第1章 第14話 怒られた
223/01/7 19:00
アイシクルタウン
宿屋
アイカ視点
かなりの時間怒られたレイナ。
俺達はずっと側でそれを見ていた。
「もうこれくらいにしとくよ」
やっと解放されたレイナが、ふらふらとベットに倒れ込んだ。
「お兄ちゃん怖い」
と呟いてそのまま動かなくなった。
「あー。いけないね。ホントに……頭に血がのぼってる。2人もさっきはごめんな。そのさ、あたってしまって」
いつもレイキさんの声で言われたので安心した。
「怖かったですよ」
俺が言うと。
「ははは。ホントにごめんなさい」
と頭を下げられた。
「私は良いですけどアイカ君が」
俺は別に良いのにコイツ……まあいいか。
「いや。僕は大丈夫ですから」
別にそこまで気にしていないから。平気な俺。
顔を上げたレイキさんが。
「それなら良いんだけど。そういえばエリス、話したい事ってなんだい?」
「ええ。私の夢の事で少し」
「聞かせてくれ」
真剣な表情になる俺たち。
だが1人だけ、何の話か分かってないって言いたげな顔をしているレイナが。
「というか夢ってなにさ」
と聞くので。
「エリスの能力だよ前に言ったよね」
あー思い出したと言わんばかりの顔をして。
「なんか言っていたね。夢の中の事が現実でも起こるってやつ?」
「そうですわ。その夢がハズレました」
それを聞いてレイキさんが。
「ハズレたって……どうして分かったんだい」
「私がみた夢では、今日氷の迷宮で、カプリシアスは出てこなかったんです。クリスタルガーディアンを倒して。そのまま魔導車に乗ったんですが……」
「そのあいだにアイツが現れたと」
「そうなんですよ。こんな事今まで無かったので怖くて」
「本当に一度も無かったのかい?」
「多少自分に不都合な事は、回避したりしましたけど。ここまで大きくハズレる事はありませんでしたわ」
「そうか」
うーむと顎に手を当てて悩んでいた。
「もしかしたらカプリシアスは、予知夢に介入できるのかもしれないな。まあ元々が夢だ。今まで当たってたいたのが不思議だからね……なんとも言えないが」
うーんと悩む兄対して楽観的なレイナが。
「あたしは全然分からないけど。別にハズレても良いんじゃない?」
「あら。どうしてですか?」
「どうしてって。そりゃあこの先に何が起こるかって知りたいけど。知らなくても別に変わらないじゃない」
「そうですけども。この力を持っていない、あなたには分からないですよ!」
珍しく語気を強めるエリス。
「そんなに怒らなくてもいいじゃんか」
「まあ。どうせお気楽なレイナさんには、私の苦しみが分からないですよね」
「誰がお気楽って言った!」
とレイナが立ち上がったが。
バンッとレイキさんが机を叩いたので座った。
「俺の前で喧嘩しないでもらえるかい?俺も混ぜてくれるなら。やっても良いけど」
と怖い顔で言うと2人共黙った。
「あー。で、実際夢で未来が見えるって言っても。現状アイカがカプリシアスに殺される。っていう事しか問題はない訳で」
俺にとっては大問題だ。
「お兄ちゃんは、アイカ君が死んでもいいって言うの?」
「違うよ。殺られるなら。殺られないようにすれば良いだけだろ?」
そうだけど。それ以外に言いようが無いかもだけど。
「ミナさんより強い人に勝てますかね」
「それは君次第だよ」
「そうですよね」
これ以上聞いてもレイキさんを困らせるだけだな。
「そういえばカプリシアスが使っていた。あの小さい人間みたいなのってなんですか?」
俺は聞きたかったことを聞く。
「ああ。あれはバトルドールって言っていたな。人型の魔物らしい」
なんか聞いたことがあるな。
そんなはずは無いけど。
どこかで……。
「それがどうした?」
「あ、いや。あんな風に戦う人って居ないので」
「まあそうだろうな。本人いわく、それがあいつのミプリヴァリナーの能力だってさ」
「そうなんですね」
それを聞いて。ますます俺の能力のショボさに泣けてくる。
ピンチで強くなるのは良い。
ただそもそもピンチになりたくない。
「ちなみにたくさんの種類があるみたいだから。戦う時は、気をつけろ」
そんな事を言われてもどうしたら良いのか分からない。
「カプリシアスの目的も分からないんだ。その上神出鬼没と来たら、いつ来てもおかしくはない。だからいつ来ても良いように強くなれ。それしか言えないよ」
確かにそうだけどさ。
ほら、もう少しアドバイスあっても良いんじゃないですか。
「エリスがまた夢を見る。その夢でまずい出来事だけ回避しようとする。その為には強くなる。これが一番分かりやすいだろ?」
「そうですよね」
と俺が言った所で。エリスのお腹が鳴った。
「はぅ」
と恥ずかしそうに顔を赤くするエリス。
「いい加減飯でも食べるか。これが最後の晩餐になるかも知れないし」
縁起でもないことをサラッと言う。
ははは。と愛想笑いで返すと。
「明日も無事に朝が来るって思ってんの?」
と急に真顔で言われ萎縮する。
「別にカプリシアスに殺られなくても。魔物に殺される事もあるからね。実際この世界で年間に1000人近く魔物に殺されてるんだよ。何があるか分かったもんじゃないぜ」
亜空間からクリスタル王蛇を取り出し。
俺に向ける。
「トチ狂った馬鹿に殺される事も無くはない」
そう言って立ち上がり。
武器をまたしまう。
「そういう訳だ。俺もミナに怒られて。明日亡き者になってるかもしれないしね」
と、また縁起でもないことを言って部屋を出ていった。
少しの間沈黙が流れた。
5分程経った頃に、またエリスのお腹が鳴り。
「お腹すきました」
と言うので。
俺達も食堂へと向かった。