第1351話 みんなの分も作っていこうかね。的なお話
ちょい短めですが、キリがいいので。
俺から剣を受け取ったアリシアさんはさまざまなら角度から剣を眺め、そして一呼吸。
「100点満点中82点といったところでしょうか。恐らく、炉に戻す時と炉から取り出す時に魔力操作を緩めてしまっていたのでしょうね。少しばかり出力が落ちています。後は鍛錬が少し甘いですね。熱さで少し短くしてしまったのでしょう。とはいえ、これでも販売するとしたら数百万はする逸品ですし初めて本気で作ったにしては上出来過ぎるでしょう。」
「でも、100点じゃないんですよね?」
「はい。でも熟練の鍛治職人でも100点の品はそうそう作れるものじゃありません。世界で最も優れた鍛治師と呼ばれている人でも95点程でしょうし気にやむほどの事ではありませんよ。それよりもまずは、本気の作品に対して自信を持ちましょう。今自分の出せるベストを尽くしたんですから。これ以上の品は現状では作り出せないと誇りましょう。まずはそこからです。それが済んでから、どうすればより良くなるか考え、工夫し、実践していきましょう。」
「そうですね。」
アリシアさんの言う通り、今、自分が出せる全てを出し尽くしたんだ。
それこそ、ゾーンに入る程の全力中の全力だ。
なら、まずはそれを誇ろう。
いや、それよりも先にする事があったな。
「アリシアさん……手が痛いんで治療お願いします。」
「分かりました。」
誇るよりも前に火傷を治さないとね。
痛くてそれどころじゃなくなってきたし。
スキルが増えても覚えたてなもんでまだまだアリシアさんのお世話になりそうだ。
◇
治療してもらった後、休憩をしてから再び鍛治。
先ほど言われた問題点を意識して作製していく。
すると、さっきのよりも少しばかり良いものが出来上がった。
うん。
いい感じだ。
次は短刀と双剣かな。
他にも短剣や槍といったみんなの分の武器も作ろう。
って、そういえば使う気満々でいるけど、使っちゃっていいのかな?
一応確認しておいた方がいいよな。
「そういえばアリシアさん。ここで作ったものって最終的にはどうするんですか?」
「普通に使っていただいて構いませんよ?」
「いいんですか? その、素材の出所とかも色々と問題になりそうですし……。」
「そんなの、気にしたら負けですよ?」
「えぇっ!? いやいやいや! そういうわけにもいかないでしょう!?」
「そんな事を気にする相手には適当に誤魔化しておけばいいんです。そもそも説明してあげる理由もないんですから。」
「あ、そうですね。」
そういえばそうだ。
そんな無遠慮に追及してくる相手になんでわざわざ律儀に答えないといけないんだか。
どうしてそんなふうに思っちゃったんだろうね。
グラハムさんとかの親しい人に聞かれた場合は適当に濁せば察してくれるか?
そもそも自分で作ったとは思われないか。
普通はこんないい環境で練習できる訳ないし、このクオリティの物を俺みたいな若造が作れるとは思わないだろう。
うん。
気にしたら負けって事で聞かれたら適当に誤魔化そう。
最悪、ミコの名を勝手に使わせてもらおう。
後でなんか食べさせときゃ容認してくれるだろ。
「じゃあ、その、ありがたく使わせていただきます。」
「はい。」
さて、使っていいとの事なので、改めて、みんなの分も作っていこうかね。