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汚隣の後輩ちゃん  作者: ブリル・バーナード
第二章 夏休みと後輩ちゃん
103/106

第103話 家出から帰宅した俺

すいません。

いろいろ忙しくて、こちらの投稿まで余裕がありませんでした。

作者は主に、他サイト様で活動していますし…。

感想をくださった方、ありがとうございました。



 

 三日間の予定だった家出は一日しか持たなかった。次の日にはギブアップ。後輩ちゃんと離れ離れになって寂しすぎた。今にも心が折れそう。


 もう家出を諦めた俺は急いで家に帰る。まあ、帰る前に泊めてもらった裕也から拳骨を落とされたけど。


 家にたどり着いてから、俺は驚きで玄関の前で立ち尽くす。なぜなら、玄関のドアの隙間から、どよ~んとした陰鬱な瘴気が漏れ出していたからだ。


 寂しさが具現化したかのようなどんよりとした気配。俺は心配になって勢いよくドアを開けて家の中に入った。


 リビングに繋がるドアをバーンッと開けて、中にいる人物に声をかけた。



「後輩ちゃん!? 姉さん!?」



 そこにいたのは俺の洋服や下着、シーツや枕に包まれた亡霊。げっそりと痩せ、目は光を失って虚ろ、目の下には濃い隈ができている。二人の身体から寂しいオーラが放たれて、部屋中を覆いつくしている。


 でも、俺のパンツを握りしめてるのは何故だ?


 後輩ちゃんと桜先生が元気なく顔を動かした。



「………お姉ちゃん。先輩の幻覚が見え始めた…」


「………お姉ちゃんにも見えるわ…」


「二人とも! 幻覚じゃないぞ!」



 二人の瞳にわずかな光が宿る。俺が近寄って手に触れると、二人の瞳からポロポロと大粒の涙が零れ落ちていく。



「あぁ……先輩だ…しぇんぱいだ…うわ~ん! しゃびしかったよぉ~」


「弟くぅ~ん! ごめんなしゃ~い! わだじだぢ、弟くんがいないとダメなのぉ~! うわ~ん!」



 二人は俺を押し倒し、大声を上げて泣き始めてしまった。あぁ…この温もり、この香り、この柔らかさ…俺はこれがないと生きていけない。



「二人ともごめんな。流石にやり過ぎた」


「ぐすっ……そうです。やり過ぎです。死ぬかと思いました。ぐすっ」


「ぐすっ……弟くんのばかぁ~!」


「あほ~!」


「「ヘタレ!」」


「君たち、何故ヘタレだけ同時に言うんだ?」


「ヘタレだからです!」


「そーだそーだ!」



 泣き止んだ二人がぐしぐしと俺の服で涙を拭い始める。泣いたからなのか、桜先生はよりポンコツになっている気がする。言動が子供みたいだ。


 あっ! 俺の服で鼻をかむな!



「あれっ? 先輩が帰ってきたということは、もう三日経ったんですか? 私、時間の感覚が曖昧なんですけど」


「いや、三日も我慢できなかったから帰ってきた」


「やーい! 弟くんの寂しがり屋!」



 見た感じ桜先生のほうが寂しがっていたと思うんだが、優しい俺は言葉にはしない。それにあなた大人の教師だよね? 小学校低学年の子供じゃないよね?



「あれ? そういえば姉さん仕事は? まだ、仕事あってる時間だよな?」


「それがね、今朝行ったのはいいけれど、他の先生たちから何故か追い返されたの。お願いだから休んでくれって頭下げられた。なんでかしら?」



 それは目は虚ろで、濃い隈ができ、頬がこけていたせいだと思うぞ。今はだいぶ改善されたけど。


 流石先生方。ナイス判断。さっきの状態の桜先生なら仕事は手に付かないだろう。



「まあ、いいや。さて、今回でわかったことがあります。俺には家出することは出来ません!」


「私もです!」


「お姉ちゃんも!」


「離れて暮らさないといけなくなったらどうしよう?」



 部屋に沈黙が訪れる。少なくとも俺は発狂するかもしない。後輩ちゃんと桜先生もさっきの様子を見る限りそれ以上になりそうだ。俺たち大丈夫か?


