第二百七十六話 デートを続けよう的なお話
生暖かい目と嫉妬の視線から逃げるようにして劇場を離れる。
次に訪れたのは本屋だ。
「本屋?」
「そう。ここなら昔の勇者が広めた話とかあるかなと思ってさ。他には吟遊詩人とかも歌とかにしてそう。」
「なるほど。」
というわけでマイクのいる本屋さんへ突撃。
「いらっしゃいませー………おや、レントさん。今日はどうしました?」
「地球文化を探しながら街を歩いていてね。ここなら何かあるかなと思ってさ。」
「なるほど。ではこちらはどうでしょう? 私の新作なんですが……」
「あ、今回はそういうのは無しの方向で。」
「………そうですか。では、こちらに。ここは勇者が伝承した話を集めた区画でして、結構人気ですよ。……私の本よりも。」
「……………。」
最後に何かつぶやいてる。
というか、反応にすごく困るんだけど。
「えっと、じゃあ、取り敢えず見させてもらうな。」
マイクを放置して本棚を見ていく。
そこにはどこかで見たことあるようなタイトルの本がいくつもある。
でも、その中でも特に多いのが童話や昔話といったものだ。
多分ラノベや漫画だと話の量が多く細かいところを説明し辛いからだろう。
それに対して童話や昔話は子供の頃に何度も読んでいる上に話自体も短く分かりやすいから多く広まったのだろう。
それでも中にはドラゴンが重要ではないクエストの話とか身体がゴムみたいにめっちゃ伸びる男の話とかオレンジ髪で悪霊と戦ったりする高校生の話や金髪馬鹿面の忍者の話なんかの有名タイトルなんかも置いてある。
著作権が無いからって好き放題しすぎじゃね?
「へー。意外とあるんだね。」
「ん。」
「わ! これ凄いですよ。人の腕が伸びてます!」
「本当!? ちょっと見せて。」
「ほらここです。」
「本当だ。」
でも嫁達にとっては斬新で受けがいいみたいだ。
「レイカーさんなら原作の方を持ってそうだな。」
「あ、それもそうだね。今度お願いしてみる?」
「ん。」
「はい。」
どうせならこんな臨場感の少なめな本よりも原作の方を読んで欲しいよね。
出来れば個人的に好きなオレンジ髪の高校生の方も。
とはいえ、冷やかしだけで何も買わないのはマイクに悪い気がするから、適当に童話や昔話方向の本を何冊か買わせてもらった。
ごんぎつねとか赤ずきんとかだな。
マイクの店を後にしたところでリリンからきゅるる〜とかわいらしい音が聞こえる。
「お腹すいた。」
「お昼ごはんにしようか。」
「…ん。」
ちょっと恥ずかしそうに顔を赤くしてるリリンがかわいい。
適当に店を見て回っていると何やらいい匂いがしてそっちの方を見るとピザを焼いてる店があった。
デートのコンセプトにあってて丁度いいしここにしよう。
「ここにするの? あ、もしかしてここもそうなの?」
「そ。あのピザも地球の料理だよ。」
「へー。結構いろんなところにあるんだね。」
「確かになぁ。これまではあんまり気にしてなかったけどあるもんだな。」
注文したピザが来たのでみんなで食べる。
ちょっと味が濃くてくどい感じがあるが、これは間違いなくピザだな。
ピザって唐突に食べたくなったりするんだよな〜。
結構簡単に作れたはずだし今度作ってみようかな?
お昼の後は適当に雑貨屋なんかを見て回ることに。
日本の百均とかで見られるような便利グッズはこっちでも売れるだろうし誰かが広めてるだろうと思っての事だ。
そうして回っていると出るわ出るわ。
将棋にチェスにオセロに囲碁に双六にバルバロッサにモノポリーに……って遊び道具ばっかじゃん!
店員さん。「これら全部かつての勇者様が考案したんですよ。凄いですよね〜」って言うけどさ、俺も知ってるわ!
他人が作った物を我が物顔で広めてるなよ、勇者共。
「へー。流石は勇者だね。こんなのも作れるなんて本当に多才だね。」
やばい。
セフィアが食いついてしまった。
なので店を出て勇者の真実をきっちりと説明しておく。
なんだったら俺だってやるぞ?
輪投げみたいのとか無かったしやってやれないことは無い。
この後も適当に雑貨屋を見て回ったり吟遊詩人をはしごして地球文化探しをしていると陽が落ちてきて時間を確認すると6時を5分ほど過ぎていた。
やばい!
そのことに気づいた俺達はギルドに向けて駆け出した。
なんか、最後はグダグダになっちゃったな。




