6 ハーフリンク2
ゲームシステムの説明
壁一面に表示される世界地図。
左上からイタリア国旗、政治力、安定度、戦争協力度、人的資源、工場、燃料、輸送船数、指揮力、陸・海・空経験値と続いて表示されているのはゲームの通り。
右上には国際緊張度の表示、現在は0%。
しかし、その周囲を取り囲むように置かれていた時間調節バーが無い。
ゲームでは1速から5速まで変更可能であったが、より現実的なこの世界では実時間に沿って展開していく必要があるらしい。
1周目で体験した通りこの世界では実際に人々が生活をしている。数時間、下手したら数分置きに昼夜が繰り返す世界で、まともな生活などできるはずもない。時間の調節は出来なくて当然といえる。
右下に、デフォルト・海軍戦略・空軍戦略・スパイマップの切り替えアイコン
その隣に、供給・地形・レジスタンス・迎合・資源・インフラ・陣営マップのアイコン
その下に、師団・同盟国の戦闘計画・昼夜の表示・戦場の霧・レーダー範囲の表示のオンオフと続く。
壁に表示された地図の操作はスマホから行えた。
サトルは西はアメリカ大陸を越えハワイまで、東は日本まで表示されている状態からイタリア半島が一面になるまでズームする。
イタリア軍の部隊が西はピエモンテでフランス軍と、東はイストリアでユーゴスラビア軍と対峙している。
現在エチオピアに派遣されている部隊と少数の北アフリカ部隊、これがイタリア陸軍の総戦力だ。
海軍、空軍も各地に点在している。
時間の速度変更以外、ゲームと違う個所は見られない。
然し、地図には大切なものが無かった。
今まで確認したのが戦争パートで必須の機能だとしたら、内政パートとも呼べる
政治・国家方針・ディシジョン・情報機関・研究・外交・貿易・建築・生産・徴兵と配備・兵站のアイコンが無いのだ。
まさか、ゲームと違い1日24時間という時間があるのだから、実際に国家運営をせよというような無茶振りはないよな?
ムッソリーニの知識を多少は受け継いでいるとはいえ、サトルは零細企業の営業職。国家運営など全く分からない。今から勉強したとして、終戦までに「いろはのい」さえ理解できるかどうか。
チュートリアル国家と言われるイタリア、ディシジョンは無くても良い、情報機関も問題ない。
外交、貿易、徴兵と配備、兵站は努力すれば何とかなるかもしれない。仮にも国家だし、それなりに官僚はいるよね?
しかし、それ以外は無理だ。
ゲームはあくまでもゲーム。効率的に富国強兵できるように作られている。
例えば、研究では現代戦車やジェット機までの開発ルートが簡略されている。現実世界で、1936年の段階でこの様に研究を進めたらに1945年には現代戦車が作れますよ等ということがあり得ないように、システムのサポート無しに兵器の開発など出来ないのだ。
それは国家方針など他の機能も同じ。
「研究だけは・・・」
「研究ですか?」
またしてもココロの呟きにマニュアルが反応する。白紙のページに文字が浮かびだす。
「主さま、また文字が現れました!」
ココロにエルフ文字を解読してもらいなら、色々と試す事小一時間。
その間に、長机の上で行われていたお菓子の奪い合いは凡その決着を見ていた。
机の上に片足を乗せ最後に残った一枚のクッキーを高々と掲げるちびっこ。
その胸には「めっせ」と名札が付いていた。
ドヤ顔の口元はクリームでべっとり汚れている。
此処まででマニュアルを解読できた事。
地図はスマホを使いサトル一人で操作可能。部隊への指示もスマホから行える。
それ以外の内政全般についてはマニュアル本が必要だった。
各種データの確認から操作、変更までココロが本に魔力使い操作する。
データ自体は日本語表示も可能で、ココロに表示してもらいサトルも見る事ができた。
全てエルフ文字だったら、お手上げ状態である。
「よし、手始めにエチオピア戦争をさっさと終わらせるか」
もう銃殺されるのもココロを痛い目に合わせるのも沢山だ。
まあ、この世界ならココロが頬を腫らすような事にはならないと思うが。
なんたって相手はちびっこだし。
「ロドルフォ・グラツィアーニ元帥」
サトルが名前を呼ぶと、メッセ将軍の前で力尽き、机に突っ伏していた子供が元気に駆け寄ってくる。
最後まで、メッセと残り一枚のクッキーを掛け死闘を繰り返していた子だった。
グラツィアーニ元帥はサトルの前までくると右手を上げ、大きな声で返事をする。
「はい!」
その胸には「ぐらつぃ」の名札がピンで留めてある。
「よくできました」
ココロがよしよしと頭をなでる。
大丈夫か?イタリア。
勝ち負け以前に戦争できるのか?
