第四百十七話 絶対に嫌だ! 的なお話
「いや、だから前にも言ったけどウチは飲みませんって! それ以前にこの間もそう言って騒動起こしたじゃないですか!?」
「そ、それはそうだけど、でもあれだって絡んできた馬鹿がいなかったら……」
「煽ったのはアデラードさんですよ。あの時待ってる人がいるから帰れって言えば良かったんですよ。あなたギルドマスターなんだし。」
「うっ! だ、だって、あそこで強権を振るうのは良くないし……それにそっちの方が楽しそうだったし……」
楽しそうって……どう考えてもそれが一番の理由だろう。
まあ、強権を振るいたくないというのもちゃんとあるんだろうけどさ。
「それに、また騒ごうものならエリーナさんに怒られますよ。」
「それは困るよ!」
そこまで恐れなくても……あの人も真面目に仕事してるだけだし、それに良い人だよ?
「そうだ! それならレント達が住んでるところで飲もう! 前に外では飲まないって言ってたし、だったら家なら良いんだよね?」
「えーと、それは……」
そう言いながらよくない酔い方をする人達、セフィア、リリン、蒼井、レイダさんを見る。
いや、セフィアはそこまで悪い酔い方ではないけど、でも俺らが今住んでるのは家ではなく宿だしやっぱり見せられない。
だってあんなかわいい姿を何処ぞの輩になんて見せたら絶対余計なちょっかいとか面倒なことになる。
だから却下だ。
「やっぱダメです。今住んでるのは宿なんで。何があるかわかんないんで。」
「へ? そんなに、なの?」
「えーと、脱いだりするのがいるんで……」
もっとヤバいのもいるけど。
リリンなんかは酔いがまわると性欲が強くなるし。
対象は俺だけっぽいけど、だからって他の人と一緒にというのは良くない。
「むぅ。しょうがないか。じゃあ、無理に飲まなくてもいいからレント達の宿にいこ。どうせ食堂もやってるだろうしね。」
結局来るんかい!
はぁ〜。
仕方ない。
俺にはこの人を止める術なんて持ち合わせていないし、諦めよう。
それにみんなに飲ませなければいいだけの話だ。
というわけでアデラードさんを連れて途中でつまみになりそうなものを買いつつ宿レイランへ。
「あ、おかえ、りぃ!? また増えてる!?」
「へ? あ!? 違う違う! この人はギルドマスターでシアのはとこだから! 全然そんなんじゃないから!」
宿に帰った時に丁度掃除をしていたレイちゃんにそんな事を言われてしまった。
確かにまた増えたように見えるかもだけど………女の人ばかりだけど……でもそういうのじゃないから!
半分は違うから!
……………半分の時点でヤバいな。
レイちゃんをなんとか宥めて、誤解を解いてからそのまま食堂に向かう。
親父さんがにやにやしてたけど、なんとか殴りたくなるのををこらえる。
娘に近づく男の駄目なところを見つけたみたいな顔してたけど、我慢した。
宿の食事を堪能した後は部屋に戻り部屋飲み開始となった。
といっても飲むのはアデラードさんと俺で、他のみんなは果実水とかだ。
これなら問題はないだろう。
俺が飲むのは付き合いとかそういう面倒なやつだ。
パーティリーダーなら今後も似たようなことあるかもだから今の内に慣れとけというアデラードさんの意見に押される形だがな。
そうして2時間が経った頃、ちびちび飲んでいたんだがそれでもそろそろヤバいかも。
なんかちょっとくらくらしてフワフワした感じがあるし、無駄に笑ってしまいそうだ。
これ以上は、醜態を晒してしまう。
それだけは絶対に嫌だ!
「これ以上は酒に呑まれそうだから、俺はもう休むわ。みんな、後頼む。」
ベッドに倒れこむと、すぐに意識が、遠のい、て、いく……




