第10話『悪魔の囁き』
有紗とコミケで面識があった舞奈は、再会を喜ぶ。
悠月や亜音にも会いたがっている有紗の為に、舞奈は電話で無理矢理2人を呼び出した。
ようやく悠月と対面する有紗。そして悠月に対し、衝撃の一言を有紗は放つのだった…。
どうなる第10話!
有紗と舞奈は目を見張り、同時に口を手で覆った。
「うそっ!久しぶり!!」
「アリシアさんこそ、こんな所で出会えるなんて、光栄です!!」
黄色い声を上げて、2人は抱き合った。
「えっ?何お前ら、知り合いだったの?」
俺はさっぱり分からなかった。
「冬コミでツーショット撮ってもらった事あるのよ!シュウのブース行った後!え、まさかシュウって、アリシアさんの弟なの?」
そういえば、俺はまだ有紗の事を舞奈と悠月に話してなかった。
「ああ。アリシアこと有紗は俺の姉だ。髪が物語ってるだろ」
「そういえば…ツーショットの時、どこかで見覚えある気がしてたんだ!そうだったんだ!」
「修一のブースで、あたしも売り子してたからね。まさか、こんなところで会うなんて思わなかった。よくここ来るの?」
「いえ、今回はシュウをここに連れて来たくて…」
「そっかー。ようやく会えて良かった〜」
俺はふと、昨年末有紗が話していた事を思い出した。
『冬コミでアンタと同い年の子とツーショット撮った』と聞いたが、それがまさか舞奈だったとは。
「ねえ、亜音ちゃんは?」
「亜音は悠月と別行動中。あいつらはここに用がねーから」
「なーんだ、悠月くんに会いたかったな〜」
「まあ…あの2人非ヲタですし」
有紗は明らかにガッカリしたようだった。
「あの、良かったらこれから会いに来ませんか?私達、もうすぐ用事済みますし」
「ホントッ!?」
有紗は目を輝かせた。
俺は舞奈に耳打ちした。
「おい、正気か?コイツ重度のショタコンだぞ?第一、俺まだ何も買ってねーんだぞ?」
「本ならどこでも買えるでしょ?フィギュアが欲しいなら今よ。それに、せっかく会えたアリシアさんだし、喜ばせたいの」
普段の俺なら、『知るか』の一言でスルーしたかもしれない。
だが、俺や有紗のファンである舞奈の手前、そういう訳にもいかなかった。
俺は適当にフィギュアの箱を取り、レジへ向かうことにした。
「分かったよ…ちょっと会計済ませてくる」
「いや、数多くない?」
買ったフィギュアは、とりあえず有紗の車に預けた。
舞奈はやや脅し気味に、悠月を電話で誘い込んでいた。
「とにかく急ぎの用事なの。いい?絶っ対そこで待ってなさいよ。でないと菅さんと一緒にお仕置きだからね」
待つこと数分。
慌ただしく駆けてきた亜音と悠月が、ようやく姿を見せた。
「何だよ舞奈、あの脅迫電話は。つーか、隣の人は?」
有紗が言うより先に、俺が答える事にした。
「姉の有紗だ」
「ああ、シュウのお姉さん?初めまして、日高悠月です」
悠月は握手しようと、手を差し出した。
ところが、有紗は固まっていた。
「おい、どうしたショタコン」
「あれ?何かテレビで見た事あるような…え、いま『日高』って言った?まさか…」
「ああ、そうッスよ。『日高組』の若頭です」
「ええええええええええええ!!?」
有紗は急に後退りした。
「うそ…修一って、舞奈ちゃんって、日高組の若頭さんと仲良かったの?」
「ユズとは幼なじみでして」
「マジ!?」
有紗は目を丸くして驚いた。
「まあ、その…あんま『若頭』って目で見ないで欲しいんスよ。俺はあくまでシュウの友達として一緒にいるんで」
「そっか。じゃあ悠月くん、改めてよろしくね?」
有紗は悠月の手を握った。
そして、衝撃の一言を投下させた。
「ところで悠月くん、コスプレに興味ある?」
「こ、こすぷれ…?」
「「「ちょっと待ったー!!!」」」
俺達3人は有紗を止めた。
「なに勧誘してんだよ!」
「有紗さん、それはやめて!」
「ユズをこっちの世界に引き込まないでくださいっ!」
「えー、いいじゃん別に。悠月くんなら似合うコス、いっぱいあるのに」
有紗は膨れっ面でブーブー言った。
「一見細そうに見えて、結構ガッシリしてるのね。腹筋とか胸筋、それから背筋も中学生とは思えないほど鍛え上げてるし…ふむふむ…」
悠月の体を隅々まで眺め回しながら、有紗は呟いた。
「剣術とか格闘技やってるの?」
「よく分かったッスね」
「握手した時、竹刀ダコや拳ダコがあるの分かったから」
「まぁ…ウチの流派でちょいとばかし鍛錬を積んでまして」
悠月以上に、俺は有紗の洞察力に驚いた。
「そこまで分かんのかよ…」
「ま、これは職業柄ね」
有紗は得意げに笑った。
そーいやスポーツジムに勤めてたな、この姉貴。
「さーて、とりあえずフィギュアは家に寄って置いとくね?ごめんね、お邪魔して」
チャオー!と有紗は、手をブンブン振って去っていった。
ややあって、悠月が口を開いた。
「お前の姉ちゃん…美人だけどやべーな。観察力の高さはすげーけど」
「てゆーかさ、舞奈。気づいた?」
「うん、私も…」
亜音と舞奈は急に下を向いた。
「どうした?」
「有紗さん…大きいね」
「たしかに背ェ高いな」
「そうじゃないわよユズ…もういいや」
察した。
察してしまった。
たしかに有紗、昔からでけーんだよな。
胸が。
続く




