第二百四十三話 モフりたかった。的なお話
森の中を散策していると隣からくぅ〜という可愛らしい音が聞こえた。
「セフィア、お腹すいた?」
「少しね。もうお昼だし。」
「もうそんな時間か。それじゃ、どっか開けた場所でも探すか。」
「うん!」
一応ユーリにお昼を食べるのに向いた場所がないか聞いてみると近くに湖があるそうだ。
湖畔でお昼を食べてその後のんびり釣りをするのもアリかも。
それをみんなに言ってみれば、みんなも賛同した。
というわけでユーリの案内の元湖に向かう。
そしてたどり着いた場所には陽の光をキラキラと反射させて輝く大きな湖と灰色をした狐の親子がいた。
あれが噂のグレイフォックスか。
結構かわいいな。
あ、逃げられた。
なんか、悲しいな。
ネット小説とか漫画とかだと餌付けとかうまくやって仲良くなってるのに、やっぱりあれはフィクションでこっちが現実って事か。
モフりたかったんだけど、仕方ない。
今度セフィアをモフらせてもらおう。
ほんの一瞬の邂逅の後、寂しさと悲しさがあるがみんなでお昼の準備をする。
材料は先程収穫したプレアの実や残り僅かになったストレージ内の食材だ。
帰ったら買い足さないと。
そして俺は例によって薪拾い。
いつも通り薪を持って戻ると火を使う物だけというこれまたいつも通りの光景。
そんで残りの作業を待ってみんなでお昼にする。
ユーリとレヴィちゃん? はセフィアちゃんの手料理が食べられるなんてって感激してる。
この子達、後が大変そうだな。
他の親衛隊に尋も………色々聞かれそうだし。
というか、良い加減レヴィちゃん? の名前を聞こう。
毎回ハテナを付けるのも面倒だし。
「そういえば、君の名前は何ていうのかな? レヴィちゃんってルリエとかが言っていたけど。」
「………あ、はい。私の名前はレヴィで合ってます。」
感激し過ぎて反応が少し遅れてたぞ。
大丈夫か、この子。
それ以外は特に問題もなく、普通に昼食を終えて食休みも兼ねて釣りをしたり、本を読んだりと各々が自由にのんびりとしている。
餌はお昼に使われた川魚とそこらへんで採れたよくわかんない虫。
釣り糸を垂らすこと3分。
早速かかった。
やっぱり異世界の魚は食い意地が張っている。
釣れたのは60センチくらいの鮎みたいな魚。
結構美味しそうだし、もっと釣るぞー!
◇
釣竿3本で釣ること2時間。
100匹くらい釣れた。
こんだけ釣れれば当分は魚に困らないだろう。
というわけで、街に向かって帰る。
帰るんだが、その前にこいつを倒さないとダメそうだな。
「く、クリムゾンベア……そんな、なんでこんな時に、こんなのと会うんだ。」
なんか、レヴィが絶望してる。
まあ、格上だし仕方ないのかな。
怯えているレヴィをみんなに任せて俺はクマさんを倒しにかかる。
今晩はクマ鍋にして貰おう。
俺を切り裂こうと振るわれる右腕の一撃を刃の部分で防ぐと剣の斬れ味のクマさん自慢の剛腕によってスパッと斬れて飛んでいった。
その痛みに呻いているクマさんを片手剣スキルのLV3で覚えた閃火という相手の脇をすり抜ける際に一閃するアーツで倒す。
これは接近戦の際に隙をつけて、なおかつ敵から離れられるから結構使える。
そして、残心というか、クマさんの方を向いてちゃんと倒せていることを確認するとセフィアからこんな声が……
「レント! 左から別のが来てるよ!」
「まさかの2連戦!?」
セフィアが言う方を見るとかなりゴツい鹿が居ました。