第12話『悠月の意地』
亜音が修一と付き合う事になったのを聞き、驚愕する舞奈。
そこへ悠月がやって来て、亡き両親への献花に礼を言う。
舞奈は立ち上がり、『話があるんだけど…』と誘う。
覚悟を決めた舞奈。その結末とは─?
どうなる第12話!
「はあっ!?付き合うことになった!?」
翌日の昼休み。
舞奈は、昨日の出来事を聞いて、急に叫んだ。
「あはは。まあ、そーゆー事」
亜音は恥ずかしそうに頬を掻いた。
「だって、シュウったら2人の時『可愛い』って言うし、頭撫でてきたりするんだもん。好きになっちゃうじゃん、そんな事されたら」
「ホントにそう思っただけだ」
「もおっ」
「いてっ」
亜音は俺の背中をバシッと叩いた。
「何つーか、成り行きで付き合う形になったけど、正直実感が湧かねぇ。とりあえず、どうしたらいいんだ?」
「決まってるでしょ。アンタ、自分で言ったじゃない。『女はワガママでナンボだ。それに振り回されんのは、男の役目』って。とりあえず、亜音のワガママに付き合ってあげなさい」
「えぇ…」
突然、亜音が俺の腕にしがみついた。
「えいっ」
「うわっ!何だよ急に」
「だって〜、こうしたかったんだも〜ん。はぁ〜、至福」
「なんか…大胆になったわね、亜音」
「もう隠さなくていいんだも〜ん」
「…つーか、カップルってこんなスキンシップ激しいのか?」
俺はやれやれ、とため息をついた。
すると、舞奈が亜音に何やら囁いたかと思うと、亜音は俺の腕から離れた。
「どうした?もういいのか─」
「ほっ」
亜音は正面から、腕と脚を使ってしがみついてきた。
「どわっ!!」
危うく仰向けに倒れる直前に、片足で踏ん張った。
「うし、『だいしゅきホールド』成功」
「いや、なにお前がガッツポーズしてんだよ!てかコレ、亜音に吹き込みやがったな!」
「へへー」
舞奈はペロッと舌を出した。
「何イチャついてんだオメーら」
悠月が現れた。
亜音は俺の体からピョンと離れた。
「よぉ。昨日の事は、舞奈から聞いたぞ」
「…そっか。あのコスモスの花束、お前らか?」
「ああ」
「ありがとな。お袋が好きな花だったんだ」
悠月は微かに笑った。
「あっ、ねえユズ」
「なんだ?」
「話があるんだけど…」
「どうしたよ。2人の前じゃダメなのか?」
「…うん」
突如、俺はピンと来た。
亜音も察したようだ。
「さ、行くか亜音」
「そだね」
「おい、待てよオメーら」
「察せバカ。俺達がいねー方がいい話なんだよ」
俺と亜音は同時に駆け出した。
頑張れ、舞奈。
ホームルームが終わった。
「ねぇ、シュウ」
「どうした?」
亜音が俺の席にやって来た。
「あの2人、うまくいったかな」
「どうかな。あとはユズの気持ち次第だけど、アイツ変に意地張るからな」
そうだ。
最大の難点は、悠月が『日高組の若頭』という肩書きを気にしている事だった。
「舞奈には言ったけど、まだユズには言ってないんだよね」
「いや、一応先月『意地張るな』とは言ったんだけどな。ただ、煮え切らない態度のままで終わっちまった」
「うわ…可能性低そう。でも、2人が付き合えたらなぁ…」
亜音は俺の机の上で腕を組み、顎をのせた。
舞奈が悠月を来たのは30分後だった。
何やら不機嫌そうな顔だった。
悠月は頬を真っ赤に腫らし、ほうほうの体だった。
「お待たせ」
「「いや何があった!!」」
俺と亜音は同時にシャウトした。
「生徒指導室で延々と説教食らってたのよ。午後の授業も出ずにね」
舞奈が吐き捨てるように言った。
「私、勇気を出して告ったの。だけどコイツ、立場を言い訳にごねるから、つい武力行使しちゃった」
「『本当の事言うまでやめない』つって、何か言う度めっちゃビンタ食らったよ。しまいにゃ関節技まで掛けられて、それで先生からストップかかっちまった」
「ユズがさっさと言わないからよ」
「だからって卍固めまでするか?フツー」
「いや、ホント何やってんだオメーら…」
まさかそこまでの展開になるとは思わなかった。
さすがは武闘派ヲタク。
「でもまぁ、さすがにオレも折れちまったよ。舞奈がこの10年抱え続けてきた想いを前によ。やっぱ肩書きってのは、時に邪魔くせぇモンだわ」
「じゃあ…」
「ああ」
悠月はフッと笑みをこぼした。
「オレも舞奈と付き合う事にしたよ。一人の男としてな」
「やったーーーーー!!おめでとーーーーー!!」
亜音は2人に飛びつき、肩を組んだ。
「2人とも、良かったな」
「うん、ありがとう!シュウのお陰よ!」
ホントに良かった…。
俺は胸を撫で下ろした。
「誘拐事件に遭って以降、若頭って立場をずっと意識してたんだ。『泣き言ほざいてらんねぇ』とか、『若頭としてオレがしっかりしなきゃ』って思ってるうちに、舞奈への思いをズルズル引きずってたんだろうな」
「待たせすぎよ、ったく…」
「ホントに…おめでとう…」
「泣くなよ亜音」
「ほら、コレで拭いて」
亜音は、舞奈が差し出したハンカチに顔を埋めた。
「まあ、これでお互いカップル成立ってワケだ。とりあえず舞奈、溜まりに溜まったワガママ、いっぱい聞いてもらえ」
「アンタもせいぜい、亜音の尻に敷かれてなさい」
「上等だよ」
俺達は笑った。
ようやくわだかまりが解けた気がした。
「ん」
帰り道、亜音が手を差し出してきた。
「何だよ」
「手、繋いで」
「ああ」
亜音の手を握った。
俺より少し小さく、細い指だった。
「どお?」
「…可愛い」
俺は顔が赤くなるのを感じた。
亜音はからかうように、俺の顔を覗き込んだ。
「なあに?照れてんの?」
「照れてねーよ」
「耳まで真っ赤よ?」
「見るな」
「見ーせーて」
亜音は手を握ったまま、片手で俺の顔を自分に向けた。
バチッと目が合った。その瞬間、俺はドキッとした。
「コラ、目を逸らさない」
「…もうやめろよ」
「まったくもぉ…」
亜音はまた俺の胸ぐらを掴み、思いきり唇にキスした。
「なっ、おまっ、急にすんなよ!」
「ちゃんとこっちを見て。でないと、何度でもするわよ」
「恥ずかしいだろ─」
「あー、また目を逸らせた」
亜音はまたキスした。
今度はさっきより長く、熱烈だった。
「ぷはっ!いい加減にしろよ!」
「じゃあシュウからしてみせてよ、ほら」
亜音は挑発するように、唇を指でトントン叩く。
「お前…」
ヤケクソになった俺は、亜音の顎を上げて吸いつくようにキスした。
「んっ、んんん、んーーーーー!!?」
20秒ほどしたろうか、離れた俺達は、ハーハーと激しい息をした。
「こ…これで、おあいこだろ」
俺は腕で唇を隠しながら言った。
「ズリィんだよ…」
「シュウだって…今のは大胆すぎ」
俺達の顔は、夕焼けより真っ赤だった。
続く




