第五話 ヒロインと手紙的なお話
「!?」
部屋に入るとそこには謎の美少女が身体を拭こうとしていたのか全裸で居た。
「……誰?」
あまりにも衝撃的な光景にそれしか言えなかった。すると、
「えっと、私はあなたに助けていただいた狸で名前はセフィアといいます。」
と、このセフィアさんは手に持っていた手拭いで身体を隠し、頭から湯気が出るんじゃないかってくらい顔を赤くしながらそう言った。
とりあえず部屋の中に入ってドアの鍵を掛けた後、セフィアさんには旅人の服セットの外套を着てもらった。
そうしてひとまず落ち着いた後、改めてセフィアさんを見る。
16歳くらいで首のあたりでしばったロングの柔らかそうな茶髪に翠の瞳。
頭には狸耳があり茶色の尻尾が外套から出ている。
そして大きすぎず小さすぎないバランスのいい胸が外套を押し上げていた。
「あの、そんなに見られると、その…恥ずかしいです。」
「え、あ、その、すまん。ちょっと信じられなかったので。」
(言えない。可愛くて見惚れてたなんて)
「それで、なんで狸になってたんだ?」
「あの姿は私の種族の能力なんです。もちろん全員が出来るというわけではないですが。それで何故あの姿でいたかというと冒険者になろうと思って里を出てギルドのある町を目指してた時に盗賊に襲われて、変化でなんとか逃げたのですが…」
「そのまま行き倒れて、たまたま通りかかった俺が助けたと。」
「はい。」
「それで、これからどうするんだ?身分証とか、その、服とか?」
「すみませんが、変えの服とかありませんか?逃げる時においてきてしまったので。」
「一応、村人の服ならあるけど、後で取りに行けばいいんじゃないか。透明化出来るみたいだし。」
「いえ、盗られてる可能性もありますし、透明化といっても幻術の一種でまだLVが低く、動くと見えてしまうんですよ。だから、出来れば荷物の所まで連れて行ってくれませんか?」
「元々冒険者になろうと思っていたからな。登録の後に依頼を受けるつもりだったし連れて行くくらい構わないぞ。」
「ありがとうございます!」
そう言って俺の手を取って喜んでくれているが、外套から手を出すと必然的に中が見えてしまうので俺の目が彼女の大事なところにいってしまうわけで、それに気付いたセフィアさんは
「きゃあっ!」といいながらしゃがみこんだ。顔を赤くしながらこちらを睨んで。
「すまん。えっと、取り敢えず狸の姿になっててくれないか。」
「そうします。」
そう言って彼女はドロンと変化した。
「それでは、明日はよろしくお願いします。」
「あ、ああ。よろしくな。」
この姿でも喋れたことに驚きつつ返事をした。
「じゃあ、俺は少しやる事があるから先に寝ててくれ。」
「はぁ。分かりました。」
これからの事は明日ギルドに行った後に考えるとして、取り敢えず今は家族からの手紙を確認しないとな。というかどうやって書いたんだろう?その辺書いてあるといいな。
そんなことを考えながら俺はまず父からの手紙を開けた。
『蓮斗へ
話はアリシアさんから聞いた。突然夢の中に現れてびっくりした。嘘か本当かは分からないがお前が異世界とはいえ生きることが出来ると聞いて半信半疑だがこの手紙が届けばいいなと思い書いた。母さんが色々言うだろうから俺からはこれだけ言わせてもらう。男に生まれたんだから、どうせなら上を目指せ。以上だ。
父より』
『蓮斗へ
異世界で生活するらしいね。生水には気をつけてね。それから異世界だから怪我くらいならいいけど死ぬような無茶だけはするんじゃないよ。あと、悪い女には引っかからないよう気をつけて。大切な人ができたらちゃんと守るんだよ。それからちゃんと三食食べるように。最後に元気でいてね。応援しているからね。
母より』
『お兄ちゃんへ
異世界に行くんだってね。魔法のある世界なんてちょっと羨ましいかな。でも、危ないこともいっぱいあると思うから怪我しないように気をつけてね。
唯』
どうやらアリシアさんは夢の中で家族に手紙を書いてもらったみたいだ。1度死んだ後なのに心配されたりするのは少し変な感じだが、やっぱり嬉しいな。
「よし。明日も頑張るぞ。」
そうして俺はベッドに入って眠りについた。