表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

第16話『気づいた気持ち』

冬が近づき、朝の冷え込みが厳しくなってきた、ある日の朝。


いつものように亜音と登校する修一は、以前の人間不信な自分から変わりつつあることに気がつく。


出会ったばかりの頃は鬱陶しく思っていた亜音にも、次第に思いを寄せるようになる。


たどり着いた結論に戸惑う修一は、悠月に相談する。


そんな修一に告げた、悠月の一言とは─?


どうなる第16話!

だんだんと冷え込みが増してきた。


さすがに11月も後半になると、マフラー無しでは厳しかった。


「さっぶ…」

「おはよー、シュウ。寒いねー」


亜音が内腿を擦り合わせながらやって来た。


「早く行こ?」

「ああ」


俺は亜音の手を握り、一緒に歩いた。


「最近、あたしから言わなくても、手を握ってくれるようになったね」


白い息を吐きながら、亜音が言った。


「どうして?」

「さあな」

「はぐらかさないでよ。それとも、照れてんの?」

「照れてねーよ」

「じゃあ答えて?」


俺は空いた手で頭を掻きながら言った。


「…俺がそうしたいから」

「そっか。シュウもだいぶ変わったね」


亜音は笑った。


変わった。

たしかに、俺は亜音達と知り合ってから、人を避けなくなった。

人を信じてみたいと思った。

人に関心を持った。


そのお陰で、以前はトゲトゲしていた心が、丸くなったのかもしれない。


そんな俺に亜音は、『あたしと付き合ってください』と言った。


そして今、俺は亜音に対する気持ちが変わりつつあった。


明るくて人懐っこく、寂しがり屋な亜音。

キスから始まり、最近は大胆なアプローチまでかけてきた亜音に、だんだんと俺は惹かれてきた。

そう、俺は…。


「どうしたの?」

「…んっ?いや、何でもねぇよ」

「なーに1人で考え込んでるのよ。あたしに言えないの?」

「今はな」

「またはぐらかす。まぁいいや、いつか教えてね」


亜音は悪戯っぽく笑った。


途端に、俺の胸が疼いた。


何だ、今のは…?




「お前さ、そりゃ完全に惚れてるよ」


昼休み。

久々に悠月と2人きりで、階段の踊り場にて話していた。


「そうなのかよ…」

「自覚ねーのか?」

「無い訳じゃねーよ。ただ、分からなかった。これを『惚れてる』って思っていいのか」

「いいに決まってんだろ」


悠月はあっさりと言った。


「最近亜音は、オレ達の前でもシュウに大好きアピールしてんじゃん。それをお前は嫌がったりせず、受け入れてんじゃねーか。てことは、少なからず亜音の事意識してんじゃねーのか?」

「ああ…」

「ハッキリしねーなぁ…」


悠月は後頭部をポリポリ掻いた。


「お前、以前は亜音のこと『可愛いやつ』って思ってたんだろ?そっから何か、新しく思ったことはねーのかよ」

「たしかに亜音は可愛いさ。小動物みてーで、構ってあげたいぐらいにな。でも…」

「『でも』?何だよ」

「最近小悪魔っぽいところまで見えてきて、以前より可愛いって思うようになった。時折魅せる仕草に、ドキッとするようになったんだ。

見ててホッとしてたアイツの笑顔も、いつの間にかドキッとするようになった。

あの日から、亜音を意識するようになったのかな、俺…」

「あの日?」


悠月は首を傾げた。


「亜音に告白された日。実は俺、亜音に…き、キスされた」

「マジかよ」

「アイツは『恋を教えてあげる。これは最初の魔法』って言ってた。今になっては、完全に虜にされてんのかな…」

「されてるな完全に。つーか、話がめんどくせぇ」

「いてっ」


ノリに任せて、悠月は俺の頭をはたいた。


「お前も単純だな、キスされて意識しだすとかよ。それでいいんじゃねーの?男ってのは単純でなんぼだしよ」


悠月はケラケラ笑った。


「この際ハッキリしちまおーぜ。シュウ、お前は亜音が好きか?」


俺はひとつ深呼吸し、言った。


「ああ、好きだ」


悠月は頷いた。


「これでまた1つ素直になったな。あとは、それを亜音に伝えてやれよ。そうすりゃ、お互い気兼ねなく付き合えるだろ」

「そうだな。冬コミ終わったら、帰りに告るか」

「いや、遅ぇな。冬コミん時、気まずくなんだろ?」

「あー…そっか。じゃあ、冬コミ前日か」

「なんで冬コミ基準にこだわんだよ。あーもうめんどくせぇ、さっさと告っちまえ」

「へいへい」


人もまばらな踊り場で、俺達の笑い声が高らかに響いた。




「シューウ」

「わっ」


帰り道、亜音が俺の腕にしがみついてきた。


「ユズと何の話したの?」

「ちょっと…な」

「なになに?」

「待て待て。今から言うっての」


亜音は子犬のように目を輝かせた。

また、胸が疼いた。


「あ、あのさ…俺達、付き合って1ヶ月経つよな?」

「うん」

「あの日、その…亜音にキスされてから、俺ずっと…ずっと亜音のこと意識してた」

「うん」


だんだんと亜音の声のトーンが低くなる。

真面目に相槌を打ってくれるのが分かった。


俺は亜音と向き合い、両手を掲げて言った。


「降参だ。亜音の恋の魔法とやらに、すっかり虜にされちまったよ」

「そっか…」


亜音は微笑んでいた。

俺は心臓をバクバクさせていた。


俺はもう一押しする為、大きく息を吸い込み、言った。




「亜音が好きだ」




俺は今回ばかりは、亜音から目を逸らさなかった。


まっすぐにこの思いを伝える為、亜音のキラキラした瞳を捉え続けた。


顔が赤くなろうが、緊張で手が震えようが、それでも亜音から視線を外さなかった。


「やっと…やっと言ってくれた…」


亜音は目に涙を浮かべた。


「おい、泣くなよ」

「嬉しい…ずっと待ってた…シュウがあたしに『好き』って言ってくれるの…不安だったの、いつかシュウがあたしに愛想尽かして、また離れていくんじゃないかって…」

「そんな事ねぇよ!」


俺は亜音の肩を掴んだ。


「愛想なんか尽かすかよ。ただ恥ずかしくて、照れくさくて、亜音どころか自分の気持ちにさえも、まともに向き合わなかっただけなんだ。

俺は絶対に亜音の心から離れたりしねぇ。これからは俺も、亜音に俺の『好き』を伝えてやる。それが俺にかけてくれた、魔法のお礼だ」


俺は亜音を力強く抱き締めた。

亜音も俺の背中に両手を回した。


「好きだ」

「うん」

「大好きだ」

「あたしも」

「好きだ」

「うん」

「好きだ」

「うん」

「好きだ」

「うん」

「大っ好きだ…」

「うん…ありがと」


言えば言うほど、緊張がほぐれてきた。

抱き締めれば抱き締めるほど、亜音の優しい暖かみが伝わってきた。


ただただ、やっと『好き』が通じ合えて、嬉しかった…。




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