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第1章 第15話 ギルド内対抗戦1

223/01/9 08:50

ギルド フォレストセイバー

ギルド長室

レイキ視点


昨日の夜にギルドに戻って来て早々の事。

帰ってきた俺達を、笑顔で出迎えてくれたシアが、俺に言った。

「11日のギルド内男女対抗戦の準備忘れていませんか?」

それを聞いて驚いた。

完全に忘れていたからだ。

「ああもちろん。出来ているよと」

答えたがマジで忘れていた。

なら中止にすれば良いと思うかもしれないが。

そうはいかない。

各ギルドは年に一回。ギルドのソルジャーの力が、どんなものかを観客に見せる興行をしなければいけないと言う。非常に面倒臭いルールがある。

「もうチケットは完売したので。当日は盛り上げて下さい」

とだけ言われ今に至る。

「マジでどうしようか・・・」

例年5対5の団体戦でそれぞれ1人ずつ戦い。勝った人数が多いチームの勝ちと言うシンプルな物だ。

ただ現状でギルドに居る男は俺とアイカともう1人だけ。

他の奴らに声をかけていない。

早朝にナハに連絡をしたが休暇で国に帰ってると言われたし。

ナハと同じチームの2人も違うクエストに行っていて間に合わないと。

「人が居ねぇ!」

そう人手不足である。

それなのに向こうのチームはもう決まったと寝る前にミナに言われ。

「まさか忘れてませんよね?」

怒ると怖いミナに、はいそうですと言えれば苦労はしない。

「もちろん出来てるよ」

と笑顔で誤魔化した。

「だいたいシルヴァも言ってくれればいいじゃねぇか!アイツ知ってて何も言わなかったなこんちくしょう!」

誰も居ない部屋で1人でキレていた。

自分が悪いのはもちろん知ってる。

「色々あり過ぎたんだよ……覚えてられねぇーって」

俺が机に突っ伏して悩んでると。

ノックが聞こえたので。どうぞと答えドアが開いた。

「やあ久しぶりだねレイキ」

長く白に限りなく近い水色の髪を後ろに縛っている青年が入ってきた。

彼の名前は、フロート・アクエル。

サミサの旦那で俺の学生時代の友達だった。

「フロートじゃないか!元気にしていたか?」

実に会うのは3年ぶりだ。

最後に会ったのはサミサとの結婚式の時だったな。

「俺は元気だったよ」

「そうか。でもなんでここに来たんだい?」

「サミサに頼まれたんだよ。こっちで暮らしてくれって」

「いや待て待て。お前仕事は?スノードール城の衛兵してたんだろ」

サミサとフロートは結婚したがそれぞれの仕事の都合で遠距離生活をしていた。

「ははは。3日前に辞めてきたよ」

「3日前って……つい最近じゃないかよ」

「それでだ。ここのギルドに入いる事になったからまたよろしくな」

「待て待て。聞いてないぞ」

俺、ギルド長なのに知らないんですが。

「昨日ギルド長代理に許可を取ったんだけどな」

そういえばナハから連絡あったな。

レイナに説教してて。返すのを忘れてたけど。

「マジかよ……まあフロートなら問題ないだけどさ。俺の立場って物があってね」

と俺が言っていると。

俺から見て左側にある扉が開かれた。

そこはミナの研究所であり。

当然小さな美少女が出てきた。

「フロートさんお久しぶりです」

「やあミナ。久しぶりだね」

俺は冷や汗をかいた。

「いつから居た?」

朝食後に「鍛錬に行ってくる」って言ってから姿を見てなかったので。研究所に居ると思ってなかったのだ。

「レイキさんが1人で悩んでる所から扉越しに聞いてましよ」

ああ終わった。

ミナに嘘ついたのがバレた。

「フロートが入るとなると明後日のメンバー編成変えないといけないな」

とりあえず話を変えて誤魔化すことにした。

チラッとミナを観ると。それはもう最高に可愛い鬼の形相でこちらを見ていた。

「俺も対抗戦に出て良いのか?」

嬉しそうに言うフロートの顔を見て俺は。

「むしろ頼む。人が居ないんだ。頼む!」

立ち上がりミナから逃げるように、右側からフロートの元へと向かい。

