第1374話 全然休まらなかった。的なお話
この本読むのに夢中になっていていつの間にかかなり時間が経っていて夕飯時になっていた。
うーわー、やばっ。
メイドさんは……ずっと待っててもらってた!?
「ご、ごめんなさい! 夢中になっちゃって……。」
「いえ、これが仕事ですから。」
「本当にすみません。すぐ戻りますんで!」
本を本棚に戻して急いで部屋に戻ろうとするんだけど、何故かそこでメイドさんから待ったがかかる。
え、もしかして埃っぽい?
先に風呂入れってこと?
「何故、メイド如きに謝るのですか?」
「へ? いや、申し訳ないと思ったら謝るのが普通なんじゃないんですか?」
俺変な事言った?
なんかポカンとしてるんだけど。
ま、いいや。
「それよりも、ちょっと埃っぽい感じがするし先に綺麗にしておきたいんだけど、お風呂とかって入れたりしませんかね?」
「え、あ、はい。この時間なら大丈夫です。すぐに入れます。」
「それじゃあ、案内してもらえるかな?」
「分かりました。」
なんか、急に態度が変わったような……いや、想定外の返答が来て驚いているだけだろう。
気にせずに普通にしてればいいか。
そうして、メイドさんに案内されるがまま道を進んでいき、何度か曲がった先にある二つの扉の前で止まる。
「こちらが浴場となります。こちらの扉が男性用、その隣が女性用です。扉についているプレートの色が青い方が男性用ですので間違えなきようお願いします。」
「分かりました。」
青が男性用、そして黄色が女性用。
なんで黄色? とは思うが、まあ異世界だしそういう事もあるだろう。
女性が赤というのは地球、というよりも日本で培った固定観念だ。
そういえばランドセルも男は黒で女は赤って昔は決められていたらしいね。
でも今は自由に選べるらしい。
まあ、それでも赤いランドセルをした男の子なんてのは見た事ないんだけどね。
俺、赤も普通に好きなんだけどなぁ。
情熱の赤ってね。
「ちょっと待って……何でついてこようとするの?」
「体を洗って差し上げるよう申し付けられておりますので。」
「いえ、結構です。」
「ですが、慣れない人も居るので手伝うように言われていますので。これは王命です。」
あー……まあ、そういう事もあるか。
客の全員が風呂好きとは限らないし、そもそも風呂の文化の無い国もあるのかもしれない。
サウナとか、体を拭くだけの文化という可能性もある。
俺自身、ただの冒険者だからな。
風呂の入り方を知らないと思われててもおかしくないかー。
で、そうなるとちゃんと入れるか分からないし、なら最初から手伝ってしまえと。
メイドさんに手ずから体を洗ってもらういうのは基本的にご褒美でしかないだろう。
無知を責める事なく風呂の入り方を教えられて尚且つ歓待の意を示せる。
それで最初から不機嫌そうだったんだな。
知らない庶民の体を洗わないといけないんだし、その際セクハラをする輩とかも居そうだから。
俺、側からみればただの女好きだし。
俺にはどれも必要ないんだけど、王命となるとな〜……断るとこのメイドさんが困る事になるか。
コハルさんの夜這い紛いの時も困ったけど、今回のはまた別の方向で面倒な。
でも断るのは流石になぁ……仕方ない。
諦めよう。
諦めて、洗ってもらおう。
「わ、分かりました……。でも、頭と背中だけでお願いします。それ以上は何もしなくていいですから。後、服は出来るだけ露出は減らしてください。」
普通なら立場が逆な気がしないでもないが、これは譲れない。
ちなみに、体洗ってお湯に浸かってからもずっと側に居たので全然休まらなかった。