1 プロローグ
完全に見切り発車です。落とし所も何も目処が立っていないです。
設定自体は短編の「ステータスメニューはチートに入りますか?」を引き継がせる予定です。
綺麗に完結できるように頑張りますので、宜しくお願い致します。
俺の住む街『グランツハイト』は大陸の端にある田舎町である。
田舎と言っても近隣にでかい城下町が2つもあるお陰で、貧困とはあまり縁がない。
人口は8千人というのは多いのだろうか。
住んでいる分には多いとか少ないとか感じるわけではないが、転生前の記憶がある身としては少ないんじゃないかと思わなくもない。
そう、俺は転生者である。
以前は地球という星の日本という国で普通に生きていた大学生だ。
大学で講義を受けていた時のこと。
突然目の前が真っ白になり、気が付くと目の前に神様がいた。
本当に神様かどうかは怪しかったが、本人がそういうのだから信じようと思う。
何より、俺を実際に異世界に送ったわけだしな。
神様いわく、俺の宇宙が消滅することが決定した。
だからそこに住んでいる生命は全て別の世界に転生してもらうとのこと。
さすが神様。スケールがでかい。
つまり、俺を含めてあの時間に生きていた者は余さず異世界に転生したということだ。
ああ、父さんと母さん元気かな。ついでに兄貴も。
若干センチメンタルになってしまったが、みんな第二の人生を謳歌していることだろう。
この俺のように。
本当は転生先で家族と会えれば良かったのだが、神様が言うには全ての生き物が転生先で合わないように別の世界に送るとのことだった。
結託されて、異世界に混乱を起こされることを懸念したらしい。
残念だったが、神様が言うんだから従うしか無い。
転生先はRPGのゲームの様なところが良いと言ってみた。
ダメ元だったんだが、案外すんなりと希望が通って驚いた。
今俺がいる世界は、中世ヨーロッパ風の国が有り、冒険者がいて、魔法がある。そんな世界だった。
異世界転生にお決まりのチートも貰ったしな。
前世の知識もあって、チートもあって、赤ちゃんからやり直しだ。
こんなの本当にチートと言わざるを得ない高待遇だろう。
俺の生まれた家は大工を営んでいて、それなりに田舎町には必要とされている職業だった。
そのお陰で中々に裕福な暮らしをさせてもらっている。
というわけで、俺はこの世界では結構珍しい学校に通っている身である。
現在15歳なので、前世も足したらすでに40手前だ。
「ハンスッ。こっちこっち」
教室で某っとしているとよく知っている声が聞こえた。
ちなみにハンスと言うのは俺のことだ。
ハンスホラーツ・ツィマーマン。今はこんなややこしい名前だ。
みんなにはハンスと呼んでもらっている。
声のする方へ視線を向けると、仁王立ちして手を振っている者がいた。
「エマ。どうしたの、そんなに大声出して」
うんざりしながら声を掛ける。
そいつの名はエマ。エマルテ・ミュラー。
不本意ながらクラスメイトだ。
「これ見て」
エマは右手に持った紙を俺に広げてみせる。
『魔王ついに進軍か!? 国境付近に怪しい人影を見るッ』
・・・。
「ね! すごいでしょッ。いつか冒険者になって勇者みたいに魔物と戦いたいな」
なにやら息巻いているが、これは明らかにゴシップ記事というやつだ。
だって魔王なんていないしな。
一応、魔族という民族がいることはいるが、魔王はいない。
そして、魔族と言っても見た目は普通の人間だ。
魔法が認知されていない時代に、それを使っていた一部の民族がその他大勢から恐れられてそう呼ばれただけである。
今では魔法も世に広まりつつあり、魔族という言葉も廃れ始めているそうだ。
この記事自体、前の世界で言うオカルト雑誌的な位置づけのものだ。
書いている本人たちさえ適当に書いているだけのことだろう。
ではなぜ、このエマがこんなに興奮しているかというとーー。
「絶対に勇者になって、世界を救ってみせるから!」
いい歳して勇者に憧れを抱くちょっとおかしい子だからである。
エマルテ・ミュラーは勇者に憧れている。
ーーだけでなく、普通の人間ではない。
どうして分かるのかというと、転生してすぐに神様からお告げがあったからだ。
あれをお告げと呼べるかは微妙だが・・・。
『神様候補の要注意人物だから面倒見てあげてね♡』
ある日突然枕元に置かれていた紙切れの一文である。
神様候補の要注意人物というのはもちろんエマのことだ。
神様候補がどうして要注意人物なのかと疑問に思ったが、その紙切れにはこう続けられていた。
『力を制御しきれてないから、ヘタしたら宇宙ごと消滅しちゃう可能性あるから気をつけてね』
そんな爆弾をただの町民に任せないでいただきたい。
心底遠慮したかったが、神様がそれ以降何の音沙汰もないので仕方なく様子を見ている次第である。
このお告げが枕元に置いてあったのは1年前だ。
そのせいで俺は両親に無理を言って通いたくもない学校へ通い、エマのクラスメイトとして監視するハメになった。
ストレスを与えてはいけない。
俺がエマを監視する上で気をつけていることだ。
エマが何をきっかけに暴走するかわからない以上、俺にはそれぐらいしかできることがない。
だからエマと知り合って以来、その要望をなるべく呑むようにしていた。
それが悪かったのだろう。いつしか俺はエマに良いように使われるようになっていた。
「これから魔物退治に行こう」
・・・また始まったよ。
エマは時々思いつきで俺を面倒事に巻き込もうとする。
つい先日も町の外へ連れ回され、魔物が巣食う森へと迷いこんだばかりである。
正直、チートを貰った俺だから良かったものの、普通の人間なら死んでいたと思う。
「この間は全然魔物なんていなかったし、今度はもっと遠くへ行こう」
何やら勝手に話を進めているが、前回だって普通に魔物はたくさんいた。
俺がエマに見つからないように全て倒していたのだ。
エマが魔物なんて見つけた日には宇宙がどうなるかわからんからな。
「じゃあ、放課後になったら門の前で待ってるからね」
俺の苦労など知る由もなく、エマはまだ授業が残っているというのに外へと駆け出していった。
ああ、大人しくしていれば普通の可愛い女の子なのになぁ。
窓の外を見ると、スカートを揺らしながら走るエマの後ろ姿が見えた。
できれば感想を戴けると助かります。
今後の展開の参考にさせて戴きたいと思います。