雨の日、その日。
更新は不定期っす
目覚めたら、知らない場所だった。
空はきれいな水色で、僕が寝ている場所は短い草が生い茂る草原のど真ん中だった。
遠くのほうに塔のようなものがいくつか見える、それ以外は本当に何も無い。
まるで、地平線の向こう側には何も無く。世界はこの目に見える範囲しか存在しないといわれても信じてしまいそうだ。
僕の住んでいた場所は、ビルがたくさん建っている場所だった。
それに比べてここは、空気もおいしいし、なんだか暖かい。
なんだか、夢のような感覚がする。
でも、夢ではないことを僕は知っていた。
紛れも無く僕は、死んだのだから。
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その日はずっと雨が降っていた。
僕は大学2年生で、その日も普通に大学に行っていた。
朝見たテレビのニュースも、一面傘マーク。日本の地図も灰と青で埋め尽くされている。
台風が近づいてきているって話だったけど、正直なところほとんど聞き流していた。
僕には直接関係ないし。
ニュースを見たあとは器にシリアルを入れて、牛乳を適当に入れて朝ごはんだ。
今日もいつものようにギリギリまでベッドでごろごろ、気がついたら時間じゃんやべー。
そんなかんじなのだ、いつも。だから朝食は手軽に済ませられるものになってしまう。
体に悪そうだなとは思っても、なかなかこれがやめられない。
手軽、安さ、おいしさ。3つ揃えば大体の事は無視できてしまう。
傘を忘れないようにもって、ペアの指輪を2つとも身に着ける。
お洒落に興味は無いけれど、これらの指輪はどうしても手元に無いと不安なのだ。
自分の部屋の鍵をきちんと閉めて、傘を開いて外にでる。
パタパタと雨の音を聞き、現在時刻を確認。7時30分、余裕はない。
わざわざ大学から離れたところにあるこの家は、僕が生まれ育った家だ。
この家は、1年前死んでしまった両親の、形見のひとつだ。
経済的にも精神的にも、この家は手放したくなかった。
やはり、雨の日というものはそういう、悲しい記憶を呼び覚ましてしまうものなのだろうか。朝から妙に沈んでしまった気分を振り払うように、僕は駅へと走り出した。
そして、僕の記憶は途切れた。
最後に覚えているのは、紅と白。痛み。悲しみ。誰かの泣き顔。それだけだった。
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うん。わからない。
どれだけ思い出しても、同じところまでしか記憶が無いのだ。
でも、大体把握した。
天国かなんかだろう、此処。
間違いなく死んでる、死んだんだろう。紅い記憶、誰かの泣き顔。
誰かをかばって死んだのか、わからないものはわからない。
でも、意識があるなら、なかなか体験できないこの状況を楽しもう。
いつまでもセンチメンタルな気分になっていても始まらないのだ。
物語は、進めるべきなのだ。
とりあえず、あの塔にでも歩いていこうと思ったときに、声が聞こえた。
「目覚めましたか?」
いつの間にか其処にいた、白く長い髪の毛の小さな少女が僕を目が合ったことを確認して、続きを話す。
「あなたは、選ばれました。あなたの勇気と、優しさを見込んでお願いしたいことがあります」
それは、透き通ったきれいな声。
「赤を、殺してくれませんか?」
綺麗な音で、透き通るような怖さを含んで、その少女はそう言った。




