第13話『絶望の中間考査』
テスト勉強に苦労する亜音と悠月のおバカコンビ。
修一が転校して来る前の舞奈の苦労は、計り知れないものだった。
亜音と悠月は、果たして赤点を回避出来るのか?
第13話どうぞ!
俺達がそれぞれ付き合い始めて、10日あまりが経った。
ついにこの時がやって来た。
生徒全員が絶望し、忙しくなる時期が。
そう。中間考査である。
「いーやーだー」
まだテスト前週間に入ったばかりだというのに、早くも萎えてるヤツがいた。
亜音である。
「めんどくせぇ…」
悠月も。
「だらしないわねー。ちゃんと授業聞いておけば、補習いかなくて済むのに」
「それはユズだけでしょー?あたしはまだ行ってない」
「巻き込んでやろうか」
俺が転校して来る前の舞奈を思うと、良くも悪くも感心してしまう。
「舞奈…大変だったろ」
「まったくよ。2人とも遊んでばっかだし、ユズに関しては授業中寝るし」
「夜の巡回あるからしょうがねーだろ?」
「それはそれ、これはこれ。とにかく、今回こそ赤点回避目指すわよ」
「うへぇ…」
悠月と亜音はテーブルに突っ伏した。
ちなみに俺達は、学校近くの図書館に来ていた。
「ところで、シュウは成績どうなの?」
「別に悪くねーよ。一応、大学目指してるし」
「この余裕…腹立つ〜」
「勉強してねーお前らが悪い」
俺は前の学校の成績表をちらつかせた。
「刮目せよ」
「なっ!?」
悠月は俺の成績表を奪い、目をひん剥いた。
「悪ぃ…先に旅立つわ…」
悠月は無事昇天した。
「えっ、そんなに成績良かったの?」
「私もちょっと興味あるかも」
「ホラよ」
そして、亜音と舞奈も昇天した。
「嘘でしょ…」
「負けた…」
「大げさだろお前ら。いいから戻ってこい」
俺は呆れて頭を抱えた。
「何をどうしたら、そこまでできるわけ?」
「できるまでひたすら繰り返す。それだけ」
「いや分かんねぇ」
悠月はポカンとした。
「とりあえず、試験当日の時間割順におさらいするぞ。最初は…理科か。チョロいな」
「元素記号とか単体・化合物、混合物あたりね」
「2人とも何の会話してんの?」
この馬鹿共は…。
軽い頭痛を覚えながらも、俺達はテスト対策を始めた。
「はい、違う。ここの化学式は2Cu+O2→2CuOだ」
「なんでよ。ちゃんと『2』も書いたじゃん」
早速化学式の問題でつまづく亜音。
「基本的に金属元素に累乗は無ぇ。元素2つ分って意味で頭に2がつく」
「それじゃ、酸素だって同じじゃねーか」
「馬鹿野郎。化学式を分かりやすくする為に、非金属元素は累乗がつくんだ、多分」
悠月も屁理屈をこねて、なかなか覚えようとしなかった。
「じゃあH2+O2→H2Oはどうなのよ?」
「その場合は2H2+O2→2H2Oだ」
「非金属元素には累乗とか何とか、つくんじゃねーのかよ」
「例外もあるの。H2って水素や、H2Oという水の化学式が2つ分、ってこと」
「…だぁーーーーー!分かんねぇ!!」
「声がデケェ」
教科書で悠月の頭をはたいた。
「さっぱり分かんないよ、シュウの説明」
「あ?逆にこの程度も分かんねーのかよ」
「いや、私が聞いても分かんないわよ。ざっくりし過ぎなのよ」
「えぇ…」
それを聞いた俺は、早くも心が折れそうだった。
「えーっと…硫黄と鉄の混合実験か。2人とも、授業でやったよね?」
「何だっけ…硫黄って」
「ほら、あの…あ、そうそう。臭いヤツ」
「噴水実験みたいなやつだっけか?」
「それアンモニアだろーが。卵が腐ったような臭いしたやつだよ。黄色い粉末と鉄粉混ぜただろ」
もはや物質そのものを忘れてやがる。ホントに大丈夫か、コイツら…。
俺は2人のテストが不安でならなかった。
こうしてテスト勉強は、1週間続いた。
土日は昼食を挟み、図書館に篭りきりだった。
文系や社会科は得意分野な為、まだ教える事ができた。
しかし、理数科に関しては俺の説明がまったく通じず、舞奈に頼りきりだった。
「もう頭が回らない…」
テスト2日前に迫った日の放課後。
亜音と悠月は魂が抜けかかっていた。
「コレもう詰んだわ…。今回も補習受けてやろうかな…」
悠月はいつもの明るさが消え失せていた。
「バカ言ってんじゃねーよ。今日明日で追い込み掛けて、意地でも回避すんぞ」
「お前さ…舞奈に比べてスパルタ過ぎねーか?舞奈はもうちょい優しく教えてくれたぞ?」
「舞奈は舞奈、俺は俺だ」
「『よそはよそ、うちはうち』みたいに言わないで」
「お前らなぁ…」
さすがの俺も、今回ばかりはイラスト稼業を休まざるを得なかった。
舞奈をはじめとする、多くのファンは落胆しつつも、『テスト勉強頑張ってください』と応援してくれた。まあ俺っていうか、亜音と悠月の個人教授なんだけどな。
「仕方ねぇ…最終手段だ」
俺はカバンから、単語カードの束を取り出した。
「お前ら2人の為に、各教科ごとに作っといた。それをひたすら叩き込め」
「シュウ…コレ、俺らの為に?」
「ああ、帰ってからコツコツ書き込んでおいた。それをとりあえず全部覚えりゃ、多分赤点は回避できるハズだ」
「シュウ…ありがとおおおおお!!」
亜音は感激のあまり抱きつこうとしてきた。
しかし、今回はヒラリと躱した。
「落ち着け。それは自己ベスト取るまではお預けだ」
「シュウの意地悪…」
「可愛い顔してもダメだ。すまねーが、ここは耐えてくれ。頑張って結果出したら、いくらでもすればいいから」
「ふぁーい…」
一瞬、目に涙を浮かべながら甘える亜音にドキッとしたが、意地で押し殺した。
そして、テストは終わった。
単語帳が功を成したのか、亜音は五教科の平均点が50点台に到達し、悠月は辛うじて全科目赤点を回避できた。
「えへへー」
「よしよし、よくやった。頑張ったな」
ご褒美に亜音を抱き締め、頭を撫でてあげた。
ほんっとに可愛いやつ。
ちなみに俺が学年5位だったことは、誰にも明かさなかった。
舞奈は学年12位だった。
続く




