第百八十話 ハードジャイアント戦的なお話
いつもよりちょい長め。
馬車で獣道を進んでいく。
それにしても、馬車が通れるだけの幅があってよかった。
今になって思ったけど、もしも馬車を通す隙間がなかったら誰かが護衛に残らなければいけなくなって戦闘が厳しくなってたよ。
そうして目的地へと向かう。
今回のターゲットはハードジャイアントだけど、奴が生息しているのは林の奥の山の麓から中腹あたりを縄張りにしているからその側が目的地だ。
と、魔物のご登場だ。
こいつは鎌が刃になっているカマキリだ。
そんなの常識だろと思うかもしれないが、カマキリのカマは捕まえるのが目的だから斬れないのでその常識は間違い……だと思う。確証はないけど。調べてないけど。というかこの世界だと調べれないし。
こいつはブレードマンティスというCランクの魔物らしい。
馬車を襲われたら堪らないので俺が前に出て抑える。
二刀流スキルはないけど、普段使っている黒鉄の剣を右手に、予備の黒鉄の剣を左手で持って盾代わりにする。
俺が鎌を抑えた隙にセフィアとリリンがカマキリの脚の関節を斬りつける。
すると、立てなくなったのか崩れるように倒れ、俺が巻き込まれないように退がると同時に火の塊が飛んでいき、瞬く間に焼き殺した。
これじゃ買取は期待出来ないな。
まあ、ハードジャイアントの報酬があるから気にならないけど。
その後もクリムゾンベアにヘビィコングなんかと遭遇したけどこの面子には特に問題となることも無く、麓付近に到着した。
ここで休憩をとる、と同時に馬車を置き、目印を作る。
戻れなくなったら困るからね。
後、馬は餌と水を与えておく。
すぐに戻るつもりだけど念のため。
そして休憩を終えて探索に出る。
木に傷をつけて目印をつけつつ麓に向かうこと三十分。
出来れば麓辺りで見つかるといいな。
林で身を隠せるか………って居たーー!
てかデカイよ。
屈んでるのに木の枝に頭当たってるもん。
しかしこっちに気づいてる様子もないしチャンスだ。
アイコンタクトを交わして配置につく。
リリンが前、俺とシア、セフィアとルナがその少し後ろに並びそれぞれ詠唱を始める。
「火よ、我が敵を焼き払え。ファイヤーボール!」
「スキル重唱発動!」
『火よ、猛れ、猛れ、激しく燃え上がれ。熱く、熱く、全てを燃やす炎となれ。魔法昇華! 完成! 蒼炎!』
「大いなる風よ、激しき烈風、不可視の砲撃となりて、我が敵を撃ち砕け。」
「精霊共鳴、エアロカノン!」
「風よ。激しき竜巻となりて我が敵を切り刻め。エアロストーム。」
「炎よ、猛き焔、激しき砲撃となりて、我が敵を焼き尽くせ。フレアカノン。」
……………ん?
「影よ。十三の杭となり、彼の者を打ち貫き縫い止めよ。シャドウオブデスピアーズ。」
「行く。」
「「「「了解。」」」」
セフィアが気になることを言ってたけど、今は目の前に集中だ。
「シャドウオブデスピアーズ!」
リリンの魔法が屈んで何かをしていたハードジャイアントを攻撃しつつ拘束する。
そして。
「エアロストーム!」
「フレアカノン!」
「「合成魔法、フレアストーム!」」
「蒼炎!」
「エアロカノン!」
「「合成魔法、蒼炎烈火!」」
俺とシア、セフィアとルナの魔法が襲いかかり紫の竜巻がハードジャイアントを包み込む。
「殺った?」
あ。
これは駄目かも。
シアがやってないフラグを建設した。
そしてそれは現実となる。
「グオーーーーーー!!」
「撤収ーー!」
俺がそう叫ぶと同時にみんなが一目散に逃げる。
というか全然元気じゃん、あいつ。
それぞれが目印を頼りに馬車まで走る。
しかし、ルナが足を引っ掛けたのか逃げてる途中で転んでしまう。
俺に仲間を見捨てるという選択肢がない以上助けるしかない。
ルナの元へと戻り、抱えると即座に撤退を再開する。
(お、お姫様、抱っこ。)
ルナが何か呟いたが走っている俺には聞き取ることができなかった。
「僕の方が足速いし変わろうか?」
「いや、俺の方が力があるからいいよ。」
「あの、私、自分で、走れます、から。」
「却下よ。あんたが一番足遅いんだからそのまま抱えられてなさい。」
途中セフィアが変わろうかと聞いてきたが俺の方が力があるし、ルナも魔法職故それ程早く走れないのとシアが言うので俺が抱えたまま馬車まで向かう。
そして馬車の準備を手早く済ますと乗り込んでそのまま街道に向かって走る。
〜レイカー〜
レント等が一目散に逃げるのをレイカーは空から眺めていたが暴れてるハードジャイアントが火を撒き散らしており、このままでは山火事へと発展するだろう。それを見たレイカーは大地に降り立つとハードジャイアントに手をかざし突風を生み出す。
すると、その突風を受けると紫の炎が消えるだけではなく、ハードジャイアントの命すらも消した。
「同じ攻撃をもう一度すれば倒せたのですが。もったいない事をしますね。」
レイカーは事切れたハードジャイアントを一瞥すると次元に穴を開けて神界へと帰って行った。
この話は最近調子に乗りかけているレントが失敗を経験するという風にしたくて書きました。
まあ、惜しいところまでは行ってたんですけどね。
女神の加護は凄いですから。