第百九十七話 模擬戦継続中的なお話
戦闘シーンはむずいです。
「次はセフィアか。」
「うん。よろしくね。」
以前やった時も勝ち越すことはできなかったんだよな。
戦闘行為と無縁の日本人と、魔物が生息する異世界に住む人との差かな。
でも、勝ち越すことは出来なくてもそれなりに結果を出さないと恥ずかしいし、セフィア達の旦那として自慢できなくなってしまうからな。
まあ、そんな自慢するような所があるかどうかは分からないが。
「じゃ、行くぞ。」
「うん。」
木剣を腰だめの状態で突撃して居合斬りの要領で先ずは一撃。
最速の剣撃である抜刀術は鞘があるからこそその真価を発揮する。
鞘に引っかかって遅くなるから抜き身の方が速いという考えもあるが鞘による抵抗があるからこそ抜き放たれた時に加速して最速となるのだ。
今回はその鞘は無いが、その代わりに腰の部分に引っかける事で速度を上げて自身における最速の剣撃を放つ。
そしてその一撃は………見事に躱された。
「びっくりしたー。凄い速いから驚いたよ。」
「そう言う割に簡単に躱したじゃん。」
前方宙返りのようにして躱したセフィアは俺の後ろ五メートル程離れたところにいた。
「まあ、今までのレントには無い構えだったから警戒してたんだよ。」
「なるほど。俺の事、よく見てるんだね。」
「うぁぇぇっ! い、いや、そりゃあ、見てるよ。だ、大好きだし。それにかっこいいし、旦那さんだもの、そりゃあ、見ちゃうよ。」
「へ!? いや、そう言うことじゃなくて……でも、あの、ありがと。」
「う、うん。」
凄く、顔が、熱いです。
セフィアもなんだか真っ赤になっているし。
「いや、ラブコメはいいからさっさと続きしてくんない?」
「「ッ!」」
アカネからのラブコメ発言で言葉に詰まる。
「えと、その、今度は僕から行くね?」
「お、おう。」
気持ちを切り替えて、模擬戦に集中しないと。
セフィアからの攻撃は右のフェイントからの左の攻撃。
俺はそれを躱すとフェイントに使った右が捩込むような突きを放ってきて、俺はそれを木剣で上に弾くとそのままの流れで唐竹を打ち込むがセフィアは回転するように躱してその勢いを使っての回転斬りをしてきた。
だから俺はそれを見て前方に転がるようにして回避する。
ここで一旦仕切り直し。
再度向き合った俺とセフィアはほぼ同時に駆け出して剣と剣をぶつけ合せ鍔迫り合いになる。
弾かれるような形でお互いに再び距離を取る。
さて、どうしようか。
一撃の威力は俺の方が上だけど、スピードと手数ではセフィアの方が上だ。
下手な攻撃をすればスピードと手数で翻弄されてかえってピンチになるだろうし、となれば先ずは最速の一撃を。
でも、怪我させたく無いから防御を弾いて返す刀で一閃でどうだろう。
よし、やってみよう。
俺が抜刀術のような構えを取るとセフィアも警戒したようで腰を落として構えた。
………………………。
呼吸を整えて、セフィアに一気に接近する。
そして一撃目を放つとセフィアは木剣に向き合うようにして防御するが防ぎきれずに武器を手放した。
そして振り抜いた木剣を返して追撃の寸止めを入れる。
「開門追牙。」
即席で命名する。
「勝者、レント。」
リリンの宣言で俺の勝ちが決まった。