「忘れてたんだよ。それで人が集まって無いんだよ!マジで助かる!」

両手を硬く握り上下に振った。

「力になれるのなら俺も嬉しいよ。当日は期待してくれ」

「ありがとう。それじゃあ俺は用事があるからまたな」

と言い。空間転移でその場から逃げ出した。

ミナが『待ちなさい』って言っていた気がするが、気にしない。俺が怒られるのは確定事項だからだ。

後で全力で謝ればいい。

「バタバタ逃げたからな変な所に出たな」

俺が転移したのはギルドの屋上だった。

普段なら転移先をイメージしてそこに向かうのだが。

急いでると大抵変な場所に出る。

「そういえばここに来るの久しぶりだな」

フェンスから町を眺める。

「あれ。クレアとアオイだ」

姉妹並んでソフトクリームを食べながら歩いていた。

「相変わらず仲いいよな」

2人が喧嘩してる所を一度も見たことがない。

親としてとても誇らしい事だ。

「俺もミナとああやってデートしたいな」

溜息が出る。ここ最近まともなデートをしていないからだ。

「そりゃあ子供の事だったり。ギルドの事で時間取れないから仕方がないけどよ」

お互いにやらなくちゃいけない事が多過ぎて。寝る時位しか夫婦の時間が取れない。

それにクレアとアオイと同じ部屋だからエッチも出来ないし。

かといって子供を置いて出掛けるのもなぁ。

「ってか。なにを考えてんだろうな俺は」

おもむろにアミュレットデバイスを取り出す。

「ああ。シルヴァ頼みがある」

藁にもすがる思いでシルヴァに通信をした。

「どうした親友?」

「いや明後日の件だけど」

「対抗戦の事か?」

「その件で相談があってね」

「俺様は、出ないぞ」

秒で拒否られた。

けど頼めるのはシルヴァしかいないため。

「そこをなんとか頼むよ!」

「分かった。ただし条件が2つある」

「聞かせてくれ」

「一つは、ミナと戦わせてくれ」

「別に良いが。オーダー表見ないと分からないが。どうするんだい?」

「それはどうとでもなるさ。2つ目は、久しぶりに飲みに行こうぜ」

条件が緩すぎて拍子抜けだ。

「そんなので良いのか?」

「良いに決まってるだろうが!俺達の仲だろう」

「ありがとう。恩に着るよ」

「それじゃあ今日の夜飲みに行くぞ!断ったら出ねぇからな!」

「えっ!ちょっと待って!あ、切りやがった……日付まで言ってなかったからな。仕方がないミナに怒られてやるか」

と通信を終了して帰ろうとした。

「へぇ……怒られたいんだぁ」

と完全にキレている嫁が立っていた。

「頼みがあるんだけど……良いかい?」

俺は気にせず近づいていく。

「なんで逃げたの」

頼み事を聞いてくれそうに無いな。

というか今友達と飲みに行くって言ったら……考えたくないな。

「怒られたくなかったから」

ここは正直に話す。

「そうですか」

ミナの目の前に来て抱きしめる。

「ごめんね」

「良いですわよ。今までの事もありますし」

俺が思っていたよりも。実は、怒っていないらしい。

むしろ泣いてるのか、少し声が上擦っていた。

「不安にさせないで下さい」

頭を撫で。その不安を消そうとする。

「ごめん」

「怖いんですよ。あなたが離れていくのが」

「ごめん」

ただ謝ることしか出来ない。

ミナから抱き締めてこない。

このまま許されないのだろうか。

「キスして」

唐突に言われて。

本当に嬉しかったんだ。

気付けば俺は、ミナを持ち上げていた

「ひゃあ。どうして持ち上むぐぅ」

愛を込めてキスをした。

「ちょっ、ほんムッ」

一回途切れたが、また口と口を繋げた。

それから。5分位キスしていただろうか。

ミナがアルコールでも摂取したように、トロンとした顔になっていた。

「あぁ!可愛いな本当もう」

ここじゃあもっと愛せない。

そのままミナと一緒に空間転移をした。

ミナの研究所について、目一杯可愛がった。

時間なんか関係ない。

愛情を吐き出したかった。

ただそれだけだった。

俺はちゃんと愛してるんだ。

それが伝われば良い。

