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第4話 赤ちゃんプレイ

「閲覧要請、E3503-001 白の書」


 左手の先から覗く黒と濃紫の亜空間の中を、無数の大型本棚が上下左右高速に遷移し、止まったかと思うと一冊の白い本を半自動的に吐き出した。


 僕は、その本を左手に取り、いくつもの円や曲線・直線が重なる複雑な紋様が描かれたあるページを開くと、右手の各指に力を込めた。


「式句:物理的再構成(リコンストラクション)。対象:アキト・リブロの着用する麻の服。時刻:現時点より180秒前へ。詳細:式句に委ねる。起動」


 5本の指先がページの5箇所にそれぞれ触れると、紋様全体をなぞるように白い光が灯り、やがて紋様の各所から5本の光の筋が空間に解き放たれた。


 白の書から伸びる5本の光の筋は、僕のびりびりに破れた服にその一端をつけると、服全体の記憶を読み取るように、繊維全体を高速でくまなく巡回した。そして、一際大きな光が僕の上半身を包んだ。


 やがて光がフェードアウトしていき、5秒後に完全に消え去ると、僕の上半身には、先刻無残に引き裂かれる前の、麻製の綺麗な服があった。


「¢☆…………○×■※¥…………」


 何か信じられないものでも見たような顔でよくわからない言葉をつぶやく彼女は、メティスの図書館を開いてから一連の流れが終わるまでの間、口を半分開けたまま、ただただ呆然としていた。


 とりあえずはこれで、僕に対する彼女の疑念は晴れたと思う。


 服を脱がせて補修してもう一度着せたとか、そんな人形ごっこのようなことは決してしていないと。


 ついでに、砂浜でのパンツの件も隠蔽できれば……いや、そもそも彼女が覚えていなければパーフェクトだ。


 呆然自失の状態から戻ってきた彼女が、再び口を開いた。


「¥∬☆× ∴〓〆 £⊿!? ……¢⊥○¥☆※!? ……⇔*’♪℃|-‥∇!? ……‡■★仝Å!!?」


 うーん、言葉では彼女が何を伝えたいのかさっぱりわからない。

 心なしか、いくつかの言語で言ってくれているような気がする。

 基本出不精だし、外国人とのコミュニケーションなんてしないからと、言語学を全く修めなかったことが、ここにきて悔やまれる。


 彼女は業を煮やしたのか、ジェスチャーで何かを伝えようとしてきた。

 しきりに僕の持つ白の書を指差したり、彼女の腰あたりに手の平を持ってきて水平に揺らしたりしている。


 うーん、わからん。


 今度は、ベッドの上に仰向けになって、手足をぶらぶらさせたかと思うと、反転して四つん這いでヨチヨチ歩きしたり…………


 うーん、これは……エロいっ!


「ぐはっ!」


 邪なことを考えていることがバレたのか、鳩尾に強烈な一撃をもらった。

 何でこんなことだけ通じるんだろ。

 とりあえずその短いスカートで四つん這いになるのは勘弁してください。

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