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月下の一群

おおかみの言うことにゃ

作者: 濱野乱

おおかみの言うことにゃ、気をつけなされ。お嬢さん。

諫言箴言金言、いずれもこれもあなたのためだ。お嬢さん。

恐しい牙も爪もあなたを追い立てる。そんじょそこら逃げ回っても、追いつかれるのがオチってものだ。


けれどおおかみ、とちっているわけでは決してなく、あなたをちゃーんと見つめている。

あなたは、おおかみの目を見る振りをする。


おおかみの目を見なさい。お嬢さん。とってもやさしい目をしているよ。

あなたを崖まで追い立てるやさしい目がそこにはあるよ。

爪も牙も紅に濡れているけれど、それはあなたの血ではなかったよ。


汚れている姿を見ておやり。浮き出たろっ骨見ておやり。

あなたは崖から飛び降りるけれど、おおかみはちゃんと見ているよ。


気をつけなさい。お嬢さん。

おおかみの言うことにゃ、たくさんのものが隠れているよ。

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