第三百五十八話 デッサン大会的なお話
「では、自分達はこれで。」
「ご苦労様です。」
衛兵さん達に事情を説明したところこっちは被害者ということでお咎めなしとなり、逆にやられ屋さん達は迷惑防止条例に引っかかったとかで連れていかれた。
条例とかあるんだ……
ちなみにこの迷惑防止条例は過度な勧誘や暴力を示唆した内容の勧誘、ナンパ行為などをしょっぴくそうだ。
後は騒音、酔っ払い、喧嘩して周りに迷惑をかけすぎたりとかでも引っ張って行くそうな。
「さて、デートの続きでもするか。」
「そうだね。」
気を取り直してデートを再開する。
とりあえずこの場を離れる。
街のど真ん中で大立ち回り……って程ではないか、中立ち回り? してたから人が集まってしまってる。
こんな中でデートなんてルナの精神がもたないからな。
そうして人気のない所まで歩くとそこは草木生い茂る公園だった。
こんな所もあるのか……
雰囲気もいいし丁度いいや。
ここで少しゆっくりするか。
「雰囲気のいいところだね〜。ね、あっちの方行ってみよう!」
「そうだな。あ、ルナここを描いてみたらどうだ? 結構いい絵になると思うんだけど。」
「そうね。いっそのことみんなで描いてみたら?」
「みんなって、ここにいるみんな?」
「そうよ。ちょっと楽しいかなって。」
「俺は構わないぞ。まあ、道具とか無いからルナが持ってたら、だけどな。」
「あるわよ。このアイテムバッグに入ってるもの。」
「そうなのか。みんなはどうだ?」
「えー、僕あまり自信ないんだけどな〜。」
「やろう。面白そう。」
「私、絵を描いたことないんですけど…」
「やってみようよ。別に売るわけでもないしみんなで楽しく描こうってだけだからさ。」
「それもそうですね。」
「レントがそう言うなら…」
シアの提案の元、写生大会が始まった。
ちなみに俺は実はあまり自信がなかったりする。
なんせ小学校の時にあった写生大会とかでも入賞したことなかったし、図工の時間でも評価は低かったしな。
まあ、下手なのがいる方がルナの絵の良さがはっきりするだろうしセフィア達も気が楽になるだろう。
あそこにベンチがあって、その裏に木がある。
うっ!
歪んでしまった……
木炭なんて初めて使うから、なんて言い訳したところで庇えないくらい上手くないな。
まあ、俺の絵なんて誰も興味ないだろう。
本命はルナの絵だし。
そしてみんなの絵のお披露目となる。
さすがに時間がないので鉛筆……じゃなかった。
木炭画だ。
で、ルナの絵はやはり上手い。
性格故か繊細な感じがすごい。
セフィアは自信がないと言うだけあったお世辞にも上手とは言えないが、俺も似たり寄ったりなのでそこまでじゃないな。
ルリエは結構上手く描けてる。
初めてと言いつつ俺よりも上手いよ。
シアは……普通だな。
「なにその顔?」
「いや、別に……」
「どうせ普通だとか思ったんでしょ。」
「うっ! いや、そんな事は……ごめん。思った。」
「別にいいわよ。私だってそう思ってるし。」
最後にリリンの絵。
意外な事にそれほど上手くなかった。
リリンはなんでも出来ると言うイメージがあったんだが、出来ないこともあるんだと少し安心した。
「レントならもっと上手く描ける。」
「はい?」
そう言うといきなり俺を描き始めた。
声をかけようとすると動かないで! と言われなし崩し的にモデルをする事に。
そうして出来上がった絵は激似だった。
「似すぎだろ!」
ふんす! とドヤ顔するリリンが可愛い。
それに触発されたルナが俺をモデルに描き始め、みんなもそれに合わせて俺を描きだした。
なんでぇ〜?
写生大会がデッサン大会になり俺はずっとモデルをして気づけば日が暮れるまで続き、デートは終了となった。
こんなんでいいのかと思わなくはないが、みんながまんぞくそうにしているし、ま、いいか。