研究所に敷いた布団(ミナの仮眠用)の中からふと時計を除くと、もう12時を回っていたので。

「そろそろ仕事に戻らないとな」

「名残惜しですが。いつまでも休んでいるわけには行きませんからね」

投げ捨てた衣服を着ようと布団から外へ出て。

着替えたが。

ミナはまだ布団の中だった。

「服着ないのかい?そのままだと風邪引くよ」

「ええ。着ますけど……そのぉ恥ずかしくて」

と顔を赤くせず言うので。

何かを隠してると思った俺は、掛け布団を思いっきりはいだ。

「きゃあ!ちょっとみ、見ないでくださいよ」

真っ白く透き通るような素肌が目に入る。

咄嗟に胸と股は隠されたが。特に何も異常は無いな。

そう思ったが。

俺は、思い出した。

カプリシアスに受けた傷の事を。

直ぐに治らなかったって、皆が言っていたよな。

「ミナ、背中を見せろ!」

ミナに覆い被さり。無理やり背中を見ようとした。

「嫌ですよ。もう見ないで下さい!この変態!」

今は、いくら暴言を言われても良い。

全部許してあげる。

ミナは俺に。心配をかけたく無いから、こう言ってるだけだと思うから。

「辞めて!もう、辞めて下さい!」

とポカポカと俺を殴り。抵抗するミナ。

行為の余韻のせいか。いつもよりも力がない。

今この状況を他の奴に見られたら殺されるな。

「じゃあ見せろよ!……カプリシアスに攻撃されたんだろう」

俺から目を逸らしたミナ。

「もう、治りましたから!」

嘘を付く時に目を逸らす癖がある。

その癖を知らないと思うなよ。

「なら見せてくれよ。心配なんだよ!」

ミナは昔。カプリシアスに殺された。

俺がカプリシアスにお願いをして生き返らせて貰ったんだ。

フェニックスの力を再びミナに与える事でね。

「見られたくないって言ってるでしょう!」

怒るミナも可愛いが。

それで誤魔化されてはいけない。

「治ってないからだろ!」

「違いますわ!恥ずかしいんで」

「じゃあこっちは?」

「ふぇ」

ミナの脚を思いっきり広げてやった。

ミナの秘所があらわになる。

すると顔を真っ赤にして俺に言った。

「殺す」

普通にやりすぎたな。

ガチギレしてしまった。

起き上がったミナに顔面をぶん殴られた。

後ろにのけ反った俺に追撃のパンチが飛んできた。しかしこれはチャンスだ。

それをしっかりと顔に受けたが。

お返しにミナに抱きつけた。

そして目線を下にやって背中を覗いた。

「ほら。治って無いじゃない……おい、お前!」

背中が傷だらけだった。

2箇所を刺されたとは聞いていたが。

それだけじゃない。

薄っすらとだけど鞭打ちの様な後が残っていた。

「ち、違うんですこれは、これは!」

「俺を殴ってまで隠したかったんだね」

意地悪なことを言う。

ミナは暴走する度に俺を傷つける。

別にそれは良いんだよ。

それは俺の守れなかった責任だから。

けど。ミナは気にしていた。

ミナは傷付けたら、その分だけ自分を傷付けたがるんだ。

俺は望まないのにね。

過去にも何度もある。

「み、見ないで」

「もう見たよ」

次やったら離婚するって言っていた。

だってそうだろ。

俺は嫁に自傷行為をさせたんだ。

責任は取るよ。

船でもされて正直腹が立った。

それは、俺が昔の事言ったからだけど。

「俺は望んで無いって言ったよな!」

感情が抑えれず。

つい怒鳴る。

「ごめんなさい」

顔を見ると。うるうる瞳を湿らせていた。

それを見たけど。俺は頭にきていた。

「愛してる奴がこんな事をして喜ぶって思うか?思わないよな!」

再度抱きつき言う。

「だって、だって!」

と子供みたいに否定するミナ。

「俺も同じ事をするけど文句ねぇよな!」

と言うと。

「それだけは辞めて下さい!もうしませんから!」

と懇願された。

ふるふると震えるその身体。

「そう言ってもまたするよな?……マジでふざけんなよ!」

より強く抱きしめる。

「だったら。やり返してくださいよ!」

そう言われるがそうはいかない。

フェニックスを殺されるのは、ミプリヴストーンの力。すなわちそれを使えるミプリヴァリナー。

