両想い?とは
恋というものは大変である。ガツガツいくとそれはそれでダメになり、
控えめにいくと好機を逃してしまう。
作者も今現在進行形で、大変である。
暁月 オルコットは今日も朝から優雅に食事をする。この町で一番綺麗で大きいだろう屋敷の食卓は、やはり、町で一番綺麗で豪華で清楚なものである。日本であるというのに、まるで西洋に貴族を彷彿させる。しかし、今ここで食事をとっているのはオルコットただ1人。
「オルコット、おはよう」
その静かな食卓に優しさを纏った紳士が現れる。その声にオルコットの能面のような顔が明るく花が咲く。
「おはようございます、お父様。」
彼は暁月 リチャード、お察しの通り、彼女の父親である。彼は使用人から朝刊を受け取り、オルコットの向かいに座る。コーヒーがテーブルに運ばれ、湯気が天井に昇り、届く前に消えていく。
「オルコット、どうだい?学校生活は?」
「はい、とても楽しく過ごしております。」
「そうか。」
(そうです、お父様。私は今、とても素晴らしい恋をしているのです。もう彼のことならなんでもわかりますわ!)
日暮 恭平は今日も朝からプロテインバーを口いっぱいに頬張る。バスケ部の彼にとって、これでは足りないが、朝練の後はこれがちょうどいいのである。制服に着替えて、更衣室から出る。大抵の学生が学校に登校する時間になっており、ゾロゾロと校門から向かってくる光景は疲れているサラリーマンのように見えなくもない。彼はその中から光り輝く宝石を見つけ出すのが日課となりつつある。暁月 オルコット。彼は彼女に恋をしている。今、皆さんの頭の中でははてなが浮かんでいるであろう。なんせ彼は「ダメな人間が好き」なのだから。そう、彼はダメな人間が大好きだ。日暮 恭平という人間がいないと生きていけないと思ってくれる人がいいのである。生活面でも、学力面でもない。精神面でダメな人間になってもらいたいのだ。そう、彼は育てたいのだ、ダメな彼女というものを。そして、彼も彼とて。
(あぁ、今日も暁月さん、かっっっわいいなぁぁぁ。)
面喰いである。
(あの光り輝く栗色の髪、見る角度によって変わる灰色の瞳!可愛すぎる。美しすぎる。彼女が俺なしで生きていけないとか言ってくれたら、俺、もう…あぁ!)
少し人格破綻者と言いざる負えない。
そんな彼は知る由もない。彼女が他愛のない恋バナを立ち聞きし、そして、彼の思っているものとはまた違うものを想像して、変わろうとしていることに。
2人は果たして想いを伝えられるのだろうか。