの偽名だ。
何の為の偽名なのか知らないが。
その名で昔俺達と──いや。俺と付き合っていた。
「今更アイツが現れるとは思わないがな」
「エリスから話を聞いていないのか?」
「俺が聞いたのは夢で見た男を好きになって。その子と同じ。ギルドに入りたいとしか聞いてないが」
そう言うと。少し考えるエド。
「聞いてなかったのか」
「だから何をだよ。勿体ぶらずに言ってくれないかい?」
唾を1つ飲み。意をけしたのか。
「アイカがエリスを庇って死ぬんだそうだ。その相手が」
「まさか」
「ああ。特徴がカプリシアスと瓜二つだった」
世界設定解説その1
・世界の暦
この世界は1ヶ月間が28日で終わり。
13月だけ29日がある。
1年間は365日。