番外編 異世界で行う初めてのハロウィン
活動報告に書きましたが、この話の為に昨日は休ませていただきました。もしも活動報告を見てない人はやきもきさせてしまい申し訳ありませんでした。
ですが、その甲斐あって普段は1500文字程度の所、5800文字オーバーという自身最長のお話になりました。
それと、季節ネタは本編との関連性はないので当分フェードアウトすると言ったシア達がいたり、エルカにいる筈の蓮斗達がカインに居るじゃんといったツッコミは無しの方向で。
時間が日本と同じかどうかは分からないが10月31日ならば、今頃はハロウィンという事で東京とかで馬鹿騒ぎしてんだろう。
今日はハロウィン。
日本でハロウィンを騒いでる奴らはどれだけハロウィンについて知ってるのやら。
まあ、ただ仮装して子供はお菓子がもらえる日くらいにしか考えてないんだろうな。
本来のハロウィンは一年の締めに行われる収穫祭でその際に悪霊を追い払う為に焚き火を行ったりするらしい。
更に、亡くなった人の霊魂が帰ってくるという考え方もあって、つまりは日本におけるお盆みたいな要素もある。
お盆に帰ってきたばっかでまた帰ってこいとか先祖酷使しすぎだろとツッコミたくなる。
帰ってこなければならなくなったご先祖様とかが可哀想だし、もう少しまともにやれよと思わなくもないが、俺にはどうしようもできない。
その点こっちのハロウィンは随分とマシなのが救いだな。
これまでいた勇者や転移者、転生者がどのような働きをしたのかは話からないが収穫を祝い、ちゃんと焚き火をしたりする。
仮装やトリックオアトリートの奴なんかもあるから現代日本の文化も入ってるんだろう。
ひょっとしたら本家の時代の人が紛れ込んでたお陰で本来のハロウィンと日本のハロウィンが混ざったのかも。
グッジョブ、本家の時代の人。
とはいえ、本家の時代の人の頃よりも大分年代が過ぎているのかこっちの世界独自の行事もあるがそれは瑣末な事だな。
今すべきはこれからやってくる仮装した嫁達を存分に愛でる事だ。
まず最初にやってきたのは赤ずきんのような格好をしたセフィア。
ひょっこりと覗く耳としっぽが可愛さを引き立てている。
次にやって来たのはリリン。
言うなれば魔女メイドって感じのゴスロリ系のメイド服と魔女の帽子、そして箒を携えている。
とんがり帽子とローブの人は普通にいるから何かアクセントをつけるのがこっちの主流のようだ。
こっちもかわいい。
ルリエは死神かな?
黒いマントに大きな鎌の模造品を持っている。
それにデフォルメされたドクロのお面をつけている。
ルリエはもちろん、見せる為に動いているルリエにつられてピコピコ揺れるポニテがかわいい。
アカネと蒼井はお揃いの悪魔っ子でレイダさんは凛とした雰囲気がかっこいい海賊衣装。
ちなみに俺は吸血鬼っぽい格好にかぼちゃの被り物をしたかぼちゃ怪人というべき状態だ。
なぜこんな格好をしているのか。
それは街の店がハロウィン割りなる割引をしているからだ。
仮装をしている人は5パーセント引きになる店が結構あってそれにあやかろうという話になったからだ。
それに今日は出店も多く出店していて、そっちも仮装しているとおまけしてくれたりするらしい。
みんなが着替え終わったので早速街へと繰り出す。
「凄いな。街がハロウィン一色だ。」
「レントのいた所は違うの?」
「場所によるかな。俺の所はこんなには飾ってなくてせいぜいお店がハロウィンフェアとかハロウィン限定のお菓子を出すくらい。」
「そうなんだ。」
街にはハロウィンの飾り付けが施されて仮装して街を歩くだけでもテンションが上がって楽しくなってくる。
祭りと同じ感じだな。
ルリエの実家の宿屋に挨拶がてら仮装を見せに行くとそこでは日本ではお目にかかる事は先ず無いであろうダックアップルが行われていた。
ただやるだけでは面白みに欠けるからだろうか、ここでは対戦形式で三連勝すると景品がもらえるという張り紙がある。
ダックアップルとはたらいや桶などに水を張りそこにリンゴを浮かべてそれを手を使わずに口で取るという遊び。
まあ、こっちではダックアポーという少し発音が良さそうな名前になっているが。
日本ではやった事どころか見たこともないという事でやる事に。
ルリエは宿側の人間だった事もあり参加を拒否しようとしたが、それは寂しいしなにより祭りは楽しむ事が大事という事で説得してみんなでやる。
一番手は俺。
ただ口でくわえるだけの簡単な遊びだと思っていたがこれが意外と難しい。
水に浮かべられているからちょっとした事で簡単に流れていくし、相手の動きによっても流れが変わってしまう。
結局俺が取る事ができたのは相手が取った後だった。
残念。
蒼井も俺と同じように初挑戦だったが俺のを見てたからなのか一勝を挙げる事に成功したものの二戦目で負けてしまう。
アカネはこっちで生きてきたし経験があるのだろう。
二勝を挙げたが残念ながらレイダさんと戦い敗れてしまった。
そのレイダさんも三戦目で宿の客に負けてしまう。
結局三連勝する事ができたのはセフィア、リリン、ルリエの三人でした。
セフィアとリリンは持ち前のスピードを活かして相手を瞬殺し、ルリエは店側として客の相手をしていたのだろう経験を活かし、技術で勝利した。
それにしても、三人が待ち構えてはもっとくわえる様は凄くかわいかったです。
見事三連勝した三人には紅の帽子亭オリジナルのパンプキンパイが贈呈された。
丸々一枚が三枚貰ったのでみんなで分ける事に。
この宿の料理はどれも美味しいので期待しながら食べるとやはり美味しくあっという間に二枚もなくなってしまった。
残りの一枚は後に取っておこう。
そうして宿を後にして街をぶらぶらと歩いていると仮装コンテストの場に遭遇した。
やっぱりこういうのはどこにでもあるんだね。
飛び入り参加オーケーで、うちの嫁達なら優勝を十分狙えるが衆人環視の前でそんな事したらナンパやらストーカーやら面倒くさい連中が湧いてくるかもしれないし、眺めるだけにしようかね。
と、思って暫し鑑賞していると知り合いが出てきた。
というかシアだ。
なんで?
