第1376話 王城ベッドはお預けかぁ…。的なお話
食事を終えて部屋に戻って、ようやっと羽が伸ばせる。
子供の相手をするのはちょいちょいあったからなんかもう慣れた。
慣れたが、気を使わないかと言えばそうでもない。
そもそも相手が子供ではあってもこの国の王族だ。
一応義理の妹やら従兄弟やらになるわけだが、それでも気を使う。
だからこうして解放された気分になるわけだな。
ーーコンコン
「レント〜入ってい〜い〜?」
「セフィア? いいぞ〜。」
「お邪魔しま〜す。」
「あれ? セフィア1人?」
「うん。みんなはまだお風呂入ってるよ。僕は早めに出たからね。」
「そうなのか。てっきり全員で来てるのかと思ったよ。」
「あはは。いつもならそうだよね。隣座るね。」
「それで、どうして1人だけ早く出てきたんだ?」
「んー、レントはお風呂入った後みたいだったから、1人で寂しいかな〜って。」
「いや、男1人なんだからどっちでも変わらないだろ。」
「それもそうだね〜。……本当はね、リリンの事でちょっと話したいなって。」
「どうしたんだ?」
「何かあるって訳じゃないんだけど、ほら、リリンとは僕達が1番最初に会ったでしょ? その時は王女なんて思ってもみなかったし、全然普通……いや、ちょっと変わった子ではあったけど、でも王女らしさなんてなくてさ……でも実は王女様でした〜って言われて……どう接したらいいのか、ちょっと困っちゃった。」
「なるほどね〜。それで俺はどうなのかな〜って気になって急いで出てきたと。」
「うん。」
「といってもなぁ……確かに驚きはしたけど、そんな気にするようなことでもないというかなんというか……まあ、納得できてしまったけど。とはいえ、いまさら王女が増えた所でねぇ。子爵令嬢、大名令嬢、男爵そのものなんていうのは序の口。国家元首たる帝に果ては神様とかいう名だたる人達と知り合いだから。王女とはいってもただの人。気にするほどでもないというのが正直なところかな。」
「いやいや、流石に気にするべきでしょ!?」
「そりゃ、時と場所によってはそれ相応の接し方をするべきだろうけど、それ以外は気にする必要なんてないだろ。むしろ気にしちゃダメだ。」
「気にしちゃダメ?」
「そう。ありきたりな言葉だけど、王女だろうがなんだろうが、リリンはリリンだ。これからも、これでも、リリンは俺の嫁でセフィアの妻仲間で親友だ。それに、逆に聞くけど、もしもセフィアの母親が他大陸から移住してきてて、実はその大陸の国の王族なんて言われて、それで俺達がよそよそしい態度になったらどう思う?」
「そんなの……寂しいよ。」
「そういう事。リリンが王族だったと理解するのは必要な事だけど、理解したからといって態度を変える必要はない。これまで通り接すればそれでいいんだよ。」
「うん……そうだね。そうするよ。はぁ〜……話したらスッキリしたよ。」
「そりゃ良かった。」
突然あなたのお仲間は王女です。
なんて言われても驚くしかない。
そして普通の人はそう言われたら萎縮してこれまで通りに接することは出来なくなる。
俺はまあ、異世界人だし、夫だし?
それに、中二病に目覚めかけた経歴もあるからちょっとばかり斜めな思考を持ち合わせているのでね。
話がひと段落ついたので話題を少し変えてこれまでのリリンとの出来事なんかを思い出しながら話していると、お風呂から上がったメンバーが続々とやってくる。
「って、なんで全員俺の部屋に来るんだよ!?」
「まあまあ、いつもの事だし。」
「それはそうなんだが……。」
1人1部屋使わせてもらってるんだからのんびり過ごせばいいのにと思わなくもないがな。
結局この日は全員でトランプ大会をして騒いで、そのまま疲れて雑魚寝となった。
あ、これじゃベッドで寝れねぇや。
あー、今夜は王城ベッドはお預けかぁ……。