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第8話 いただきます

本日も2話投稿します。他の作家さんの作品と比べると、1話ごとの話の展開はのんびりしてる方かも。

 できた料理をテーブルの上に並べた。

 彼女は相変わらず凛とした佇まいだが、目は爛々と輝き、テーブルに並んだ料理を見つめている。

 やっぱり、美味しい食事というものは万国共通で人の心を満たすものなのだ。


 彼女は両の手の平を合わせて目を閉じ「いただきます」と一言告げたのち、ナイフとフォークを手にとった。何かのおまじないだろうか。

 

「それは、あなたの国の作法? どういう意味か聞いても?」

「……私たちは、この作法に二つの感謝の意味を込めている。

 一つは、料理を作ってくれた人、配膳をしてくれた人、野菜を作ってくれた人など、食事に携わる全ての人への感謝。

 もう一つは、食材への感謝。

 私たちは、肉や魚はもちろん、野菜や果物にも命があると考えている。

 この命を私の命にさせていただきます、とそれぞれの食材に感謝しているのよ」

 

 自分の背筋がピン伸びるような気がした。

 お世辞にも愛想に溢れているとは言えないこの女性から「感謝」という言葉を面と向かって伝えられたこともそうだが、食材に対する感謝という初めて聞く概念に、不思議と共感してしまったことも理由の一つかもしれない。


 エスパニアでは食前に神に祈りを捧げる。

 目の前の食事を恵として与えてくれた神の慈しみに感謝する、という意味だ。

 この作法自体をどうこう言うつもりはないが、僕は罪を犯した”あの日”から神に祈ることを辞めた。

 神に祈ろうとする度に、「神が全てを救うというのなら、なぜあの悲劇を止めてくれなかったのか」と責任転嫁と共に神を批判しているような気持ちが生まれるからだ。


 しかし、彼女の言う”食材への感謝”であれば、不思議としっくりくるような気がするのだ。

 そして、自ら死のうとしていた自分に対してまで命を提供してくれるこの食材たちが、非常に愛おしいものに感じられた。


「いただきます」


 僕は彼女を真似て両手を合わせ、目の前の命、そして自分と共に食事をしてくれる彼女への感謝を込めてそう唱えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

 ガイアブルの霜降りステーキを一口食べた彼女の反応は想像以上だった。


 くりくりとした綺麗な両目をカッと大きく見開き、


「えっ、えっ、えっ! ちょまっ、何これ嘘でしょ!!!! A5ランク最高級和牛を超えるステーキがこの世にあるなんて!!! 舌の上でとろける程の柔らかさ! なのに不思議と噛み応えもある……”柔らかいだけが美味い肉ってわけじゃねーんだぜ”とか言いそうなめんどくさい肉通連中への配慮まであるって一体どういうことよ!? そして口の中で溢れ出る肉汁とスパイスが絡みあって……あぁ何これ幸せすぎて泣けてくる。こういう異世界転移系ファンタジーといえば”私だけが作れる日本食サイコー世界一美味い誰にも真似できねー私SUGEEE!”的な展開になるもんじゃなかったのぉぉぉぉ……くぅぅぅ不覚ぅぅぅぅ」


 ちょっと最後の方は何て言ってるか意味がわからなかったが、とにかく喜んでもらえて何よりだ。

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