そんな目立つ事をするような子じゃなかったと思うんだが……
とはいえ知り合いが出てるのなら応援すべきだろう。
シアは妖精や精霊が着ていそうな服を着ている。
それがエルフの神秘的な美しさとマッチしていて凄く綺麗だ。
次に出てきた……ではなく入っていったのは蒼井。
確かにあいつの容姿は優れているし悪魔の格好も似合っている。
優勝できるかはともかく上位入賞はできると思う。
その後は何人かの参加者が様々な仮装を披露して審査タイムとなる。
審査をするのは俺達観客と審査委員の人達の合計数だそうで、係りの人がカードを観客全員に渡し、行き渡った所で別の係りの人の持つ投票箱に名前を書いて記入する。
書けない人は係りの人が代筆するようだ。
集計している時間を少しだけ待って結果発表となる。
「おーまたせしましたー。観客の坊ちゃん嬢ちゃんお父さんお母さんその他の皆様。これより、結果発表を始めたいと思いまーす!」
随分とテンションの高い司会だな。
女の人だからまだ良かったが男の人だとウザそうだな、これは。
「じゃあ、10位から発表していくよ〜。呼ばれた人は前に出てきてね。第10位。エントリナンバー28、レーネさーん。レーネさんは前に出てね〜。んじゃ、次に行っくよ〜。第9位。エントリナンバー36のポールさん。ミイラの格好が凄い。というか、顔が分かんないくらいで本気度が伺えたのが良かったのかな〜?」
確かにあのポールさんと呼ばれたミイラは凄いな。
ボロボロの包帯をぐるぐる巻きにしてて誰かわからない。
体格で辛うじて男の人だとわかるくらい。
その後も呼ばれていき、第3位になった所で蒼井が呼ばれた。
3位か。
結構いったな。
そして知らない人を挟んで最後の第1位。
その1位はシアだった。
流石というか何というか。
結果発表も済んだしこれで終わりかと思ったら、まだ賞品の授与が残っていたみたいだ。
先ず10位から6位はお菓子の詰め合わせ。
5位と4位はお菓子の詰め合わせと賞金がそれぞれ5000リムと10000リム。
3位の蒼井がMATの上がるピアスと賞金50000リム。
2位の人が水魔法が使える魔杖と100000リム。
そして1位のシアは火魔法の威力の上がるワイバーンの骨を使った杖と150000リム。
なるほど。
それでシアが出たのか。
仮装コンテストが終わったのでシアと蒼井、そしてルナの応援をしてたであろうゾンビの格好のルナと合流する。
「優勝おめでとう、シア。」
「え、誰?」
「悪い。これじゃ分からないよな。俺だよ俺。」
被っているかぼちゃをとって顔をみせる。
「レ、レント!? み、見てたの?」
「まあな。シアが出てきたから応援しようと思ってね。そしたら何故かこいつも飛び入りで参加したんけど。」
「楽しそうでつい。所で、このピアス要らない?」
「なんで?」
「だって、耳に穴開けるなんて痛そうだし。」
「要らないなら売ればいいじゃん。」
「そうする。」
「シアのそれはやっぱりルナの為?」
「そうよ。あの子にこういうのは無理だからね。」
「はい、ルナ。」
「ありがとう。今度、何かお礼、するね。」
「気にしなくてもいいんだけど……でもま、期待しとくね。」
「うん。」
仲良きことは美しき哉ってね。
「二人が良ければだけど、一緒に回らない?」
「私はいいわよ。」
「わ、私も、いいよ。」
二人を加えて再び街をぶらぶら。
先ほどパンプキンパイを食べたけど時間的には既にお昼。
だから適当に出店を回りながらお昼にする。
「うわ! 何その色。凄い毒々しい。」
「確かに見た目は凄いけど、んく、美味しいよ。」
赤黒い色のジュースを飲んだり
「うん。やっぱりラビット肉の串焼きは美味い。」
「って、ハロウィン関係ないじゃん!」
「匂いにつられて、つい。」
串焼きを食べたり
「ハロウィンの仮装してるからハイこれ。お菓子のおまけね。」
「ありがと、おばちゃん。」
おまけのお菓子を堪能したりしながらお腹を満たしていく。
ある程度食べ歩いた後はアクセサリーとかを売ってる所を見て回る。
やっぱりハロウィン関係のホラーな感じが多いな。
というか、こんだけあると呪われたアイテムとか混じってそうで怖いんだけど。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ほらね。
誰かやられてる。
幸いその人は近くの教会でお祓いしてもらって大事には至らなかった。
よく見てみればホラーなアクセサリーを売ってるのは全部教会のすぐ近くじゃん。
ひょっとして教会がしょう……いや、そんなはずはないな。
うん。
気のせい気のせい。
でも、さっさと離れようっと。
危ないアクセサリー通りを抜け街の広場を超えて反対側の門の所まで来てしまった。
本来ならば街の外に繋がるために人が少ない筈。
なのにどういう訳か人が多い。
気になって外に出てみるとそこでは人が行列を作っていた。
何これ?
