表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初めての恋の相手が✕✕でした。  作者: たかひ
山隠し編
6/8

05

昔――――そのまた昔……この村がまだ村として成り立つ前の事。戦争で行き場を無くした者達が集い、この場所で暮らしていた。



しかし、山に囲まれ水も出ず田畑に恵まれずに作物が取れなかった。困窮(こんきゅう)していたそんなある時、神と名乗る一人の者が現れ、この土地を水で潤してやろうと言い出した。



(わら)にもすがる思いだった当時の者達は、その者に懇願(こんがん)した。すると、どこからともなく一本の川が流れ始め、大地が潤い作物が実るようになった。



そして神は言った。この地を潤し続ける代わりに、この川を汚さぬように守り続けてほしいと。



その守り人として、水谷家の御先祖に当たる人が任命され、神は流した川に眠りについた。



「こうして今も儂らがあの川を守り続けているわけじゃ」



「なるほど……しかし、それと僕に何の関係があるのですか?」



その問いかけに、老婆は閉じていた目を開き、真っ直ぐに僕を見つめた。



「何故かは知らんが、坊は流神様(りゅうじんさま)に好かれておるようでな」



「りゅうじんさま?」



「川に眠る神様の名じゃ」



「僕が……神様に?」



老婆はこくりと頷く。そして老婆は、とんでもない事を口走った。



「どうじゃ? 家の婿にならぬか?」



「え、えええええ!?」



あまりの事に、思わず奇声をあげてしまった。



「それってつまり、水谷さんの……司さんのお婿さんになれと?」



再び老婆はこくりと頷いた。



「それはいくら何でも早計(そうけい)過ぎでは? ほら、司さんの気持ちもありますし……」



助け舟を出すように水谷さんの方を向くと、変わらず無表情のまま。



「私は構わない……」



「ほら、司さんもこう言って……て、えええええ!?」



水谷さんの言葉にまた奇声をあげてしまう。一体、どうすればいいんだ僕は……。



「今すぐに答えを出せとは言わん。よく考えてみるといい」



「は、はぁ……」



思わずため息に似た声が漏れた。



「とりあえず今晩は泊まっていきなさい。犯人もまだ見つからんようじゃしな」



お言葉に甘えて、今晩は泊まる事にした。今日一日でいろいろな事があり過ぎた……もう寝たい。



部屋を後にし、先程の客間まで戻る最中に、珍しく水谷さんが口を開いた。



「お祖母様がよそ者にあれだけ言うのは珍しい……私の家に泊める事自体異例……」



「薫ちゃんも泊めた事ないの?」



「薫は来た事すらない……」



親友の薫ちゃんですら来た事がないのか。村人達が驚いていたのはそのせいか。



客間に着くと、布団が既に二組敷かれていた。



……え? 二組?



「これは?」



「布団……」



「見ればわかるよ! 何で二組敷かれているのか聞きたいんだけど」



「一緒に寝る……?」



僕に聞かれても……。



「水谷さんは自分の部屋があるだろうし、そこで寝たら?」



「ここ……」



水谷さんは客間を指さした。嘘……質素だから客間だと思ってたのに、ここが水谷さんの部屋だったなんて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