第八話 うさぎとぼく的なお話
「えーと、何故?」
「あ、え、その、急にすいません。でも、私も冒険者になろうと思っていたし、凄く親切にしてもらってこの人となら上手くやれそうだなぁって思って、それに恩返しもしなきゃだし、だから」
「あー、そういう事ならよろしく頼むよ。まだまだ駆け出しだから一緒に頑張ろうね。」
「はい!」
眩しい笑顔で返事をするもんだからドキッとしてしまった。
こうして初めての仲間が出来た。
「じゃあ、仲間になったんだしお互い呼び捨てにしようか、セフィア。後、敬語とかも無しで。」
「あ、はい。じゃなくて、うん。レント。」
その後、依頼の薬草を雑草が混じっててもいいように多めに集め、チャージラビットの討伐に挑む。
「じゃあ、俺はチャージラビットを倒そうと思う。でも、最初から手伝ってもらうのはあれだし、一人で殺るけどいいよね?」
「え、手伝うよ。魔法で足留めとか出来るし。」
「最初の依頼から魔法なんか使ったら先が思いやられるし、今はいいよ。もうちょっと強いのと戦う時にお願いするよ。」
「そういうことなら。」
「ところで、チャージラビットってどんなの?」
「…………。
ぷっ。あはははは!」
「わ、笑うことないだろ。」
「ゴメン、ゴメン。チャージラビットだよね。えーと、あれかな。」
そういってセフィアが指差したところには70cmくらいの大きなうさぎがいた。日本じゃあんな大きさ見たことないなーと思ってたらセフィアが「あっ!」と声を出し、どうしたと声を掛ける前に
「ぐふっ!?」
後ろから衝撃を受け、たたらを踏む。衝撃に驚きつつ後ろを向くとチャージラビットがおりどうやらこいつから攻撃を受けたみたいだった。
不意打ちには驚いたものの剣を構え戦闘開始する。
先に動いたのはうさぎだった。身を屈め低空タックルをしかけてきたので右に避ける。意外と速いが対応出来る速度なので、2度目のタックルに合わせ半回転して躱し、こちらを向く前に接近し、納品依頼なのであまり傷つけないよう首を一突きして倒す。
「背中大丈夫っ?」
セフィアが最初に受けた攻撃を心配してきたのでチャージラビットをストレージに仕舞った後
「大丈夫。」
と返事をするとホッとしていた。本当にいい子だと思うと同時に仲間になれて良かったと思った。
その後は名前の通り突撃するだけだったので、特に苦戦する事なくチャージラビットを合計で20羽ほど倒した所で俺の腹が鳴る。時計を見ると13:32分だった。道理で腹が減るわけだ。
「昼食にしたいんだけど、このうさぎって食える?」
「うん。食べれるよ。捌き方とか分かる?なんだったら僕がやるけど。」
「じゃあ、頼もうかな。………って僕!?」
「や、やっぱり変…かな?」
獣耳美少女でボクっ娘とか可愛い過ぎる。
むしろ大好きだ。
だから変じゃないと告げようと口を開く。
「むしろ大好きです。」
(全然変じゃないよ。)
「ふぇっ!だ、大好きって、そ、そんなこと急に言われても。こ、困るよ。」
やべっ!思ってたこととセリフが逆になった。どうしようと思ってたら、こんな声が聴こえてきた。
「だ、大好きってことは、き、気にならないってことだよね。それに大好きなんて言われたの初めてだよ。えへへ。ちょっと嬉しいな。」
顔が赤くなるのを感じつつ、喜んでるし結果オーライだと自分に言い聞かせる。
「とりあえず、よろしくね。」
「えっ!よ、よろしくって、な、何を!?」
「いや、うさぎを捌くのだけど。」
「あ、うん。うさぎね。うん、分かったよ。」
「じ、じゃあ、俺は焚き木でも拾ってくるよ。」
なんか、少し気まずくなった。解体用の短剣と野営用具を渡した後、時間を置く為にも焚き木拾いに向かうことにする。
今度はきつねと遭遇する…なんてこともなく、焚き木を集めて戻ってみるとすでに準備が整っており、後は焼くだけのようだ。
ただ肉を焼いただけとはいえ女の子の初手料理を満喫した後はこの後どうするかなどを話し合った。
話し合いの結果、町に戻りセフィアのギルド登録とパーティ申請を行った後に装備なんかを揃える。時間が余ったら連携の確認と訓練をすることになった。