第二百七十四話 休みを貰った的なお話
トンテンカンと金槌の音が響く。
今日で鍛冶修行6日目だ。
「では、今やって見せた工程を実践してみてください。」
「はい。」
アリシアさんが目の前で実演してくれた作業を思い出しながら真似して金槌を振る。
今作っているのはナイフだ。
それもただのナイフではなく、日本刀のように何度も折り重ねる工法だ。
歪み直しや研ぎを事前にやっていたからか叩いて伸ばすという普通のナイフは3日目で作れるようになり、鉄の剣も昨日に一本作った。
そして今日、新しい技術を習っているというわけだ。
「出来ました。」
「うーん。まだまだですね。やり直してください。」
「分かりました。」
じっくり時間をかけて作ったんだけど、駄目みたいだ。
やっぱりあのくらいのリズムとテンポで槌を振る方がいいんだろうか?
とりあえずやってみるか。
まだ焼き入れと焼き戻しを習っていないし、頑張らないと。
あ、でもそういえば黄昏さんが帰ってくるのは明日くらいだっけ?
お土産を渡したいし、明日は暇をくれないかな?
その為にもまずはちゃんとしたのを一本作らないと。
「うーん……うん。とりあえずは及第点といったところでしょうか。」
「ありがとうございます。」
あの後作り続けて六本目でようやく及第点を貰えた。
うぅ、日本刀の工程の多い事、多い事。
何処かで失敗すればそれだけ質が悪くなるわけで、俺のようなにわかじゃ失敗するなというのが無理な話。
それでも六本目で及第点を貰えたのはスキルとアリシアさんの指導のお陰だ。
「もうこんな時間ですか。」
「へ? あ、もう6時過ぎてる。」
「今日はこのくらいにしておきましょうか。」
「そうですね。それで、明日の事なんですけど、ちょっと休みをもらえませんか? お土産を渡す人達が帰ってくるそうなんで……」
「そうですか……分かりました。一週間休みなしでしたし、明日は丸々1日休みにしますからゆっくりと羽を伸ばしてきてください。」
「ありがとうございます。」
明日1日休みにしてもらえたし、デートに行けるかも。
でも黄昏さん達っていつ帰ってくるんだろう?
時間が分からないと渡せないんだが……まあ、いっか。
セラさんに頼んで何時にギルドに来てくださいとか伝えてもらえば。
いつも通りアリシアさんが指パッチンをして家の中に戻る。
「あ、レント。お疲れ様。帰ってきて直ぐで悪いんだけど、これから晩御飯を作るから材料を出してくれるかな?」
「分かった。何がいる?」
「えっとね〜……」
セフィアが言う物を取りだして渡す。
「ありがとう、レント。疲れてるだろうから、お風呂入ってきたら? リリンが洗ってくれてるはずだから。」
「分かった。」
風呂場に行くとリリンが服を脱いでいた。
どうやら風呂掃除は終わってお風呂に入ろうとしているようだ。
「レント、一緒に入ろ。」
「おう。」
「鼻の下伸びてる。」
「つい、な。」
大好きな嫁と一緒に風呂に入るんだからしょうがないだろう。
リリンと一緒に風呂でほっこりしてからリビングに行くと既に晩御飯が出来ており、俺達と入れ替わるようにセフィア達が次々と風呂に入っていく。
そしてみんなが揃ったところでいただきますをする。
「明日なんだけどさ、休みを貰えたからデートしない?」
「「「本当!?」」」
「お、おう。」
俺がなんとなしに言うと3人が思いっきり食いついて乗り出してきたから、戸惑ってしまった。
「でも、黄昏さん達が帰ってくるんじゃないの? そっちはいいの?」
「まあ、そっちの方はセラさんにギルドに何時に来てくれるよう伝えて貰おうかなって。」
「ふーん。で、私達はどうすればいいの? あんた達はデートかもしれないけど、私達が一緒に行くわけには行かないし、かといってお土産を渡す時に居ないというのもあんまりしたくないし。」
「うーん、とりあえず自由行動でいいんじゃないかな? セラさんには午後6時って伝えてもらうようにするからその時間に来ればいいと思うよ。」
「りょーかい。」
「では、依頼に行きましょう。アカネ、ユウキ、一緒に来てください。」
「「え?」」
アカネが自分達はどうすればいいのかと聞いてきたからそれに答えるとレイダさんがアカネと蒼井を依頼に誘った。
休みの筈がなぜ依頼!? みたいな顔をしているが……当人達の問題だし、俺が口出す事じゃないよな。
それに、俺は明日のデートのシミュレーションで忙しい。
……べ、別に面倒くさそうだから見ないようにしてるわけじゃないし。
夕食を終えたらあとは寝るだけ。
嫁達とそういう事をしてから寝た。
明日のデート楽しみだな〜。