 結局、後輩ちゃんが結論を述べた。



「その時になったら考えましょう!」



 どうしようもないときの必殺未来に丸投げ。うん、その時になったら考えよう。今話し合っても結論は出ない。その時になったらどうにかしよう。


 俺の左右に抱きついている後輩ちゃんと桜先生がぎゅうっと抱きしめてくる。そして、同時にグルグルとお腹の音が鳴った。お腹が空いているようだ。



「くっ! 私のお腹よ! もっと可愛らしい音を立ててよ!」


「えっ? 妹ちゃんそっちなの? 音が鳴らないで、とかじゃなくて?」



 今度はクルクルと可愛らしいお腹の音が鳴った。さっきの唸り声のようなグルグルとは違い、本当に可愛らしい音だった。



「おぉ! 妹ちゃんやったね! 今度は可愛かったわ!」


「いえ、今のは私じゃありません。ということは……」


「………俺です。家出してからあんまり食べてなくて…あはは。おなか減ったな」



 そうです。可愛らしいお腹の音を発した張本人は俺です。とても恥ずかしい。


 桜先生は、まぁ!、と目を丸くし、後輩ちゃんはキッと睨みつけてくる。



「チッ! なんで先輩はヒロイン属性なのですから! ”くちゅん”というくしゃみとか、”ずぴ”という鼻をすする音とか、クルクルというお腹の音とか、なんで女の私よりも可愛いんですかぁ! 理不尽です! 世の中理不尽です! うがぁー!」



 後輩ちゃんが俺を押し倒してきた。そのままポコポコと叩かれる。


 そういうことでキレられても俺にはどうしようもないんだけど! あっ! 幼児化した桜先生まで参加してきた。二人がかりで卑怯だぞ! それに胸が当たってるから! 二人とも気づいて!


 ポコポコと叩いていた二人が、突如電池が切れたかのように動かなくなる。ぐてっと脱力したまま身動き一つしない。



「………………お腹が減りました」


「………………弟くん、何か作って。もう市販のお弁当は食べたくないの」


「はいはい。何か作るから待っててください」



 ごろん、と散らかされた洋服に寝転がる二人。俺は料理を作るために立ちあがった。


 うん、最近二人ははしゃぎすぎだと思ったけれど、こうやって賑やかな方がいいな。後輩ちゃんと桜先生らしいというか、家族らしい。そう言えば、実家もこんな感じでいつも賑やかだったな。


 俺は、寂しさが吹き飛んで安心してだらける後輩ちゃんと桜先生に微笑み、料理を作り始めるのだった。








<おまけ>


「さて、後輩ちゃん、姉さん? その隠しているものを渡してもらおう」


「な、なんのことですかー? 私たちはなにも持っていませんよー」


「そ、そうよ。弟くんのパンツなんか持っていないわ!」


「お姉ちゃん!」


「あっ!?」


「自白しましたね? それに、二人のポケットからはみ出してます!」


「「し、しまったー!」」


「それ、洗濯籠に入れていたやつですけど。まだ洗濯してないんですけど!」


「ふっふっふ。それは百も承知です!」


「な、なんだってー! まあ、お姉ちゃんも知ってたけど」


「うわぁ…ここに二人も変態がいる!」


「「どやぁ!」」


「ドヤ顔するところじゃないから! もし逆の立場だったらどうする!? 俺が二人の洗濯していない下着を持ってたら!?」


「どうぞどうぞ。好きに使ってください。私は最初から好きに使っていいと言ってましたよ?」


「脱ぎたている? お姉ちゃん今すぐ脱いでもいいよ?」


「やめろー! 誰かこの常識外れの変態をどうにかしてくれー!」



 この後、いろいろあって残念な後輩とポンコツの教師から俺の下着を奪うことができましたとさ。


 これを一体何に使っていたんだろう? ………怖いから考えないようにしよう。うん、そうしよう。


 世界には解き明かしてはいけない謎もある。


 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。



お読みいただきありがとうございました。


どうしても先が読みたい!

さっさと更新しろや!

と思った読者の皆様。

カクヨム様ではだいぶ先まで先行公開しておりますよ。


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