最終話『おまじないはこれからも』
SNSでの目撃情報を頼りに、俺は企業ブースを必死に駆け巡った。
もう遠ざけたくなかった。
離したくなかった。
ずっと一緒にいたかった。
俺のそばで甘えて欲しかった。
俺自身も、亜音に甘えたかった。
「亜音!!どこだー!!」
人目もはばからず、俺は声を張り上げて見渡した。
そして…
「亜音!!」
いた。
西館の隅で、俺を見つけようとキョロキョロしている亜音がいた。
「亜音!!良かった、無事で…」
俺は亜音に駆け寄り、抱き締めた。
「ごめんな…あの時俺が一緒にいてやれば…」
「ホントよ、シュウのバカ…寂しかった」
亜音は俺の腰に両腕を回した。
そして、俺の懐で泣き出した。
亜音を連れ戻した俺は、その後有紗と交代した。
有紗は安堵した表情で亜音を抱き締めると、コスプレ会場へ去っていった。
俺が戻った頃には、個人誌はあと20冊を切っていた。
しかしそれも、わずか10分で完売した。
有紗の1冊分と、舞奈の3冊分を残して。
PM5:00。
こうして冬コミは幕を閉じ、俺はブースを片付けた。
もはやダンボール箱では収まりきらなくなった大量の差し入れは、6人で分け合う事にした。
「じゃあ、飯でも行くか」
「回らないお寿司が食べたーい!」
「ん〜〜〜〜…よし、何でも好きなモン、腹いっぱい食ってくれ」
「やったー!!」
3人がはしゃぐ中、有紗はキョロキョロしていた。
「どうした、姉貴」
「菅さんが見当たらないの。ご飯誘いたかったのに」
「アイツなら先に屋敷に戻ったッスよ」
悠月が口を挟んだ。
「『終わったら連絡ください。すぐに迎えに行きます』って言ってたッス」
「そんな〜。菅さんも誘いたかったのに」
有紗はあからさまにガッカリした。
俺と亜音は、菅さんの車で家の近くまで送ってもらった。
亜音の家のそばまで来た時、俺は口を開いた。
「あのさ、亜音」
「なあに?」
「今日は、楽しかったか?」
「うん」
亜音はニッコリ笑って頷いた。
「ただ、昼ご飯の後会場で迷った時は、ホント寂しかったかな」
「そこはホントごめんな。俺、彼氏失格だな」
「そんな事ないよ。あたしはもう許してるから。まさか、ずっと気にしてた?」
「ああ」
「バカね、ホント」
亜音はそっと俺を抱き寄せた。
「そんな事で、あたしはシュウを嫌いになったりしないよ。だって、必死になってあたしを探しに来てくれたんでしょ?それが嬉しかったの」
「そっか。ありがとな」
「礼を言うのはこっちよ」
亜音は顔を上げ、クスッと笑った。
その唇に、そっとキスした。
「好きだ、亜音」
「あたしも大好き、シュウ」
俺達は、もう一度互いに唇を重ねた。
誰もがみんな、ふとした事がきっかけでソイツと距離感を変えたがる。
そうして人を嫌いになるのは簡単だ。
けど、人を好きになるのも同じだ。
その先にあるのは絶望の虚無か、絆に満ち溢れた希望か、それだけだ。
俺は5年間、自分の殻に閉じこもっていた。
だが、亜音達との出会いが、俺に希望をくれた。
自分を変えたきっかけが、友人の気持ちを変えるきっかけにもなった。
そして、初めて人を好きになった。
大切にしたいと思うようになった。
俺はこれからも、亜音達と深く関わっていくだろう。
絶望の淵からすくい上げてくれた仲間を、これからもずっと大切にしたい。
そして、俺を好きになってくれた亜音と共に、この先の人生を歩みたい。
共に思い合い、寄り添い、支え合って。
「愛してるよ、亜音。これからもずっとな」
「あたしも大好き。永遠に」
完
これにて、『冷徹絵師は恋の魔法に掛けられて』完結となります。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
この作品は、当時高校1年生だった私が、
『主人公に何か自分と同じ趣味を持たせたい』
という発送から生まれました。
それから3年の月日を経て、シナリオの構成やキャラ構想を練った後、ようやっとGREEにて2作目として連載しました。
今はもうGREEの垢は残っていませんが、当時は悠月と舞奈も結ばれる形で完結しました。
しかし7年後、『やっぱ主人公とヒロインがこれからの愛を誓い合う形で締めくくりたい』と思い、シナリオを大幅に変更してpixivにて連載しました。
次に投稿する作品は、中学3年生の時に書いた作品が元となっております。
主人公がヒロインにデレデレな、3作目をどうかお楽しみください。
ひねくれ者でプロ絵師の修一、天真爛漫だけど寂しがり屋な亜音、複雑な家庭環境に生まれた豪放磊落な悠月、修一のイラストの大ファンでしっかり者の舞奈、修一がプロ絵師となるお膳立てをしたロリショタ好きな腐女子の有紗を、今後ともどうぞよろしくお願いします。
令和6年4月10日
御霊幽斗