だから俺がミナに、ミプリヴストーンで作られた武器で攻撃したらミナが死ぬかもしれない。

そんなは嫌だ。

それこそ俺は望んでない事だ。

「ミナの嫌いな所言ったのにね。自傷行為されると苦痛でしかないんだ。平気な顔でよく出来るね」

「やだ、やだ!離婚したくないよ」

俺から離れまいと。爪を立てしっかりと固定するミナ。

「だったら辞めろよ!俺を苦しめるだけだろうが!」

「でも!でも!」

最悪だ。

別に喧嘩したいわけじゃないのにな。

「本当に俺を好きで愛してるなら。2度としないでくれ」

「分かりました」

大人しく言うミナだが。

「ミナに同じ辛さを味あわせてあげようか」

俺はミナに同じ経験を積ませたかった。

「えっ!」

と驚く声が聞こえたが知らない。

亜空間から取り出したクリスタル王蛇を操り。

自身を貫かせた。



223/01/9 12:00

ギルド フォレストセイバー

医務室

レイキ視点


目が覚めるとミナが隣でわんわんと泣いていた。

頭を撫でてやったら俺が目を覚ましたことに気が付いた。

「バカぁ!」

と言われ激しく抱きつかれた。

「死んじゃ嫌だよ!」

「だったら自傷行為を辞めろよ。俺が約束を破ったことあるか?」

こう言うが実はかなり有る。

「無いですよ!無いけど!」

ごめん。めっちゃあるのに謝るのに必死だから気づいていない。意地悪が過ぎたな。

「好きで愛して止まないんだよ。だから辞めてよ。辛いから」

「でも対等じゃ」

と言われて腹が立つ。

対等じゃなくても良いのに。

年齢が違うし。

性別も違う。

能力も違う。

それは別に良いんだよ。

けどな。

頭の出来も違う。

ミナはアミュレットデバイスに付いて詳しい。

俺は全然分からない。

事務仕事もミナの方が向いてる。

俺よりも遥かにミナの方が……。

頭が痛くなった。

「舟で言ったよな!俺はミナが自分を傷付けるのを許さないって!俺を苦しませて楽しいのかよ!」

あの時ミナは、生まれ変わるとか言って。

腹を切ろうとした。

俺はミナをぶん殴り。

それを阻止した。

けどマジで殺したと思った。

降りる直前まで目覚めなかったんだ。

それで俺は……。

「楽しいわけないでしょう!」

肩をグッと掴まれ。鼻先が当たる距離で言われた。

「だったら辞めてよ。ったくケンカしたくないのに」

愛してるんだ。

それも依存するレベルで。

ミナが死んだら俺も死ぬ。

逆にミナも俺が死んだら死ぬ。

それ程。お互いにお互いを好きなんだ。

だからミナの行為の意味も俺は理解してる。

「もうしないから許して」

なんで泣きそうになるんだよ。

泣かせたくない。

笑っていて欲しいのに。

「キスしてくれたら考え──」

って言った所でキスされた。

半ば冗談のつもりだった。

いつも俺からしてるから。

嬉しい。

けど。

こっちが恥ずかしくなるくらい。

濃厚な物をされて。マジで恥ずかしい。

それに今気が付いた。

ここは医務室だ。当然誰かが居る。

ふと周りを見ると。ナミがニタニタとこちらを見ていた。

「ぷはぁ!み、みるな!」

と柄にもなく恥ずかしがった。

「いやぁ~仲がいいよね」

よりニヤけた顔で俺を見るナミ。

「それは否定しないけ──」

キスを再開するミナ。

それを見てまだナミがニタニタと笑ってた。

「ミナに愛されてるね。良かった良かった」

なんとかミナを振り払う。

「分かった。ミナ大丈夫だから!ありがとう」

となぜかお礼を言う。

いや愛するよりも、愛される方が嬉しいから間違えではないか。

俺をじっと見つめるミナ。

少し怒った表情になり。

「ミナも嫌って言ったよね」

と言われて思い出した。

自分を傷付けたら許さないって。

お前が言うなって思ったけど遅かった。

むちゃくちゃキスされた。

ナミが見てる前で。

クソほど恥ずかしい目にあった。

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