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第17話『ご馳走様です』

修一の部屋で、過去の同人誌を読む亜音。

そんな彼女は、『入稿したら、どこか行かない?』と誘う。

ちょうどコミケに向けて、新しいコーデを検討していた修一は了承する。


彼の為に真剣に悩む亜音。修一が選んだのは─。


第17話、どうぞ!

「ねーシュウ」

「何だ?」


もうすぐ12月を迎える頃、もはや当たり前のように俺の部屋でくつろぎに来ていた亜音が言った。


「同人誌の原稿、いつ頃終わる予定?」

「来週中にはな。で、何だ?」

「入稿したら、どこかでお出かけしない?」

「あー…そういや、久しぶりだな」


実はあの日4人で出掛けて以来、まともに遊びに出た試しがなかった。


「冬コミに備えて服が欲しいな…」

「じゃあ、またあたしが教えてあげる!」

「頼むわ」


そう言って俺は、引き出しにストックしてたネームを数束取り出し、亜音に渡した。


「ほい次。感想よろ」

「了解っ」




次の週の土曜日。


「終わった…あとは入稿して、印刷料振り込むだけ」


まだイベントまで、実に3週間以上の余裕ができた。


「お疲れ様。マッサージは?」

「頼むわ、女王様」

「…ちょっと鞭と縄持ってくる」

「待ってそこはツッコミ入れてほしかった」


だんだん俺のスケベ発言に慣れてきた亜音が、恐ろしくなった。




「ふう…サンキューな」


ほぐれた肩を回しながら、礼を言った。


「明日行くか?」

「どこへ?」

「デートだよ」

「…あ」


言い出しっぺが忘れてやがったようだ。


「もしもーし、亜音さーん。先週の約束忘れたんですかー」

「わ、忘れてない!忘れてないよ!で、デートでしょ?うん、ちゃんと覚えてるから!」

「必死かよ」


俺はフッと笑った。


「じゃあ、明日な」

「うん、また明日」


亜音はコートを羽織った。


「あ、シュウ」

「ん、何─」


振り返った俺に、亜音がキスした。


「大好き」

「ほんとズリィやつ。俺もだよ」


俺も亜音の唇にキスし、抱き締め合った。




そして日曜日。


「おはよー。…おっ、今回はまともね」

「おはよ。そりゃ去年の冬コミん時に、姉貴に選んでもらったヤツだしな」


今日の俺は白のタートルネックにカーキのファーブルゾン、黒のジーンズだ。

亜音はボーダーTシャツの上にパーカーとジージャンを羽織り、ホットパンツと黒ニーソを履いていた。


「…つーか亜音、ほんと短パン好きなのな」

「だってスカートだと、中見えちゃうんだもん。こっちの方が動きやすいし」

「おまけに黒ニーソとか…はぁ、好き」

「そこにときめかないでよ」

「朝からご馳走様です」

「崇めないで」


茶番はここまでにして、俺達は駅まで向かった。




「ところで亜音、脚寒くねーのか?」

「まだその話続くの…?別に寒くないわよ」


街を歩きながら、亜音は言った。


「素足に見えて、ちゃんとニーソの下にストッキング履いてるもん。ほら」

「いや、ここで見せなくていいよ」


亜音は腿のあたりをちょっとつまんで見せた。


「これ履いてるだけで、全然違うもん。それとも、生脚にニーソの方が良かった?」

「最高ですか」

「あるいは黒タイツにしちゃっても?」

「その脚で踏んで下さい」

「もしかして、シュウって脚フェチ?」

「たりめーだろ」

「…エッチ」


そう言いながらも、亜音は笑っていた。

自然と俺も笑いがこみ上げてきた。




で、前回も来た、亜音イチ推しのアパレルショップ。


「シュウって背が高いからさ、お兄系ファッションが似合うと思ってんだよね」

「お兄系?」

「ちょっとチャラついた感じの方が、案外似合うのよ」

「うへぇ…俺のキャラと全く正反対じゃねーか」

「それが意外と似合うケースもあるのよ。もちろん、人によるけどね」


亜音は近くのマネキンが着てるコーデを指差した。


「ほら、こんなのとかどう?」


カーキのモッズコートに白のニットセーターだ。


「ネックレスもつけて、首元のアピールしなきゃ」

「なるほどな…」

「次はこんなのどう?」


ベージュのカーディガンに白のVネック、グレーのジーパンだ。


「このカーディガン、意外と暖かいんだって」

「へーぇ、コレもなかなかいいな」

「白のタートルネック着てるなら、これなんかどう?」


今度はライダースコーデだった。亜音曰く、『上下とも同じ色なのがポイント』らしい。


「うーん…」


正直、どれもかっこいい。

着飾って、イベでも褒めてもらいたい。

ただ、どちらを買うか迷っていた。


「悩むわね〜」

「そりゃそうだろ。どれがいいかとか、決めらんねーよ」

「そーゆー時は?」

「どっちも買う。いくらだ?」

「いや、万札の枚数えぐっ」




数分後、大きな紙袋を提げた俺は、亜音と店を出た。


「ホントだ、コレ見た目以上に暖けぇな」

「でしょ?」


俺が選んだのは、カーディガンコーデだった。

高めの襟が開いたところから、首元を見せるのがかっこよく思った。


「Tシャツをヒートテックにすれば、イベント中ずっと座りっぱなしでも、多少は寒さを抑えられるかな」

「たしかにな。今年は例年より冷え込むらしいし、ちょうどいいわ」


駅前のカフェにて、俺達は昼食にした。


「シュウってブラック飲めるの?」

「まあな。小学生の頃から飲めるようになった」

「あたし全然ダメ。シロップとミルク無いと、苦くて飲めない」

「紅茶も?」

「うん。香りを楽しむとか、あたしにはまだ分からない。渋いし」

「…ほんっと可愛いかよ」

「もう、そればっかり」


照れ隠しの亜音の手が飛んだが、後ろに引いて躱した。

代わりに亜音のカフェモカが犠牲になった。


「あっ…あーあ」


テーブルいっぱいにカフェモカが零れ、カップが落ちた。


「ごめん、シュウ。ナプキン貰ってくる」

「いいよ、俺が行く」

「いやいや、あたしが行ってくるから」


そう言って亜音は席を立った。


その瞬間、前屈みになった亜音の襟ぐりから、胸の谷間がチラッと覗いた。


「亜音、見えてんぞ」

「えっ…あっ!」


亜音は自分の胸元に気づき、顔が真っ赤になった。


「どこ見てんのよ、ドスケベ!」

「さーて、ナプキンと代わりのカフェモカ注文してくるわ」


亜音の平手打ちをまたもや躱し、俺はそそくさとレジへ逃げた。


…ありゃDはありそうだな。


心の中で、俺はガッツポーズをした。




続く

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