第三百五十七話 やられ屋さんだ。的なお話
アクセサリー商ではそこそこ時間を過ごしたがお昼にするには中途半端だな。
11時13分とか、微妙すぎる。
とりあえずそこら辺ぶらぶらするかな。
無計画と言われるかもだが人生なんてそんなもんだ。
いや、デートと人生を一緒にするのもどうかと思うが、計画通りにいかないのは同じだ。
だからこの指輪もきっと渡す機会があるはずだ。
適当に歩いているとバナナの叩き売りと遭遇。
またかよ!?
前にもあったよな、こんなこと。
確かあの時は発注ミスで馬鹿みたいな数を注文してしまい至る所で売ってたんだよな。
ちょっと気になったので話しかけてみたところ………………この人のところの店も発注ミスだそうだ。
バナナ売りには妙な宿命でもあるのだろうか……
「えと、二房下さい……」
「ありがとうございます。」
声をかけたのに買わずに行くというのは流石に申し訳ないしウチは大所帯だからということで二房買うことにした。
あと、頑張れという意味もある。
強く生きろよ、バナナ売り。
「前にもあったよね、こういう事。」
「そうだな。しかも前と同じ理由だからすごい偶然だよな。」
「ん。奇跡的。」
「発注ミスなんてそう何度も遭遇するものなの?」
「そう思うだろ? でもあったんだよ。」
「そうなんですか? その時はまだ私はお兄さんの恋人じゃなかったから初めて聞きました。」
「そういえばそうだったな。」
確かにあの時はまだルリエとはただの客と宿の娘って関係だったな。
それが気付けば恋人どころか結婚までしてるんだから人生は何があるかわからないもんだな。
まあ、死んで異世界転移してる時点ですごい体験してるんだけど……
と、ここで見たことある名前のお店を発見する。
モルト商会。
カインにもあった雑貨屋で奴隷も扱っているお店。
レイダさんと出会ったお店でもある。
そういう縁もあるからと入ってみるとこの店ではどうも頑丈さがウリなようでお皿やらフォークやらお盆やら髪留めやらにポップで「とても頑丈で迷宮のお供に」と謳っている。
なるほど。
それで頑丈なのがいいのか。
ストレージがあるから頑丈さは別に必要がないんだけど一応買っとこうかな。
人も増えた事だし。
後釣り竿も追加で買っとく。
ここでもやっぱり埃をかぶっていたがなんとか3本あった。
これでもう少し釣りを楽しめるといいなぁ〜。
この前は魔物戦闘ばかりでろくにできなかったし。
モルト商会を出ると12時を回っていたので雰囲気のいいお店でお昼を食べる。
迷宮都市だからあんまりそういうお店はないと思っていたけど、ここは商人が多いし、迷宮産の珍しいアイテムを求めて貴族がやって来たりするらしくその関係で雰囲気のいいお店が結構あった。
そのうちの一軒で食事をとった後再びデートを再開したら、あっという間に厳つい男達に囲まれてしまった。
なんでぇ〜?
「へへへっ、よう兄ちゃん。随分と楽しそうじゃねぇか?」
あ、これあれだ。
テンプレキャラのやられ屋さんだ。
違ったナンパだ。
「だがその楽しみもここまでだ。痛い目見たくなけりゃこの女達を置いて帰るんだな。なぁに、心配すんな。ちゃんと後で帰してやるからよ。」
「いつになるかわからないけどな、ギャハハハハ!」
全員お呪いがあるから心配はないんだけど、それとこれとは話は別だな。
超ムカつく。
だけど、いきなり殴りかかると暴行罪になったりしないかな?
「エルフなんて久し振りだな〜。」
「このちっこいの2人はいらなくね?」
「いやいや、こういうのが逆にいいんだろうが。」
こいつら……遠慮する必要はないな。
「そういうわけだからとっとと……グブォッ!」
「てめっ、いきなりなにしやが……ごはっ!」
「このや……ガッ!」
殴り、蹴り、とにかくひたすらに下種どもを蹴散らしていく。
そしてあっという間に屍の山が出来る。
いや、死んではいないが。
と、ここで衛兵さんのご登場だ。
さて、どう説明したものか。
ま、正直に言えばいいか。