第百七十三話 アドバイス? 的なお話
「そ、それにしても、みんなよく似合ってるね。」
周りの連中の悪意というか、嫉妬の視線に辟易しつつセフィア達を褒める。
「大丈夫、レント? なんか気分が悪そうだけど、何処かで横になる?」
「ああ、大丈夫。悪意感知が無駄に反応してるだけだから。」
「悪意? なんでこんな所で?」
「みんなが綺麗だから嫉妬してるみたい。」
「き、綺麗ってそんな。」
うん。
やっぱりセフィアはかわいいな。
それにリリン達も顔を赤らめてる。
眼福、眼福。
そして嫁達だけでなくアカネに蒼井、シアとルナも嬉しそうにしている。
けど、レイダさんだけは納得いかないといった感じだ。
「どうしたの、レイダさん?」
「いえ、私なんかが綺麗なはずがありません。それにどう考えても私はこの場には不釣り合いです。」
「何言ってんの? すごく綺麗だよ。それに釣り合いが取れてないと思うならレイダさんもAランク冒険者になればいいじゃない。(折角加護があるんだしさ)」
ちゃんと綺麗だから褒めて、最後の言葉は耳元で囁く。
こんな所で加護がある事を言うのはちょっとまずいかもしれないしね。
俺の言葉を聞いて納得したのか、少しだけどレイダさんははにかんだ。
そして、嫁達と談笑しようとして気づく。
ルナが、普通にドレスを着ている。
しかも、胸を隠さずにだ。
こんな所で魔法を使うのは問題があるかもだけど、やっぱり恥ずかしいのか照れつつも、周りに忙しなく視線を向けている。
そんな事をすれば逆に馬鹿が釣れてしまう。
なので
(そんなに周りを見ると馬鹿が食いつくよ。だから辛かったら俺の側にいるといい。男除けの代わりにはなるだろうから。)
そんな事を仲の良さを周りに見せつけるようにしつつこっそりと伝える。
まあ、それでも無理ならセフィア達に守ってもらおう。
「よ、よろしく、お願い、します。」
そう思っていたんだけど、俺の隣に来て服の裾を摘まみつつ呟いた。
何このかわいい生き物。
まあ、そのお陰でルナに対する視線が全部俺に向くようになったんだけどね。
全部憎しみとか、嫉妬とかに変わって。
帰ったら嫁達に癒してもらおう。
そんな感じで談笑していると、部屋の照明が落とされ、奥の方が照らされる。
そこにはセラさんがおり、パーティーの司会をしてAランクパーティが誕生した事をギルマスが祝う。
というか、クレアさんの話短いな。
そしてセラさん、クレアさんを照らす照明までも消されて辺りを暗闇が支配するが、少しして再び奥の方が照らされるとそこには先ほどまで居なかった黄昏さん達が立っていた。
「みんな。今日は来てくれてありがとう。俺たちがパーティを結成したのは今から約四年前で………なんて、堅っ苦しい挨拶はなしだ。今日の費用は全部俺たち持ちだ。だから今日は自由に楽しんでってくれ!」
その宣言とともに照明が点きパーティーが開始される。
俺は嫁達に、アカネ、蒼井、レイダさん、シア、ルナ、クルトと話しながら料理を楽しむ。
しかしあれだな、俺は冒険者の知り合いが少なすぎるな。
こういう大勢が集まるところに来ると改めて思い知らされるな。
でも、嫁達に変な虫がつかないように関わってこなかったから仕方ないし、その方針は極力変えない。
こんにゃく男を量産するわけにはいかないし。
そして、そのまま談笑しているとセラさんと黄昏さん達がやって来た。
「よぉ、楽しんでるか?」
「楽しんでますよアベルさん。それにどの料理も美味しいですね。」
「そうだろう。ここはこの街でもトップクラスだからな。」
「そういえば気になっていたんですが、なんでアベルさん達は領都や王都なんかに行かないんですか? もっと大きい街なら仕事も多そうなのに。」
「そういうところだとかえって競争率が高いんだよ。それにここは俺の生まれた街だし、カイルの嫁さん達もここに住んでるから、あんまり離れようって気がしないんだよ。」
「なるほど。」
「あ、あの。」
「ん? 確かアレクシアちゃん……だっけ? どうしたんだ?」
「はい。アレクシアです。じ、実は私達、明日からハードジャイアントの依頼を受けようと思っているので何かアドバイスを頂けないでしょうか?」
「ハードジャイアントかー。あいつはBランクでも結構上位なんだよな。本当に大丈夫なのか?」
「えっと、とりあえず今回は全力で魔法を当ててみて、それで駄目ならすぐに放棄する予定です。」
「お、レントも受けんのか?」
「はい。俺とセフィア、リリンにシアとルナで受けます。」
「ほほう。シアとルナ……ね。随分と仲良くなったな。もう浮気か?」
「茶化さないでください。」
「悪い悪い。それで、ハードジャイアントだよな。あいつは人型の魔物で体長は5mくらいで、物理、魔法の耐性がめちゃくちゃ高い。でも、物理よりも魔法の方が耐性が低いから魔法で戦うというのは割とセオリーだな。それに全身がスゲー硬い弊害なのか動きがトロい。魔法を一当てして撤退するならまあ、それほど危険はないだろう。けど、あいつはその硬さ故に攻撃力もかなりのものだぞ。まあ、それらは全部アイアンゴーレムと似てるな。その為にハードジャイアントはアイアンゴーレムの上位互換って認識されてるが、お前らはアイアンゴーレムと戦った事はあるか?」
「はい。事前に二体ほど。」
「そうか。それならまあ、死ぬ事はないかな。でも、油断するなよ。ハードジャイアントはアイアンゴーレムよりも速いし硬い。下手したら一撃で殺されるから気をつけろよ。」
「「「「「は、はい。」」」」」
「まあ、お前らなら大丈夫だろう。(成否はともかく) 俺らは他にも回るところがあるからまた後でな。」
そう言って黄昏さん達が離れていった。
しかし、一撃で殺される……か。
二人、いや、四人を死なせるわけにもいかないし気を引き締めていかないとな。