第9話 この世界での俺
決勝戦で勝った俺達は表彰される事もなく、賞賛というより嫉妬を向けられながらが退場した。
賞金は3位が一人金貨10枚、2位が一人金貨20枚、1位が一人金貨30枚だ。
金貨1枚で日本円で10万円程の価値があると思えば妥当かとも思った。
対抗戦が終われば、パーティーは解散になるが、クラスは変わらないようだ。
ミーアが帰り際に話しかけてきた
「マックス・・様! さすがですね!」
「様? 様はいらないよ。それに言葉がおかしくなってるぞ、普通でいいよ」
「マックスさん、これからもよろしくね!
ずっと一緒のパーティーでいようね!」
「いや、パーティーは解散だろ。
俺は誰とも組まない、ソロでいくよ」
「「えー!!!」」
ティカが反応してきた
「俺はここの図書館で勉強したくて入ったんだ、戦闘訓練とかするつもりないからさ」
(それにシーラとシルヴィアの事もあるしな。パーティーだと俺のプライベートな時間がなくなりそうだし)
闘技場を出て、校舎までいくと人がいっきに俺たちの元に集まってきた。
「今度一緒にパーティー組みましょ」
「ミーアちゃん、俺たちと一緒にパーティー組まない?」
「マックス様、結婚して!」
一部違うのも入っていたが、概ねパーティーへのお誘いだった。
ただティカには誰も見向きするどころか、避けられてもいたのが心苦しかった。
これからが今後学生生活を送る上でのパーティー結成なので、対抗戦で上位のメンバーは引く手あまたなのだ。一部を除いて・・・・
「すまない、俺は既に決まっているので」
そう言って足早に去ることにした。
「決まってるので!」
「・・・」
ミーアも真似してついてきた。ティカは無口だ。
俺は図書室に行ってまた本を漁った。
今回は神々についてだ。
戦の神マルス、冥界の神ハデス、月の女神アルテミスなどいろいろ見たが、俺の弓の持ち主?であるアルテミスはこの世界にいたものの、魔王との戦いで敗れ死んだらしい。
現在はその生まれ変わりを待ち望んでいるようだ。
俺が神々の本を読んでいると、ついてきたミーアが横から口をはさんできた。
「神様なら、滅びの神がいいよ!」
「なんだ、その物騒な神は?」
「あたいら獣人の神さ、虐げられているあたいらに変わって、復讐し滅ぼしてくれる神だよ!」
「なるほど、虐げられる者がすがりたくなる神だな」
俺は滅びの神について調べてみた。
滅びの神 ケレリタス
遥か昔、多くの国や軍団を滅ぼして来た神であり、人々への断罪を下す神である。
ケレリタス・・・どこかで聞いたような懐かしい名前だ・・
その刹那、頭の中に高速で天使だった頃の記憶が駆け巡った。
ケレリタスは俺だ・・・
「なぁ、ミーアさん。この神は邪神か、暗黒神扱いなのかな?」
「そうですね、とても恐ろしい邪神とされていますが、私達には救いの神です!」
やっぱり邪神扱いか・・・
天使だけでなく、最初の神に反乱を起こした堕天使達も邪神扱いのようだ。
人間と交わったために堕天使になったオリンポスの神々のような堕天使は、ここでは善神扱いか。
一方先生方は今回の対抗戦の結果で紛糾していた。
「なぜアンダーでスラムの子が優勝するのだ! なにかおかしい!」
ミネルヴァ先生は、そんなディオニッソス先生に呆れつつ答えた。
「事実です。ただスラムの出身といっても、どこかの貴族か王族の妾の子という話もよくありますので、案外そうかもしれませんね。それか勇者の子孫とか?」
「ハッ! そうだ! ミネルヴァ先生、きっとそうに違いない!
可能性のあるのは誰だ? この国のテセウス王か?
それとも昔の勇者アーサーの子孫か?」
「テセウス王は、あっちこっちの女を手にかけてますので可能性はあるかもしれません
勇者アーサーの子孫も今は1000年前の勇者なので、その子孫の可能性はわりとあるとも思えます。
どっちでもいいと思いますよ。
ここはアルテミスの弓を持っていた事も考えて勇者アーサーの子孫ってことにでもしたらどうかしら?」
「そうだ!そうに違いない!
勇者の子孫ならあれだけの力あっても不思議はあるまい!
そのようにしておく。
この国の王への報告もそう付け加えておけ!」
「わかりました」
俺は図書室を出て部屋に戻ると、既に人が2人とベッドが増えていた。
「部屋間違えたかな?」
「合ってるわよ!」
先に部屋で荷物整理していたふたりのうち一人シルヴィアが答えてくれた。
もうひとりはシーラだ。
「マックスさん、約束を果たしにきました。どうぞよろしくお願いします」
5人部屋になっていた。しかも女性が4人と男性1人はさすがに居づらい。
男なら嬉しい状況かもしれないが、よく考えて見て欲しい
静寂を好む俺にとって、なにかとうるさい女性が4人、
しかも、そそる匂いまでしているのだ。
これは正直、安らぎより緊張が高まるくらいだ。
これはどうすべきか・・・
聖書やキリスト神学と神話の神々の関係(異論はありますが、この小説では以下の思想を取り入れてます)
キリスト教でいう神とは、天地万物を創造した神が唯一でありそれ以外神は居ないとされています。
しかし世界各地では様々な神々が存在していました。
それらは悪魔とされましたが、実際は悪魔もいるし堕天使もいるという解釈です。
まず人間が生まれる前に天界でルシファーが神に反逆しました。
理由はこれから神が創造する人間に敬意を抱けという神の言葉に反発したからです。
ルシファーに従った天使達はルシファー共々戦いに敗れ地獄に落ち、その過程で異形で恐ろしい悪魔になったと言われています。
なので元々美しかったルシファーは現在は醜くなっています。
そして、神に反感を持っていますが、人間に対してはもっと憎悪しており、ルシファー達が決して人間の味方になることはありえません。それが嫌で神に反逆したのですから。
そして次に人間が地に満ちてきた頃、再び天使が堕落し堕天使になる事件がおきました。
地上を見守っていた天使達が人間の女を好きになり、人間と交わり子を作ってしまいました。
その子らはネフリムと呼ばれる巨人となり、やがて地上を荒れさせる事になります。
一方人と結ばれた天使達は、人間に様々な知識を与え、魔法まで伝授してしまい
人間は堕落と荒廃の道に進んでいってしまったのです。
やがて地上は目にも当てられぬ状態となり巨人も跋扈してきたため、神は洪水によって一部を残し滅ぼす事になったのです。(ノアの洪水)
この人間と交わった天使の中には後世に神と呼ばれる天使たちがいました。
この堕天使たちはルシファー達よ違い、人間が嫌いではなく好きになった天使でもあったのです。
なので、どんな結果になるとはしらずその堕天使達は人間のためを思い魔法や女性が化粧などで美しくなる術などを教えていったと言われています。
この小説に出てくる。マルスやミネルヴァはこういった堕天使達です。