「元帥に・・・」
サトルが語り掛けると、グラツィは目をキラキラと輝かせてサトルを見上げてくる。
「・・・グラツィ君にエチオピア戦争の全体指揮を任せます。エルトリア側指揮はプラスカ君、ソマリランド側指揮はメッセ君です。」
名前を呼ばれて、セバスティアーノ・ヴィスコンティ・プラスカ将軍、ジョヴァンニ・メッセ将軍もこちらに駆け寄ってきた。
「今回は俺も現地で観戦します、がんばろー!」
「「「おー!」」」
ナビも内臓ドバーのスプラッタは無いって言っていたから凄惨な現場を見ることは無いと思うが、これはこれで実際に戦争が出来るのか心配になってくる。指揮をするだけならローマにいながらスマホで済ますことができるが、一度現場を見ておく必要をサトルは感じていた。
「一緒に来てくれる?」
「はい、主様の行かれるところ、何処までもお供します」
エチオピアまでは片道20日、戦場へ連れていくのは如何かとも思うが、ココロが居なければ内政が行えない。サトルはココロと共にエチオピアへ行く決心を固めた。
方針が決まったところで、地図を使い部隊を動かす。
現在フランスとユーゴスラビア国境に展開している全軍にエルトリア・ソマリランドへの移動を指示する。
フランスとユーゴスラビアが攻めてこないのかって?
安心してくれたまえ。ここは限りなく現実に近いゲームの世界。一定の条件が揃わないと戦争は起こせない仕様となっている。
イタリア本土を空にしても全く問題無し。
次に近接戦闘機、爆撃機をアフリカヘ移動。
戦闘機と海軍各艦艇に訓練を指示する。
陸、海、空の各軍は戦闘や訓練を行う事で経験値を稼ぎ強くなっていく。
燃料の許す限り訓練をして強くなってもらうのだ。
内政ではまずエルトリアとソマリランドを傀儡国として開放する。
これにより国家方針「エチオピア戦争における兵站」をスキップして次に進める事ができる。
戦争に勝利するために新兵器をどんどん開発していく必要がある。国家方針「追加の研究枠」を取るためにこれで70日の短縮ができるわけだ。
現在の研究枠は4、
電子機械工学:必要研究日数を@%で短縮(電子工学ツリーの基礎)
基本型工作機械:生産効率上限UP(産業ツリーの基礎)
建築1:建築速度UP、工場修理速度UP(工業ツリーの基礎)
上気の3つは序盤の必須ともいえるもの、あと1つは陸軍ドクトリンも良いが無難に
支援火器1:歩兵の攻撃、防御をUP、1918年の技術
序盤は戦車も火砲も殆ど無く、歩兵に頼ることになる。歩兵の戦力底上げは十分に効果を発揮する。
建設は暫く民需工場を建てまくる。
現在の工場数は50、内訳は民需工場が20軍需工場が19造船所が11。
7大国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ソ連、日本、イタリア)の中で最弱。
しかし、他の中堅国に比べればマシというレベルでもある。
消費財とうい名の、民間の生活必需品を作る工場分を抜かし民需工場が15以上余裕が出来るようにしたい。このゲームの中では民需工場など全ての建築物やインフラの整備に民需工場が使われる。一つの仕事に最大15の工場を充てることができるからだ。短時間で富国強兵を推し進めるために、序盤の民需工場は必須なのだ。
因みにこの時点でアメリカの民需工場は200を超えイタリアの十倍を誇る。眠れる巨人此処にあり。
もう一つの民需工場の使い方。他国に民需工場の権利を委譲し貿易を行う。
この際、陸続きでは不要であるが、海外の国との貿易は輸送船を使用する。
現時点での産油国はアメリカ・ソ連・ルーマニア等。民需工場1に対し原油8が貿易可能となる。
サトルはなけなしの民需工場を使い少しづつ原油の輸入を行う。
燃料が無くなると、飛行機は飛ばず、戦艦、戦車は鉄くずとなる。
石油が戦争の勝敗を握っているのだ。
最後に生産の調整をし徴兵を行った。
初期状態では無駄な戦艦や巡洋艦などを作っていたりする、それらを削り潜水艦や駆逐艦に力を集中したり、歩兵装備や支援装備の生産に空いている軍需工場を割り当てる。
そして新兵の募集。工場で歩兵装備が作られ次第、新兵に装備が割り当てられて生き、システムの裏で鬼教官が鍛えている筈だ。戦場に出てくるころには訓練済みの兵士と成っている。
訓練の済んでいない兵士(新兵)は、デバフが掛かりとても弱いのだ。
一般人にいきなり銃を持たせて戦えといっても、弾が的に当たるわけがないし、当然といえば当然なのだが。
これで今できる事は全てやり終えた。
約20日間、途中スエズ運河を通り船でエルトリアへ向かう。
対するはエチオピア帝国。
サトルはココロとちびっこ3人を従え挑むのだった。
サトルの運命は如何に。
見事エチオピアを下すことが出来るのか。