第百三十話 終わったそうです。的なお話
きっちり休息を取り、武器の手入れも済まして、さあ、ボス戦でもするか。
時間ももう午後6時だし、帰ったらセフィア達の手料理だ。
さっさと終わらそう。
そういうわけで十層へと赴く。
例によってここは魔物が出ない一本道で灯っている炎が雰囲気を出しており、それを見たアカネが興奮してる。
やっぱりこうよね〜とか言ってる。
そういえばアカネって今14くらいじゃなかったっけ?
となるとアカネが死んだのって……いや、既にそういうのってありそうだな。
まあ、いっか。
それよりも夕飯だ。
厳かな扉を開けて中に入る。
ホラーちっくに扉が閉まると上からボスが降ってきた。
今回のボスは、いや、今回もコボルトロードだ。
そしてこいつの顔はなんとボルゾイさんだ!
ロシアンウルフハウンドとも言うがこいつは大型犬で狩猟犬として活躍してたとかなんとか。
ならば速いのかな?
と思ったらいきなり四つん這いになって突進してきた。
おい! 何のための棍棒なんだよ! 直ぐに放り投げるなら持ってきた意味ねぇーだろ!
そんな事を思ってしまうがそれでも現在進行形で奴がこっちに突っ込んできている以上意識を切り替える。
どうやら先ずは俺を狙っているようでこっちの方に向かってきたからファイヤーボールを用意しつつ待ち構える。
奴がこちらに噛み付いてこようと口を開いたのに合わせて前方に跳びつつ躱してそのついでにファイヤーボールをお見舞いする。
空中だった為に狙いが甘くなってしまったが、それでも奴の後ろ脚にあたる。
着地を狙ってこられたらヤバイんだけどそこは夫婦の阿吽の呼吸というか、奴がこちらを再び見た瞬間にリリンがランスで文字通り横槍をいれる。
お、クリーンヒットだ。
その隙に俺は着地する。
というか結構高く跳んでなかったか今?
と、そんな暇ないか。
「ガウッ! ガウッ!」
奴が吠えると地面が隆起する。
しかし、これは誰にも当たっていないぞ? 一体何のつもりで……。
そう思ってると奴は今までの直線軌道ではなく隆起した地面を利用して方向転換したり、駆け上がっての三次元攻撃をしてくる。
しかも隆起した地面が邪魔で見づらい。
奴は縦横無尽に駆け巡るものだから攻撃しようにも上手く魔法が当たらない。
なので剣を構える。
って何処だ?
「レント、後ろ!」
「へっ? うおっ!」
リリンに言われるままに後ろを見るとコボルトロードが向かってきており咄嗟に剣で頭突きをガードする。
しかし、体勢が悪かった為に飛ばされて後ろの隆起した岩にぶつかる。
「ぐっ!」
「レント!」
「大丈夫だ。それよりもリリンはこの岩の上から奴の位置を教えてくれ。アカネは俺の反対に回って、リリンの指示に合わせて攻撃だ。」
「ん。」
「分かったわ。」
こんだけ入り組んでいるとかなり見づらい。
ならば上から見ればいい。
リリンの指示を待っていると白い影が俺らの周りを回っている。
「アカネ、正面!」
「うん。ハアッ! 閃空砕牙!」
ゴウッ! という音とガウッ! という鳴き声が聞こえる。
「隙だらけ。」
ズドドドドッ!
「ギャウゥゥ〜。」
カラーン。
トサッ!
えっ? 何?
後ろで何が起きたの?
「レント、終わったよ。」
「ブイッ!」
知らない間に終わったようです。
詳しく聞いてみると、アカネの正面にやってきたので、風を剣に纏わせて突き出して飛ばすやつをしたら跳び上がったのでそこをリリンがアクアランスで倒したそうだ。
俺、何もやってないような……