第1370話 自分も相手欲しいって感じだしな。的なお話
別室へと場所を移して今度は私的な会話をする事に。
その別室だが、これどう見ても応接間とかそういう感じじゃないよね?
だって結構歩いてこの部屋まで来たし、家具とかもガッツリ置かれてるんだもの。
これ絶対誰かの私室だよね?
「この部屋ちょっとおっさん臭いかもしれないけどそこは我慢してね。」
「酷い!? べべべ、別に臭くねーし! ちゃんと毎日風呂入ってるし!」
あ、ここリカルド義父さんの部屋だったんだ。
その割には私物とかはあまり無いけど……まあ、気にしなくていいか。
「それで早速だけどその人達を紹介してくれないかな?」
来た!
絶対に避けては通れない、いや、避けてはいけない話題だ。
ここでどう対応するかが重要。
別れるつもりなんぞ一切ないしその事でとやかく言われようと意思を変えるつもりは毛頭ないが、それでも出来れば祝福して欲しい。
だから、絶対にミスるわけにはいかない。
「ん。旦那。」
「「旦那!?」」
「初めまして、リリンの夫の蓮斗です。」
「だだだ、旦那ってどういう事!?」
「結婚してるの!?」
「ん。」
指輪を見せびらかすリリン。
それを見た義母さんとリカルド義父さんは何やら深刻そうな顔をして小声で話し始めた。
その様子につい俺は隣に座っているリリンと顔を見合わせた。
え、何?
何かあるの?
やっぱり結婚はまずかった?
でも離婚はしないよ?
絶対、何があっても。
「あ、ごめんなさいね。実はちょっと困った話があって……一応、リリンちゃんは王女なわけでしょ? だからリリンちゃんの事を知った貴族が是非うちの嫁にって言ってきてて……でも冒険者してるし会えるか分からないからって保留にしていたのよ? そしたら……」
「そしたら、ならば婚約だけでもと言ってきたんだよ。しかも厄介な事に相手は公爵家と来たもんだ。王家がガタガタだから強く断れなくてな、宙ぶらりんな状態なんだよ。」
「更に面倒なことに、自分の所が迎えたいからとその話を色んなところで話してるのよね……。本当に困っちゃってて。」
「えーっと、つまりその公爵家は実質自分所のがリリンの婚約者だと広めて外堀を埋めようとしていたと?」
「あ、うん。そうなるね」
うーむ。
厄介な事を。
というか、王族になるリリンをあっさりと冒険者として送り出すのもどうなんだ?
もしかしたら王家とは関係なしに一般人として過ごしていくつもりだったのかもしれないけどさ。
まあ、そのおかげで出会えたわけだから何か言うつもりはないけどね。
「まあ、すでに結婚してるんで、その人には諦めてもらいましょう。別れる気なんて微塵もないんで。」
「離縁してくれたら王家の宝を一つ侘びとして渡すと言ってもかい?」
「当たり前ですよ。王家の宝を全部くれると言われようと、次期国王にしてくれると言われようと、お断りです。そんなもんよりもリリンの方が大事ですから。」
「レント……。」
「こりゃ無理そうだな。」
「そう、分かったわ。なら諦めてもらうように動くことにしましょうか。もっとも、それで向こうが諦めるかは分からないけどね〜。」
面倒なことにならないといいけど。
流石にね、相手冒険者だしどこかでのたれ死んでいる可能性もあれば、帰ってこない可能性もあるし、すでに相手がいる可能性だって考えるだろう。
だからきっと大丈夫だ。
大丈夫なはず。
「ちょっと話が脱線しちゃったけど、他のみんなの事も教えてくれるかな?」
そう言われたのでセフィア達の事をそれぞれ紹介した。
予想通りではあるが、嫁、恋人だらけで他にも婚約者(一応、本当に一応で今はってつくけど候補)の人がいたりすると言えば大層驚かれた。
もう慣れちゃったよ。
「最後に、ユウキ。レントの幼馴染み。」
「……それだけ?」
「ん。」
実際その通りで何にもないんだけどさ、その言葉を聞いてお二人は拍子抜けしたような、憐れむような、そんな顔をした。
まあ、ハーレムの中に一人だけ無関係な人が混じってるんだし、居心地悪いだろうなと思って同情とかしても不思議ではない……かな。
当人は割とアホだからあんまり気にしてるようには見えないけど。
それよりも自分も相手欲しいって感じだしな。