第二十二話 ごりもにのレイちゃん的なお話
「アリシアさまーーー!!!」
「「「!?」」」
お呪いも終わりそろそろお別れかなと思っていたら突然響く声。
何事だと思い俺たち三人は警戒して辺りを見回すと
「あいたっ!」
「ぎゃん!」
ドサッバタン。
頭上から突然落ちてきた何か。
手に伝わるもにもにとした柔らかい何か。
そして顔に押し付けられ、ごりごりと当たる硬い鉄板の様な物。
鼻が、頬骨が、削れそう…。
「あいたたた。」
喋ったよ。このごりもにとしている物。
それも可愛らしいまさしく女の子だって感じの声で。
ということはこのもにもにとした柔らかいのはお尻か?そしてごりごりとしたのは胸“板”か?
と、考えてると突然視界を遮っていたごりごりと手の中のもにもにがなくなった。
なんだと思って辺りを見回すとアリシアさんが右手人差し指を上に向けていて、微かに手が光っている。
どうやらアリシアさんが不思議パワーでごりもにを浮かしているみたいだ。
漸く落ち着けた所でごりもにを見ると鎧を着た女性だった。
緑色の髪と大きめの胸が特徴的だ。
だが、どうやらごりごりは鎧らしく、鎧が無ければと思うとちょっと残念だ。
「アリシア様。時間かかり過ぎです。30分だけと言ったのに、もう1時間ですよ。お仕事もまだまだ残ってるんですから早く帰ってきて下さい。」
「そんな事よりまずは蓮斗さんに謝りなさい。あなたが押し潰したんですから。」
アリシアさんがそう言うとごりもにさんを床に落とす。
「きゃん!
う〜。痛いですよ、アリシア様〜。」
落ちた時に打ち付けたお尻を摩りながら文句を言ったごりもにさんはこちらを向く。
「えっと、先ほどは下敷きにしてしまい申し訳ありませんでした。
私はアリシア様の秘書をしているレイカーといいます。気軽にレイちゃんとお呼び下さい。」
「「…………。」」
「それでレイちゃんは何しにここへ?」
うわっ、リリンが言ったよレイちゃんって。
いいのかそんな風に呼んで。
アリシアさんの秘書ってことは神様だろうし。
「あ、そうでした。アリシア様、そろそろ帰って来て下さい。いくらお気に入りの蓮斗さんと逢えるからって唯でさえ仕事が遅れてるのに2時間も鏡の前に貼りつ…モガモガ。」
レイカーさんが喋っているとアリシアさんが背後から突然口を抑えた。
(余計な事は言わなくていいの)
「そ、それでは迎えも来たのでそろそろ帰りますね。後、近いうちにまたくる予定なので、その時はよろしくお願いしますね。」
「モゴッ、モガモゴゴガ!」
「それでは。」
最初の方は小さくて聞こえなかったが、アリシアさんが別れの挨拶を済ませて指パッチンをすると背後にトンネルのような物が出現し、そこにレイカーさんを放り込んだ後、アリシアさんもそのトンネルへと入っていった。
「なんか、疲れたな。」
「それよりもレント、セフィアに指輪を。」
「ん?指輪?ってあー!?リリン、その指輪ってひょっとしてレントから?リリンだけズルいよ。」
「いや、あのなセフィア。セフィアにも渡そうとしたんだがなんかお花畑に旅立ってて渡すに渡せなかったんだよ。それにほら、ちゃんとセフィアの分も用意しているから。」
そう言いながらセフィアの左手を取って薬指に指輪を嵌める。
というか左薬指でいいのかな?
ここ異世界だし、婚約指輪とかってどこにつけるんだろ?
そう思い、セフィアたちに聞いてみたが、どうやら左薬指でいいらしい。
その後、リリンにも説明した指輪についての事をセフィアにも話し、セフィアとリリン用のも渡す。
ちなみに俺とセフィア用のは黄色ので、セフィアとリリン用のは素のままのやつだ。
アリシアさんの騒動の影響で大分時間が過ぎてしまい、朝食も時間ギリギリになってしまった。
セフィアとリリンがなんか違和感があると言っているし、今から依頼をという気分にもなれず昼食も宿で摂り、スキルやこれまでの事を話したり武器の手入れをしたりと、結局一日中ゴロゴロして過ごした。
腰も少し痛いし。
アリシアさんの電撃で大分良くなっているというのは蛇足だろうか。
レイちゃんは結構ドジなので怪我しないよう鎧を着ています。後、一応護衛のようなことも出来ます。ドジだけど。