第4話 学園での生活が始まる
ダンジョンの試験は6人で1パーティとして実力を見られる。
パーティーは、ほぼランダムに選ばれ前衛3人後衛3人が選ばれる。
俺は弓なので後衛の一人となった。
他は戦士が3名、魔法使いが2名で、女性も戦士に一人と魔法使いに2名いた。
そこに教官が一人ついて、ダンジョンの1階層を攻略する様をみていくのだ。
メンバーはほとんど初心者ばかりだった。
俺はこの試験で、弓で仲間をフォローするのに徹した。
後衛に近づく奴には牽制の矢を放ち
前衛が戦っている時には、敵の武器を持つ腕を狙ったりしてサポートをした。
そのおかげで、なんなく攻略ができ、皆大喜びで自分の活躍を自慢げに話していた。
唯一モンスターを殺していないのは俺ぐらいだったが、それはかまわなかった。
合格できればいいので、活躍するより攻略成功して合格できる方を優先したからだ。
ただ、教官がマルスという男だったが、こいつは戦神マルスとしか思えなかった。
この学園はどうなっているのだ?
「で、どうだった彼は?」
「ミネルヴァ、あいつは特待生でいいぜ」
「へぇ? どこが気に入ったの?」
「あいつ、他の低レベルの連中を大怪我させずに攻略を成功させやがった。
しかも、あいつはモンスターを1匹も倒さずにだ
ランクAの冒険者でもああいう芸当は難しいな
正確な弓矢で、一度も狙いを外してないのも評価点だ」
「なら特待生で決まりね」
「ああ、あと特待生候補は誰がいる?」
「この国の王の孫娘の勇者達がいるわ3人ね、あとはブリタニアの騎士の子や
エルフの魔法使いあたりかしら?」
「今年は豊作だな」
ティカは俺を見るとすぐ声をかけてきた
「お兄ちゃん、私もがんばったよ!特待生だって!」
まぁ、強力な武器はあるし武術も身についているからそこら辺の奴よりは強いから当然だよな。
そこに金髪の女の子も加わってきた
「その人がティカのお兄さん?
はじめまして、私もあなたがたと同じハイランド国から来ましたシーラと申します。
以後よしなに
そして、こちらにいる赤毛の子はシルヴィアといいます」
紹介された子はこちらを値踏みするように見て、軽くお辞儀をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
ハイランド国だと?追ってとは違うようだし、それにしてもティカはうかつにもハイランド国から来たと喋ったようだな・・・
さらに、あからさまに貴族風の男がわってはいってきた
「シルヴィア姫様、シーラ姫様ここにいらしたのですか」
「カイン?なにか用かしら?」
「貴族同士仲良くしようと思いまして。
それに一緒にパーティーを組む事になるでしょうし」
「それは初耳ですわね」
シルヴィアはなんとなくこの男が苦手なようだな
「貴族同士組むのは当然でしょう。しかも私は冒険者ランクBでもあるのですよ
平民や実力不足の生徒と組むのはありえないでしょ」
それを聞いてティカが反応し、俺の後ろに隠れた
シルヴィアはそれを悟り
「悪いけど、私のパーティーは既に3名決まってるわ!
その中には平民もいるのだからあなたは私のパーティーには入れないわね!」
「なっ!」
カインは俺を睨み
「貴様!平民の分際で姫様に近づくなど、身の程を知れ!」
「近づいてきたのは向こうの方なんだけど?
それにパーティーに入っているのは俺じゃないよ」
「うるさい!決闘だ! 身の程をわきまえさせてやる!」
「決闘する意味はないのだが?」
「うるさい!俺が勝てば貴様は二度と姫様に近づくな!」
「で、俺が勝ったら?」
「そんな事はありえんが、奇跡的にでも勝ったら好きにするといい」
「そんな権限がおまえにあるのか?話にならないな」
俺はそこを立ち去ろうとした。
「平民のくせにバカにしやがって!」
カインは俺を後ろから殴りかかってきたので、俺は拳が当たる寸前腰をかがめ、やつの腕を両手で取り前に伸ばして、やつの体を俺の背中におぶさるような感じにして
そのまま腰を上げやつを前に投げ飛ばし、地面にやつの背中を叩きつけてやった。
「うっ!」
やつはうめき声を上げ、なにが起きたかわからないような感じで呆然としていた。
俺は、やつの首にダガーを当てて
「俺の勝ちですね。では好きにさせてもらいますよ」
と言って、自分の部屋を探しにいった。
特待生は一人部屋も可能というし、階も別らしい。
早いとこいって、いい部屋を取りに行こうと思った。
特待生の階は、階段のすぐ近くにサロンがあり、その奥には、扉の間隔が広く全部で6つの部屋あった。
各部屋にベッドは4つある。一人で使う時残りは空きになるのだが、なぜ4つあるかというと、パーティーを組んだ場合、特待生でもパーティーで一緒の部屋という事はよくある事らしい。
俺は一番奥の部屋を選んだ。部屋の前に人があまり通らないし、なにより端っこなので音が聞こえても一方からだけなので良いと思ったからだ。
俺は机の上に荷物を置いて部屋を見渡した。
すると、ベッドの上に妹で獣人のティカがいて、荷物を広げていた。
ティカの荷物も少なめなんだな。
さて、荷物の整理をして・・・・って違う!
「ティカ? なぜ俺の部屋に?」
「ん? ちょっと荷物を整理してるから待って」
「あ、はい・・」
いきなり扉をバン!と開けて、シルヴィアが入ってきた
「ティカ!先にいかないでよ。みんなで部屋を決めると言ったでしょ?
って、なんであんたまでいるのよ?」
「いやいや、それは俺のセリフだって!
ここは俺の部屋なんだけど?」
シーラがティカに話しかけた
「ティカさん、私たちはパーティーを組んだのだから一緒の部屋にすると言ったでしょ?」
「へ? あ? 忘れてた」
「とにかく、他の部屋に・・」
「ここいい部屋ね!隅っこだし」
「たしか、この部屋の向かいの部屋もまだ空いていると思うよ。
早くそっちにいったらどう?」
「え?」
ティカが一瞬悲しそうな顔をした。
「はぁ・・俺が向かいの部屋にいくよ
ここは君たちが使っていいから」
「私、お兄ちゃんと一緒がいい」
「ティカ、せっかくのパーティーじゃないか、ここは自立してみんなと一緒に生活をしなさい」
そう言って俺は、向かいの部屋に行った。
「悪いわね。この借りはいつか返してあげるわ」
シルヴィアが最後にそういったが、アテにはしないでおく。
「お兄ちゃんと一緒がいいのに・・・」