取り敢えず行列の先の方を見に行くとそこにはギルドの受付さんたちがいた。
その中の一人であるセラさんに話を聞いてみる。
「あの、この行列はなんですか?」
「悪霊払いという名目の討伐依頼です。」
「身も蓋もない!」
「一応街のイベントの一つでして、倒した魔物の数に合わせて景品を授与するという形になっています。」
「景品?」
「はい。時間は90分で5匹以上で受付嬢お手製お菓子か最下級のポーション三種、10匹以上でギルドマスターとの握手券か下級ポーション、15匹以上で能力微上昇のアクセサリーか下級MPポーションとなっています。」
「ギルドマスターとの握手券って……」
「一番人気はギルドマスターとの握手券ですね。次はお菓子です。」
分かりやすっ!
冒険者分かりやすっ!
「後は最速で最大の功績を残した人には下級リジェネポーションかギルドマスターからのキスとなります。」
「いやいやいや! キスとかおかしいでしょ!」
「それはそうなんですけど、冒険者からの要望が多くて押し切られる形でこうなってしまったんですよ。ですので、こちらの希望としては女性の方に勝ってもらいたいというか………」
「分かりました。リリン。全力でやってくれ。」
「ん。」
「ありがとうございます。では早速……列に並んでくださいね。」
「あ、うん。」
そこはキッチリしてるのね。
列に並んで順番を待つ。
そして俺たちの番になる。
「やる事は先ほど説明しましたが、補足情報としてランクについてお話しさせていただきます。冒険者の皆様はランクがそれぞれ違いますからそれを考慮して受けられる依頼の範囲内の魔物のみと制限をかけさせていただいています。無理に格上に挑むのは危険ですし、格下すぎるのを狩っては他の参加者の迷惑になりますから。」
「なるほど。分かりました。それでは行ってきます。」
「お気をつけて。」
「シア達はどうする?」
「私達もリリンのサポートをするわ。むさいのとかになったらギルマスが可哀想だし。」
「確かにそれは………」
そんなわけでリリンのサポートをして勝ちにいきます。
リリンと蒼井の気配察知をもとに魔物を発見次第直行し、範囲外の小物は俺達が牽制や始末をして範囲内のCランクの魔物はシアと蒼井が遠距離から削ってリリンがとどめを刺すというサイクルが出来てる。
狙い目はベアやコングのような動きの鈍い奴。
そうして一時間ほど狩り続けた結果24匹も狩ることが出来た。
かなりのペースで狩れてるし結構いい感じかも。
意気揚々と戻り結果を待つ。
結果は頑張った甲斐あってリリンの優勝したし、ギルマスのキスは護れたし良かった良かった。
「賞品はギルマスのキスでこの人にお願いします。」
「ちょっ!? 何言ってんのリリン!?」
「分かりましたです。」
「いや、分からなくていいですから! 優勝はリリンだから!」
「往生際悪いです。」
抵抗する俺を抑えてするギルマスのキスは頬にチュッとやる簡単なものだったけど、感想としては凄く肩が痛いです。
万力のような力で抑えられて凄く痛い。
感触? そんなの分かるわけないだろ。
その後は肩をさすりながら街の露店を巡り、ハロウィンの雰囲気を楽しみみんなで夕食を食べて最後に異世界ハロウィンの締めのイベントを眺める。
それはちっさい熱気球を沢山飛ばすというもので夜空に浮かんでいく明かりが凄く幻想的で、見惚れてしまう。
「綺麗だね、レント。」
「ああ。そうだな。」
後で聞いた話だが、あの明かりは天に帰っていく先祖等の霊魂を模したものだそうだ。
色々なことがあって少し疲れたが、初めて行うハロウィンは凄く楽しくて幸せな気分になれた。
仮装ですが、種族にいるウェアフルフやヴァンパイア等を避けるようにしてます。
差別するわけにはいかないですから。
悪魔は魔物でいて魔族とは違うという設定です。
それと最後の締めのイベントは作者のオリジナルです、多分。