第1388話 その辺は意識してかないとな。的なお話
微妙な気分だけど、それはそれとしてこうして運良く会えたのは僥倖……と、考えておこう。
目的達成だから気分は二の次だ。
うん。
「今回はどのくらい居るんだ?」
「あー、具体的にどのくらいってのは決まってないけど、それなりに……かな。」
「そうなのか。」
「はい。それでちょっとお願いがあるんですけど……いいですかね?」
「なんだ? もしかして欲しい魚でもあるのか?」
「ええ、まあ……またマグロが欲しいなと……。」
「もう全部食ったのか?」
「いえ。まだありますけど、まぐろはあればあるだけ嬉しいので。」
「なんだそりゃ……ま、いいや。そういうことならうちに来な。昨日狩ったのが残ってるし売ってやるよ。」
「ありがとうございます!」
「良かったね。」
「ああ。朝早起きして探しに来て良かったよ。」
「は? 探しにって、マグロのためにか!?」
「それもありますけど、1番の目的はローレムさんに挨拶をしようかなと。」
「私にか? そりゃまたなんで……」
「知り合いに挨拶しない粗忽者のつもりはありませんよ。」
「そ、そうか。」
そんな一幕の後、マグロを譲ってもらう為にローレムさんの家にお邪魔する事に。
「そういえば、ヤマトに行ってたって話だったんだけど、ヤマトはどうだったんだ?」
「色々ありましたね。本当に。」
「色々?」
「大名っていう、貴族に当たる人に手合わせをして欲しいと願われたり、厄介な魔物をなすりつけられたり、別の魔物もまた厄介だったりしましたね。後、友人が出来ました。」
「いや、前半と最後の差が激し過ぎないか!?」
「他にもまあ色々ありはしたんですけどね。祭りに関する事が多くて。」
「あ、もしかして喋っちゃダメなやつだったりするのか?」
「いえ、そうではないんですが……祭りの練習ばかりであまり話せることがないんですよ。」
他にはミコ関連のとかリュウガミネ家でのあれこれとかあったりして、あまり他人に話せる内容じゃなかったりするんだけどね。
それらを抜きにすると、そのくらいになるんだよね。
お祭りがあったんだから遊んだというのは容易に想像出来るだろうから言う必要はないだろう。
「よし、切り分けたぞ。この量だし10万ってところか。本当はもう少し渡したいところなんだが、自分の分が無くなるからな。」
「いえ、売ってもらえるだけで十分ですよ。」
「そろそろ狩りに行こうと思っていたからもう少し後だったら良かったんだけどな。」
「そうだったんですね。……あれ? それじゃあ今日はどうしてあの場所に居たんですか?」
魚河岸なのか市場なのか、未だ扱いがふわふわしてるのでボカしてます。
このまま知らずにこの国を去りそうな予感あるなぁ。
「そりゃ海の状態とか獲物の様子とか色々知れるからな。」
「ああ。つまりは調査をしていたと。その辺は冒険者とそんなに変わらないんですね。」
「かもな。どうする? このままここで食っていくか?」
「あー、そうしたいのは山々なんですが、今ちょっとお城にお世話になっているので、多分そこで朝食を出される事になるかと。流石にそれを断る勇気は無いので今日は遠慮しておきます。」
「……はい? 今お城って言ったか?」
「言いました。それもまあ、色々ありまして……。」
「何がどう色々あったらそうなるんだよ……。」
本当にねぇ……これは俺も予想外でしたよ。
人生、何があるか分からないってのはこの世界に来た時点で理解してはいても、やはり直面したら驚くんだよな。
「ま、詳しくは聞かないけどさ。あまり聞いちゃいけない事だろうし、踏み込み過ぎるのも良くないからな。」
「ありがとうございます。」
「しかしだ。そうなると長居するのはあまり良くないんじゃないか?」
「あー……そうですね。1番の目的である挨拶も済んでますし、今日の所はこの辺で帰らせてもらいます。」
「大したもてなしもできず、悪いな。」
「いえそんな。マグロも売ってくれましたしそれで十分ですよ。次寄ることがあればその時は手土産でも持ってきますね。」
「気にしなくていいぞ。……というか、その喋り方どうにかならないか? 凄い気になるんだが……。」
「すみません。ここの所ずっと目上の人とばかり話していたので……つい。」
「無理にとは言わないが、気楽に接してくれ。」
「分かりま……いや、分かった。」
「おう。」
そうして、ローレムさんの家を後にしたわけだが……。
「そういえばセフィア全然喋ってなかったな。」
「レントがメインで、僕はその付き添いなんだしあんまり出しゃばるのもね。」
「気を遣わせちゃったか。」
「全然。それに僕としてはそれほど親しいって間柄でもないからいざ話せーってなってもあんまり話せることないし。」
「それならいいんだけど……。」
俺も少しは気にかけるべきだったかな。
次似たような事あったらその辺は意識してかないとな。