立ち聞きからの
恋というものはなんとも歯痒く熱いものだ。
あぁ、この想い伝えたい。
ここに暁月 オルコットという女子高校生がいる。彼女は裕福な家庭に生まれながらも、何人たりとも態度を変えず、平等に扱う公平人間であり、その態度というのも、自身にも相手にも厳しいものである。そんな彼女は、現在絶賛片想い中らしい。
(あぁ、今日も日暮君はかっこいい。どうしてあんなにかっこいいのかしら。どこをどう撮ってもかっこいい。)
と、現在影から盗撮中である。片思いの相手は同じクラスの日暮 恭平という男児である。どこをどう撮っても完璧な顔面。少女漫画に出てくる完璧王子そのもの。要するに、このお嬢様、面喰いなのである。しかし、中途半端なイケメンには今まで見向きもしなかった。こんなに彼女のツボどストライクの顔面は、彼女の人生史上初なのであって、彼女は自身が面喰いである自覚は全くないが、作者は知っているので、皆さんにお教えしているわけで。もう一度言うと、彼女は面喰いなのである。これこそ彼女が彼を想う唯一の確固とした理由である。しかし、彼女には今、ある悩みがある。
(この前たまたま聞いた日暮君のあの女の子のタイプ本当かしら。)
まぁ悩みというものはやはり、恋絡みなのだが。彼女は以前ある話をたまたま立ち聞きしてしまったのである。
「日暮、お前好きなタイプとかないの?」
それは他愛無い男子同士のしょうもない恋バナであるが、そこに日暮という男がいることで、彼女の中での重要度は宇宙に昇る勢いで増したのである。たまたま通りかかりスルーしかけ、その場にある影に身を潜めて、耳をエルフのように立てた。
「好きなタイプ?うーん、そうだなー。…ダメな人間…かな。」
(っだ、ダメな人間…ですって!?)
「ダメな人間?なんで?女の子は完璧位でもかっわいいだろ。女の子は顔だろ。」
(モブAは黙ってなさい。あなたのタイプなど微塵子も興味ありませんわ。)
「だって、自分より優秀だと肩身狭いでしょ。守ってあげたくなる脆さとかダメ加減が好きかな。」
そこで、彼女は絶望した。
(私とは、全く逆のタイプ!!!)
そして、今日に至るわけであるが、彼女はダメ人間というものをまるでわかっていない完璧な人間である。
これより始まるのは、お嬢様な彼女が好きな人のために精一杯ダメ人間になるための物語。果たして、彼女の恋は成就するのだろうか。
日暮 恭平は現在絶賛片思い中である。