番外編if アリシアさんと一緒のひな祭り
ピュリオスを出したかったけど流石に無理でした。
ピュリオスは正月の時に出たからという事で許して。
3月3日はひな祭り。
あるいは桃の節句と言ったりもするのだけど、男である俺にとっては特になんの意味もない日だ。
精々、スマホのアプリなんかでひな祭りイベントがあるくらいだが、基本無課金な俺にはそこまで大きな影響があるわけじゃない。
あ、そういえばあのキャラの誕生日3月3日だった。
アニメや漫画のキャラの誕生日、ゾロ目問題。
3月3日、5月5日、7月7日、11月11日はわりと多いイメージ。
後クリスマス。
現実はそう多くはないのにね。
「お、来た来た。遅かったな。」
「優姫ちゃんは何かあったんですか?」
「ちょっとね。」
「いやそれがさ、こいつ進路調査票にYouTuberになって稼ぐって書いてんだよ。それで呼び出しくらって遅れたんだよ。」
「ちょおっ!? なんで言うの!」
「自業自得だろ。そういうのは適当に進学とでも書いときゃいいんだよ。どうせ近場の大学選ぶだろうし。」
「だって、それじゃあ普通すぎてつまらないし……。」
「つまらないって言ってもそれで呼び出されちゃ世話ないだろ。」
「うるさいわねぇ。そういうあんたはなんて書いたのよ!」
「普通に進学って。志望校は未定。」
「うーわー、ありきたりね〜」
「そりゃYouTuberさんには勝てませんわ。配信いつやんの? 冷やかすから教えてよ。」
「冷やかすって言われて教える人いるわけないじゃない! それにまだ始めてもいないし!」
「これが来年度受験生の会話だって信じられる?」
「えーと……。」
俺が蒼井と話している一方でアリシアと唯がそんな事を話していた。
いや、聞こえているからね。
少しくらい現実から目を背けたっていいじゃないか、人間だもの。
「そ、そんな事より、今日はひな祭りだけど、どうなってるの?」
「ふっふっふっ、ついに昨日届いたんですよ!」
「「「おおー!!」」」
アリシアは名前からも容姿からもわかる通り、外国の血が流れている。
なので、日本伝統の文化であるひな祭りとは縁が浅くアリシアの家には雛人形がなかった。
ひな祭りに馴染み、その意味なんかも理解した時には既にアリシアは小学生中学年。
欲しくても値段も理解しているお年頃という事もあって親に強請るのも憚られて今の今まで無かったんだが、バイトやお小遣いを貯めてついに購入に至ったわけだな。
俺はあんな真っ白能面人形に可愛さを見出せる気がしないが、そこはまあ、男女間の差という事なんだろう。
「ただ、まだ並べることは出来てないんですけどね。それで、もし時間があればですがその、手伝ってくれませんか? 1人でやるのは大変そうなので……。」
「いいよ。」
「任せて。」
「ま、ウチのは既に並べ終わってるし、この後も特に用事はないし別にいいぞ。」
「みんな……ありがとう。」
というわけで、アリシアの家でひな人形を並べる事に。
勝手知ったる他人の家ってね。
何度も来てるので、当たり前のようにアリシアの部屋に行こうとして……。
「あ、ひな壇は私の部屋じゃなくて、こっちの客間に……。」
「ああ、そうよね。流石にアリシアの部屋に置けるわけないわよね。」
何段のを買ったのかは分からないが、勉強机やベッドなんかがある部屋に置けるわけがなかったな。
そんで客間に行き並べていくが、そこでふと気付く。
ところどころ歪んでいたり、小物とかにちょっとした傷がついていたりしてる事に。
「もしかしてこれ、中古か?」
「うん。色々と見てまわったり、検索とかしてみたりしたんだけど……本格的なのはどれも高くてね……それで結局こういう感じのになっちゃったの。」
「高いのってどれくらい?」
「30万とか? もっと高いのだと100万超すのもあったの。」
「うわっ! たっっっっっか!」
「ひな人形怖い。」
「ちょっと待って!? ウチに普通のあるんだけど、もしかして……。」
「ウチのもその可能性があるんだが……子供の頃かなりぞんざいに扱ってたんだが……。」
内裏雛の刀振り回したりとかな……。
「今度から大切に扱おう……。」
「そ、そうだな。」
ちなみにアリシアのは10万程だそうだ。
さっきのを聞いた後だと安く感じるから不思議だ。
10万は結構な大金なのにな。
中古だとしても、アリシアが欲しいと願い、必死になってお金を貯めて買ったのだ。
雑に扱ったりせずに丁寧に、30分ほどかけて綺麗に並べ終えた。
うん。
「どう?」
「うん。ちゃんと並び順もあってる。」
「じゃあこれで完成か。」
並べた感想を聞こうと思いアリシアの方を見ると、感慨深いような、それでいて嬉しそうな顔をしていた。
ずっと欲しかったみたいだしな。
もう少しだけ、そっとしておこう。
その後しばらくして再起動したアリシアのお誘いもあって、急遽三家合同での夕食会となった。
アリシア母が母さんと蒼井母に教わりながらちらし寿司を作ったり、父親達は途中で電話を貰ったからと揃ってひなあられを買ってきて被らせたりなんていう一幕もありつつ、楽しい時間を過ごし、最後にはアリシアのひな人形の前で記念撮影。
親の出る幕はないと言って俺達だけでの撮影。
そうして撮られた写真の中でアリシアは最高の笑顔を見せているのだった。
ひな人形の値段とか色々調べたんですけど、バカ高いですね……なんだよ180万って。
その180万は人形のふんふふ〜って所のなんですけどね。
かと言って安くしようとすると途端にコンパクトとか卓上ってワードが付いてきて、結局中古にせざるを得なくなってしまった。
ごめんねアリシアちゃん。