坂道怪奇倶楽部の入会試験
短いです。
ん…ああ、こんにちは。
よくきたね。うん、ここであってるよ。君だよね、入会希望の手紙送ってきたの。
ささ、そこ座って。珈琲でいい?
砂糖とミルクは?
わかった。ちょっと待っててね。すぐ持ってくるから。
はい、どうぞ。それじゃぁ、早速入会試験をはじめようかな。
大丈夫、リラックスして。ふふ。どうせ受からないから。
え? なんでそんなこと言うのかって?
だって、君とワタシじゃぁ住む世界が違うもの。デキが違うから、今のままだと無理かな。それに、こんな倶楽部入らない方がいいよ。ロクなことしてないし。
ああ、怒ってる? ごめん、そんなつもりはなかったんだけど。早くはじめてほしい? そうだね。じゃぁはじめようかな。
それじゃぁ問題だよ。なんで君は今のままだと、この倶楽部に入れないのでしょうか。
これが解けたら、入れてあげる。期限は明日までだよ。今日は帰りな。
またね。
やぁ! 昨日ぶりだね。解けたかな。
ええ、何? 何か飲み物を下さい?
はっ。
そっか。うん、いいね。正解だよ。
でも、いいの?もう帰れないよ。
はぁ、言ったからね。さぁ、どうぞ。ん、飲んだね。
ようこそ。坂道怪奇倶楽部へ。ワタシはこの倶楽部の「会長」だよ。改めてよろしく。
しばらくはここに住むといい。倶楽部とは言ってるけど一応会社だから給料も出る。暮らしには困らないだろう。
ああ、そうだ。もう一つ言っておこう、
ようこそ、幽世へ。
【あなた】
「住む世界が違う」「デキが違う」という言葉からここが自分にとって異界であると気がついた。だが現世に居場所がなく、帰りたいとも思わなかったためこの幽世に留まることを選んだ。入会希望の手紙を送ったのは日常に退屈していたから。
【坂道怪奇倶楽部】
何をしているかよく知られていない倶楽部。幽世と現世の両方で活動していて、二つの世界の均衡を保っている。たまに退屈している現世の人間の前に広告が現れ魅了するが、大体の人は入会試験に受からない。
【珈琲】
幽世の飲み物のため、現世の人間には不味そうに見える。実は、味は普通の珈琲と変わらない。
【会長】
幽世に住む、人間ではないなにか。あなたを歓迎する。
【黄泉竈食ひ】
あなたが選んだ道。もう引き返せず、帰れない。