第百七十話 強度が……的なお話
「来たわね。」
「ごめん、待たせた?」
「そうね。」
「うっ! それはなんかゴメン。」
「といっても五分だけだし、時間には間に合ってるんだから気にしないで。」
良かった。
待たせたみたいだけど、怒っていない。
人によっては自分より遅いというだけで怒る事もあるからな。
「それで、何をする?」
「それなんどけどね、先ずは全力で合わせてみようと思うの。私とレントが蒼炎と精霊共鳴でね。それが終わったら実際の戦闘でする手順、リリンが拘束して私達がそれぞれ合成魔法を撃ってみるの。」
「確かに実戦の前に練習しといたほうが戦闘時にスムーズに出来るよな。というわけでセフィアにリリン、少し離れててくれ。」
「エルナも離れててね。」
「分かった。」
「ん。」
「う、うん。」
三人が離れたので早速やってみよう。
「火よ、我が敵を焼き払え。ファイヤーボール!」
「スキル重唱発動!」
『火よ、猛れ、猛れ、激しく燃え上がれ。熱く、熱く、全てを燃やす炎となれ。魔法昇華! 完成! 蒼炎!』
「大いなる風よ、激しき烈風、不可視の砲撃となりて、我が敵を撃ち砕け。」
「精霊共鳴、エアロカノン!」
俺は重唱を使い、アレクシアさんは精霊共鳴で発光する。
……発光は要らないか。
まあ、いいや。
「行くよ、アレクシアさん!」
「ええ。」
「蒼炎!」
「エアロカノン!」
俺の蒼い炎が撃ち出されて、途中でエアロカノンが混ざったのか炎の勢いが変わりそのまま的に直撃して、激しく燃やす。
その蒼い炎は瞬く間に焼き尽くし的となっている人形が焼滅した。
〈合成魔法 蒼炎烈火を会得しました。〉
どうやら無事に成功したようだ。
「上手くいったわね。」
「そうだね。魔力量はどんな感じ? このまま連携の確認に行ける?」
「行けなくはないけど、一応休もう。それと、掛け声の時に気になったんだけど、なんでさん付け?」
「いや、だって許可も取らずに呼び捨ては失礼だと思って。」
「私は既に呼び捨てにしてるんだし、そんなの気にしなくていいわよ。アーシャでもレーシャでも、シアでもいいわよ。」
「じゃ、じゃあ、し、シア。」
「うん。」
それなりに親しくなったとはいえ、女性を愛称で呼ぶのは少し抵抗があるな。
そんな事を話している内にセフィア達がこっちに歩いてきた。
「ねぇねぇ、僕もそう呼んでいいかな?」
「私も。」
「いいわよ。エルナも既にそう呼んでいるしね。」
「じゃあ、シアちゃん。」
「改めてよろしく、シア。」
「よろしくね。」
そのまま少し休みながら談笑を続ける。
すると、話が盛り上がってしまい気づいたら一時間近く喋ってしまった。
シア呼びには慣れてきたけど、ちょっと喋りすぎたな。
「ちょっと、喋りすぎちゃったわね。それで、そろそろやろうか。」
シアの一言を聞いてみんなが動き始める。
新しい的を用意してそれぞれ配置につく。
先ず一番前にリリンが、その右斜め後ろに俺とシア、リリンの左斜め後ろにセフィアとルナ。
エルナさんも丁度いいということでルナ呼びしていいと言ってくれた。
シアとルナって語感がいいな。
リリンがシャドウオブデスピアーズを撃ち込み攻撃と拘束をする。
……動かない的だけど。
その後に既に準備していたセフィアとルナの炎の竜巻が的を襲い、そしてトドメとばかりに俺とシアの蒼炎烈火が燃え尽きた的を通り過ぎて奥の壁に直撃した。
……的の強度を考慮するの忘れてた。
一応連携の確認は出来たけど、代わりにセラさんにめっちゃ怒られてしまいました。
罰として修理と整備をする事になりましたとさ。
エアロカノンはウインドブロウをルナとの合成魔法用に改良、強化した魔法です。
強さ順的にはウインドショット、ウインドブロウ、エアロカノンとなります。
何故こんなことをって? 読み返したらウインドブロウという魔法があったからです。